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二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。

60 聖女さん達、集合 下

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 それからしばらくして。

「こ、ここ本当に軽々しく足踏み入れて良い所なんだろうな?」

「いや良くはないですよ良くは。ていうかシズクさん、一回来てるとはいえ全然緊張とかしないんですね」

「最初に来たときはガチガチにビビってたっすけど、部長が仕切ってる場所なら大丈夫かってなったっす。緊張するかと思ったけど全然っすね」

「すげえ信頼されてんなぁ、あの部長さん。いや、部長さんでいいのか扱い的に」

「ど、どうなんですかね……マフィアのボスですよ。一応反社ですよ反社」

 そんなやり取りをしながらシルヴィ達三人が私達の元へとやってきた。

「あ、シエルさんにルカさん。よかったちゃんと無事っすね……ってそういえばマルコさんはどうしたんすか?」

「ああ、マコっちゃんならクライドさん達と合流したよ。多分今頃後処理とかやってるんじゃないかな」

 えーっと、知らない人の名前出てきたけど、多分マフィアさん達の一人だよね。
 その一人をマコっちゃんって……あの、ほんと馴染みすぎじゃないかな?
 これ多分私が思っている以上に馴染んでるよ。
 多分半構成員状態だよこんなの……。
 ……まあしーちゃんが嫌な思いとかしてないならいいけどさ。
 ……いいのかな? うーんジャッジ難しくない?

 ……まあとにかく、これで全員集合って感じ。
 それを見て改めてステラが言う。

「しかしまあ、改めてだけど全員無事で良かったな」

「そうですね。正直今回は色々と危なかったんで……」

 シルヴィはそこまで言って、多分この場の全員の疑問点を口にする。

「……結局、私達はどういう相手と戦っていたんですかね」

「……分かんない」

 ほんと何も分からない。

「結局あの子達を使ってヤバい魔術を使おうとしていた事位しか分からないからね」

「……それに関しては一つ、確定では無いが分かった事がある」

 ルカが突然そんな事を言い出して、皆の注目がルカに集まる。

「分かったこと? あるのそんなの!?」

「ああ、ある。かなり憶測が絡んでしまうがな」

 そして一拍空けてからルカが言う。

「俺があの化物染みた力の男を足止めしていた際に色々口を滑らせてくれてな。まあ奴にとってこうして俺が誰かに話すような事になる事は想定外のイレギュラーだったのだろうが」

「それで、一体なんて──」

「多分アイツは俺やミカ様がやろうとしていた事を把握していた」

「……」

 それを聞いて色々と察した。
 だとしたら思った以上に面倒な事になってる。

「そうだ、結局アンタらって一体何をしようとしてたんだよ」

「やろうとしていた事ってあの山での事ですよね?」

「……」

 直接的にそれを聞かれてルカは黙り込む。
 ……ほんと、言いにくい事をやってたんだろうなって思う。
 今になってもこの調子じゃ本当に話す気はないみたいだし、それに手段にリスクがあっただけで目的自体は悪い事じゃないからね。
 ……しゃーない。此処はフォロー入れてやるか。
 話も進まないしね。
 軌道修正だ。

「ああ、二人共。ルカにその辺の事聞いても具体的な事は何も話してくれないよ。でもやってた事の目的は話してくれた……この辺は話しても大丈夫なんだよね?」

「ああ。その辺に関しては、此処に居る人間には共有しておかなければならない事だ」

「なら軽く説明しとくと、ルカ達の国で私達が追放された時と同じような事が起きたんだ」

「俺達と同じっていうと……変わりの聖女に席奪われたって事か」

「いや、ルカ達の国は同じ事が起きたけど、同じような事にはならなかったんだ」

「どういう事ですか?」

「それで席を奪われるような事にならなかったって事。ハニートラップ無事回避って感じ。だけど……その後不可解すぎるクーデターが起きた」

「クーデター……ですか」

「そ。なんか国民のほぼ全員が操られてみたいな。で、ルカ達はそんな国を救う為に行動していたって感じ……これでいいよね?」

「ああ。大体そんな感じだ。で、何をやっていたか具体的には話せんが、俺達のやろうとしていた事は、失敗すればこの国にも大きな迷惑が掛かる。だから秘密裏に事を進めなければならなかった訳だ。あの時はすまなかったな。それとありがとう」

 そんな事をルカはシルヴィとステラに対して言う。
 ……ああ、あの事か。
 確かにこうして言えるタイミングがあるなら、私からじゃなくて本人が言った方が良いよね。

「な、なんで俺達が礼言われてんだ?」

「恨まれるような事はしてると思うんですけどね」

「礼は言うさ。お前らはミカ様に殺されなかった。この人を人殺しにさせないでくれたんだ。その事には強く礼を言う。ありがとう」

「え、あ、おう……そりゃどうも」

「な、なんか変な感じですね。とりあえずどういたしまして?」

 二人はやや困惑気味にそう言う。
 まあボゴボコにしといて礼言われるのが凄い違和感あるのは分かるよ。
 で、当事者の一人であるミカはというと、何かに気付いたように私に言う。

「そうだ、アンナさんもありがとうございました」

「え、何が?」

「アンナさんが負けなかったおかげで、ルカ君も人殺しにならずにすみました。本当にありがとうございます」

 そう言ってミカも頭を下げる。

「み、ミカ様。俺なんかの事で頭なんて下げないでください!」

「でもルカ君もお礼言ってたよね」

「お立場が違うじゃないですか!」

「まあまあとりあえずどういたしましてって事で。話逸れてきてるから、そろそろ戻そうよ」

「ああ……確かにそうだな。すまない」

「いや、別にいいよ。お礼言いたかったのは知ってるし」

「そうか……じゃあ改めて。いや、どこまで話したんだったか……」

「二人がなんであの山で何かをやっていたかって所まででしょ」

「ああ、そうだ。そこから話が脱線したんだったな」

 ルカは軽く咳払いしてから話を再開する。

「で、あの時俺達がやっていた国を救う為の行動を奴は把握しているようだった。つまりあの連中はここにいるシエルさん以外の全員が抱えている問題に大きく関わっている可能性が高いという訳だ」
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