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二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。

ex 黒装束の男、後日談 下

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 その後しばらくして、お土産を持たされルカは店を後にした。
 有無を言わさずマルコに代金を立て替えられてお金は受け取って貰えず、一応形だけ見ればマフィアに借りを作った形にも見える。
 そう考えると思った以上にちゃんとお金は払っておきたかった。

 とにかく、その日は宿へと帰る事にした。
 このままマフィアのアジトへと向かい、変に帰りが遅くなってミカに悟られる訳にもいかないから。
 行動に移すなら近日。
 また自分が一人で動けるタイミングでだ。

(しかし……これ以上やられる前に潰す、か)

 もし事の詳細が見えてくれば、自分達はその解決に乗り出すだろう。
 いずれあの化物染みた相手ともう一度戦う事もある筈だ。

 ……そうなった時。
 果たして自分は役に立てるのだろうか?

 考えながらルカは自分の掌に視線を落とす。

 完敗だった。
 完敗だった。
 完敗だった。

 ミカから力を供給して貰っているにも関わらず、それでも手も足も出なかった。
 そして供給を受けても勝てないのに、向こうはそのパスを簡単に切る事もできる。
 そうして晒された素の自分では、本当に何もできなかった。

 ……考えれば考える程、自分の役立たずっぷりが浮き彫りになってくる。

 国の有事にミカを連れて逃げる事しかできなくて。
 起死回生の策も半ば頓挫しかけていて。
 ……戦闘ではなんの役にも立たない。
 ……想定以上のインフレに着いて行けない。

 こんな自分に果たして何かできる事があるのだろうか?
 ……敵の脳から情報を引き出す役目だって、何一つ掴めないのではないだろうか?

 あの時、操られていた時に自分の体で使われていた知らない形式の魔術も、断片的情報から不完全ながらも再現しようと試みているものの、殆ど進展は無い。

 何も。
 何もかもどうにもならない。

『僕もキミも、持って生まれた力が無かったから敗北者なんだ』

 操られる直前に言われた言葉がフラッシュバックしてくる。
 そう、間違いなく自分は敗北者だ。
 何か大きな流れを変えられるだけの力は、自分には無い。

 そんな自分に……はたしてミカを負けさせない事ができるのだろうか?

「うまくやらなければ……うまく……」

 誰にも聞かれる事無く、ルカは静かにそう呟いた。
 そして考える。
 うまくやる方法を。

 ……結論だけを言えば、何も建設的な案は思いつかなかったのだけれど。
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