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三章 聖女さん、冒険者やります

14 聖女ちゃんの中の人、目的を語る

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「ふむ、そうじゃな。喧嘩腰で対峙する前に一度そうした方がいいかもしれん。ワシも穏便に済むならその方が良い」

 シルヴィの中の人はそう言って一拍空けてから言う。

「そうじゃな、どこから話すべきか……というかどう説明すべきかの。多分どう話してもえらく突拍子もない漠然とした話にしか聞こえんだろうし」

「それでも良いから話してみるっすよ」

「ふむ、じゃあお言葉に甘えて」

 シルヴィの中の人は軽く咳払いしてから私達に言う。

「今この世界で何かが起こっている。多分あまり良くない何かが」

「良くない何か?」

 確かに凄く漠然としている。

「うむ。それが何かはよく分からんがの」

「よく分かんねえんなら、何かが起きてるかどうかって思ってる事事態の信憑性も無くねえか? 適当な事言ってんじゃねえのかよ」

「少なくともお主らの目の前で今起きとるじゃろう?」

「今……えーっと、何が?」

「普通に考えてワシらみたいなのがこうして表に出てきて暴れまわっているなんて事は普通ではないじゃろ? そんな非現実的な事、普通は起こり得ない」

「それお前が言うのかよ」

「うん、まあ幽霊のワシが言っても説得力は無いの。でもおかしい物はおかしい筈じゃ。何も無い筈の空間から声が聞こえる。薄っすらと何かが見える。勝手に物が動く。そういう事はあっても、今この場で起きているような地獄絵図みたいな状況ははっきり言って異常じゃろ」

「いや異常だと思うけど……なんか生きてる側の人間の話聞いてるみたい」

「まあ死んでる間の記憶がほぼ全く無いからの。さっき見付けたカレンダーを見る限り少なく見積もって500年は経過しているみたいじゃが、ワシの感覚的には死んだときからシームレスじゃ。そりゃ感性はどっちかと言うとお主らと変わらんて。普通に自分が幽霊になっていて、幽霊って本当に居たんだ! ってなったし、周りの連中みて幽霊だ! 怖! ってなっとる。自我があるのもワシだけみたいじゃし」

 そう言ってシルヴィの中の人は軽く咳払いをする。

「さて、話を戻すかの。そんな訳でワシは数日前にこの世界で意識を取り戻した訳じゃが……それ自体がおかしい事だというのは、霊になった今感覚的にも分かる。今の自分の体を実験材料にして色々と新しい術式を構築して調べもしかたが、やはりワシの感覚は間違っていなかった……やっぱりワシらみたいなのが此処に居る事がおかしいんじゃ」

 そして一拍空けてからシルヴィの中の人は真剣な声音で言う。

「この世界のバランスが酷く不安定になっている。少なくともこういう事が起こり得る位には歪んでいるんじゃよ」

「……ごめん、言ってることがあんまり分かんない」

「まあ本当にざっくりとワシの目的をいうとこんな感じじゃ」

 そしてシルヴィの中の人は拳を掌に叩きつけて言う。

「幽霊のワシ単体ではこの屋敷から出られん。だからこの娘の体を借りて外に出て、この世界で起きている問題を解明し解決する。今此処で誰かが動かねば取り返しの付かない事になる気がするからの……まあつまりはこの世界を救おうって訳じゃ」

 そんな大それた良く分からない事を。
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