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三章 聖女さん、冒険者やります
20 偉人の魔術師、推測
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「……なるほど、確かに世界規模の大問題が起きとるの」
ステラから一通り話を聞いたレリアさんは静かにそう呟いた後、一拍空けてから言う。
「同時期に各国の聖女が追放されるような事があり、少なくとも一国は結界が妙な事になっている。そして謎の魔術を使う魔術師が生贄を用意してヤバい術式を発動しようとしていたと……仮に各国の聖女を追放したのが術式発動の下準備で先日あったという一件でがそのトリガーとなるのだとすれば、ワシが感じたこの世界の異変と同規模の何かを作り出す事も可能かもしれん」
「だけどその計画は俺達が止めている。それにアンナは紆余曲折有って自分の居た国に住んでるからな。各国全部の結界が妙な事になってる訳じゃねえから、その仮説は一応俺達の中じゃ否定してる」
「分からんぞ? 一国のみ別の役割を担っていて残りは皆同じようにとなっているかもしれん……まあいずれにしろ、お主らはその計画を止めた。止めたのに世界がおかしな事になっておる。という事は……別件か?」
「なんかそんな気がしてきたな。つまり現在進行形でヤベエ事が二つ起きてると」
「その可能性が高いの……とはいえ、それも憶測でしかない訳じゃが」
一拍空けてからレリアさんは言う。
「結局その未知の術式をワリは見ておらん。おかしくなった結界もじゃ。お主らがもう少し詳しい情報を握っていれば何か答えを授ける事が出来たかもしれんがこれではどうにもならん。逆もまたしかり。お互い何か問題が起きているという事実だけを知っていて詳しい事にまるで踏み込めておらん」
「……まあそれはそうか」
「分からない事が分かっただけじゃな」
「だな」
ステラとレリアさんはそう言って苦笑いを浮かべる。
だが一拍空けてから、少し離れた所に居るシルヴィに視線を向けてレリアさんは言う。
「まあでもワシが先日の事件とやらの現場をこの目で見れば話は変わってくるかもしれんがの」
「それは駄目」
レリアさんが何を言いたいのかが分かって、私は思わずそう言う。
いくら相手がレリア・オルフィルでもそれは駄目だ。
「……さっきからの様子を見る限り少しは靡くと思ったんじゃがの。じゃがそれでいい。それで迷い始めたらちょっと軽蔑するからの」
「俺もそうだけど、それで差し出すようだったらさっきアンタと戦ってねえだろ俺達。なんで今更試すような冗談言ってんだよ」
「ま、お主はそうかもしれんがそっちのワシのファンガールは分からんかったぞ。お主ら三人にとってはワシがそこに出向く事で得られる報酬は事件の解決、もしくは進展かもしれんが、こやつの場合はそこに強い知的好奇心が加わる。魔術にしろ科学にしろ、一定数はいるんじゃよ。知的好奇心の化物みたいな奴が。此処ではひとまずマッドサイエンティストとでも言っておこうかの」
「アンナの事、そんな奴かもしれねえって思ってたのかよ」
「そりゃさっきまでドンパチしていた相手に対して目ぇキラキラし過ぎじゃしなこやつ。ちょっとビビるじゃろ」
「……」
否定できない。
「……まあ」
そこは否定してよ。
……でもとにかく。
「一応私はそういう感じの人達みたいにはならないように心がけてるんで」
私が知る限り……多分あのクズがそういうタイプの研究者だ。
同じようには絶対になりたくない。
……絶対に。
「……どうやら嘘は言っておらんようじゃの」
どこか安心するようにそう言った後、レリアさんは言う。
「という訳でお主らの問題は何も進展せず、ワシも此処から動けず終いで諸々の調査も何も出来ん。もしかしたら明日にでも消えている可能性も否定できんが、そういう事でも無ければワシは暫く此処を根城にする事になりそうじゃの」
じゃから、とレリアさんは私達に言う。
「何か進展があったらワシの所に来ると言い。何か助言ができるかもしれん」
「ありがとうございます」
「その時はよろしく頼むぜ」
「そ、それとその……全然進展なくても色々と教えて欲しい事とかあるんで、暇な時とかここに来ても……」
「まあいいじゃろう。今回全く事が進まなかったとはいえ、ワシとお主達はちょっとした協力関係みたいなもんじゃしの」
「やった!」
よし今度暇なときに早速来よう!
こうなってくると聞きたい事とか山程あるよ!
本当に山程……いや、ちょっと待って……そうだ。
そうだそうだ!
