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三章 聖女さん、冒険者やります

13 聖女ちゃんの中の人、意思疎通ができる

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「む? 見た所中々の実力者のようじゃな。こやつと同じ位の潜在能力を感じ取れる」

 私達にそんな言葉を向けながら、取り憑かれたシルヴィは私達との距離を詰めてくる。
 ……ていうか、これちょっとマズくない?

「二人共気を付けろ。これシズクん時と訳がちげえぞ」

「だね」

「な、なんか違うんすか?」

「シズクに取り憑いてた奴は意思疎通も出来なさそうな奴だったからね……だけどコイツはできる」

 これは私の勝手な想像だけど、なんかこう……霊としての格がコイツだけ違う気がする!

 そして警戒態勢を取る私達に対して、シルヴィの中の人は言う。

「まあ当然の如く警戒されておるな。立場逆だったらワシも警戒するじゃろうし……」

 そう言ってコホンと咳払いをしてから言う。

「多分お主らこの小娘の仲間じゃろ。だったら仲間に訳が分からんのが取り憑いてて警戒や敵愾心を抱くなんてのは当然の事じゃ。だがワシはお主らにもこの小娘にも危害を与えるつもりはない」

 言いながら数がかなり少なくなった幽霊に対して結界をフルスイング。

「この通りじゃ。この有象無象と一緒にされては困る」

「……」

 私達がなぎ倒してきた幽霊達に仲間意識みたいなのがあるのかは分からないけれど、少なくともコイツにはそういうのは無いっぽいかな。
 無かったとして、私達がコイツに仲間意識持てっていうのも無理な話なんだけどさ。

 そしてステラが言う。

「いや、人の体好き放題使ってる時点でもう危害加えてんだろ」

「同感」

「……まあ物凄い正論でぐうの音もでんの」

 そう言って苦笑いを浮かべるシルヴィの中の人。
 だけどその後、少し真剣な表情を浮かべてから言う。

「なら訂正じゃ。多少の危害は加える……だが最小限には抑える事を約束しよう。そんな訳で、警戒を解いてはくれんか?」

「……さっきのを頷かなかった時点で、それ頷く訳無くない?」

「まあそうじゃな。それはその通り……だからこれは賛同を得る為の発言ではなく、ワシの意思表示じゃよ」

 そして真剣な表情を浮かべて言う。

「お主らが何を言おうとワシは好きにやらせてもらう」

「させるか!」

「さっさとシルヴィに体返せ!」

「あーちょ、ストップストップ!」

 一触即発な空気を止めるようにシズクが声を上げる。

「あの、ちょっとタイムって事で、少しそこを動かず待ってて貰っていいっすか!?」

「は? シズクお前なに言って……」

「そうだよシズク!」

「いや滅茶苦茶気持ちは分かるっすけど、ここはちょっと……あ、シルヴィさんの中の人も一旦それでいいっすか!?」

「うむ、ワシは全然構わんが」

「あ、じゃあ少しそこで大人しくしてて欲しいっす。さ、二人共」

 シルヴィに手招きされ私達は若干距離を取り、まだ若干居る幽霊対策と話を聞かれないようにする為の防音対策の為にドーム状の結界を張る。

「で、シズク一体どういううもりだよ!」

「確かにアイツなんか今までのと違う感じがするけど、もしかして怖じ気づいた?」

「いや、そういう訳じゃないっす」

 シズクは一拍空けてから私達に言う。

「説得難しそうっすけど、それでも一応は意思疎通出来てるんすからもうちょっと粘って穏便に事が終わる道模索した方がいいんじゃないっすか?」

「いやお前穏便っつったって……」

「なんかあんまり敵意みたいなのは感じないんで、これでこの体私の物だうぇーい! って感じじゃなさそうなんすよ。だったらもし速攻で本人が満足できるなら、さっさと満足して貰って穏便に離れて貰う方が絶対良いと思うんすよ」

「そ、そんなにうまく行くかな?」

「チャレンジするだけならタダっすよ。というかチャレンジしないと……あの、感謝してるっすけど、滅茶苦茶痛い事には痛いんで。ボクの時みたいに多分一発で終わらなかったら、シルヴィさんもしんどいと思うんで」

「……た、確かにそうだな」

「一呼吸置いて考えてみるとその方が良いかも」

「……だな」

 私とステラはシズクの案に頷く。
 ……というか絶対その方が良いよ。
 解決を焦り過ぎたというか、頭が回ってないなかったというか。

 うん、私は幽霊の所為で。
 ステラは多分血が若干足りて無くて頭が回ってない。

 マジでシルヴィとその中の人と遭遇する前にシズクが戻ってきて良かった!

 ……さて、シズクのおかげで軌道修正できたし、シルヴィを取り戻す為に動こう。

 私達は防音の結界を解いて、シルヴィの中の人の方に向き直る。

「お、話し合いは終わったかの?」

「終わったよ」

 それが終わったから。

「……とりあえず一回落ち着いて話しない? アンタはシルヴィの体を乗っ取って何をしようとしてるの?」

 今度はこっちと話を始めよう。
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