「そういう事なら今はさっさと目的の品を探すとするか」
「あ、ごめんステラちょっと待って」
山程の中から重大な存在の事を思い出して、ステラを制止する。
「どうした? 色々聞くのは今度じゃねえのかよ」
「いや、今聞いといた方が良い事を思い出した」
そもそもこの前の現場を見て貰わなくても、その片鱗は今この場で見せる事が出来る。それをすっかり忘れていた。
私はポケットから、先日しーちゃんから預かった私には理解できないある物を取り出す。
「レリアさん。ちょっとこれを見てくれませんか?」
影が展開する魔術を内包した、理解できない技術が詰まった指輪を。
ステラから一通り話を聞いたレリアさんは静かにそう呟いた後、一拍空けてから言う。
「同時期に各国の聖女が追放されるような事があり、少なくとも一国は結界が妙な事になっている。そして謎の魔術を使う魔術師が生贄を用意してヤバい術式を発動しようとしていたと……仮に各国の聖女を追放したのが術式発動の下準備で先日あったという一件でがそのトリガーとなるのだとすれば、ワシが感じたこの世界の異変と同規模の何かを作り出す事も可能かもしれん」
「だけどその計画は俺達が止めている。それにアンナは紆余曲折有って自分の居た国に住んでるからな。各国全部の結界が妙な事になってる訳じゃねえから、その仮説は一応俺達の中じゃ否定してる」
「分からんぞ? 一国のみ別の役割を担っていて残りは皆同じようにとなっているかもしれん……まあいずれにしろ、お主らはその計画を止めた。止めたのに世界がおかしな事になっておる。という事は……別件か?」
「なんかそんな気がしてきたな。つまり現在進行形でヤベエ事が二つ起きてると」
「その可能性が高いの……とはいえ、それも憶測でしかない訳じゃが」
一拍空けてからレリアさんは言う。
「結局その未知の術式をワリは見ておらん。おかしくなった結界もじゃ。お主らがもう少し詳しい情報を握っていれば何か答えを授ける事が出来たかもしれんがこれではどうにもならん。逆もまたしかり。お互い何か問題が起きているという事実だけを知っていて詳しい事にまるで踏み込めておらん」
「……まあそれはそうか」
「分からない事が分かっただけじゃな」
「だな」
ステラとレリアさんはそう言って苦笑いを浮かべる。
だが一拍空けてから、少し離れた所に居るシルヴィに視線を向けてレリアさんは言う。
「まあでもワシが先日の事件とやらの現場をこの目で見れば話は変わってくるかもしれんがの」
「それは駄目」
レリアさんが何を言いたいのかが分かって、私は思わずそう言う。
いくら相手がレリア・オルフィルでもそれは駄目だ。
「……さっきからの様子を見る限り少しは靡くと思ったんじゃがの。じゃがそれでいい。それで迷い始めたらちょっと軽蔑するからの」
「俺もそうだけど、それで差し出すようだったらさっきアンタと戦ってねえだろ俺達。なんで今更試すような冗談言ってんだよ」
「ま、お主はそうかもしれんがそっちのワシのファンガールは分からんかったぞ。お主ら三人にとってはワシがそこに出向く事で得られる報酬は事件の解決、もしくは進展かもしれんが、こやつの場合はそこに強い知的好奇心が加わる。魔術にしろ科学にしろ、一定数はいるんじゃよ。知的好奇心の化物みたいな奴が。此処ではひとまずマッドサイエンティストとでも言っておこうかの」
「アンナの事、そんな奴かもしれねえって思ってたのかよ」
「そりゃさっきまでドンパチしていた相手に対して目ぇキラキラし過ぎじゃしなこやつ。ちょっとビビるじゃろ」
「……」
否定できない。
「……まあ」
そこは否定してよ。
……でもとにかく。
「一応私はそういう感じの人達みたいにはならないように心がけてるんで」
私が知る限り……多分あのクズがそういうタイプの研究者だ。
同じようには絶対になりたくない。
……絶対に。
「……どうやら嘘は言っておらんようじゃの」
どこか安心するようにそう言った後、レリアさんは言う。
「という訳でお主らの問題は何も進展せず、ワシも此処から動けず終いで諸々の調査も何も出来ん。もしかしたら明日にでも消えている可能性も否定できんが、そういう事でも無ければワシは暫く此処を根城にする事になりそうじゃの」
じゃから、とレリアさんは私達に言う。
「何か進展があったらワシの所に来ると言い。何か助言ができるかもしれん」
「ありがとうございます」
「その時はよろしく頼むぜ」
「そ、それとその……全然進展なくても色々と教えて欲しい事とかあるんで、暇な時とかここに来ても……」
「まあいいじゃろう。今回全く事が進まなかったとはいえ、ワシとお主達はちょっとした協力関係みたいなもんじゃしの」
「やった!」
よし今度暇なときに早速来よう!
こうなってくると聞きたい事とか山程あるよ!
本当に山程……いや、ちょっと待って……そうだ。
そうだそうだ!
「そういう事なら今はさっさと目的の品を探すとするか」
「あ、ごめんステラちょっと待って」
山程の中から重大な存在の事を思い出して、ステラを制止する。
「どうした? 色々聞くのは今度じゃねえのかよ」
「いや、今聞いといた方が良い事を思い出した」
そもそもこの前の現場を見て貰わなくても、その片鱗は今この場で見せる事が出来る。それをすっかり忘れていた。
私はポケットから、先日しーちゃんから預かった私には理解できないある物を取り出す。
「レリアさん。ちょっとこれを見てくれませんか?」
影が展開する魔術を内包した、理解できない技術が詰まった指輪を。
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