最強聖女は追放されたので冒険者になります。なおパーティーメンバーは全員同じような境遇の各国の元最強聖女となった模様。

山外大河

文字の大きさ
224 / 280
三章 聖女さん、冒険者やります

19 聖女さん、ファンガール

しおりを挟む
「ほう、後世にそういう風に伝わっておったか。悪くない気分じゃのう」

 そう言って胸を張ってご満悦にドヤ顔を浮かべるレリアさん。
 うん、この人はそうやってドヤれるだけのお方だ。

「現代魔術の基礎、ね。そりゃすげえな」

「勿論それだけじゃないよ。なんでも当時レリアさんが使っていた魔術の多くは他の人に説明しても理解してもらえない程に難解な物が多かったらしくてね、レリアさんが残した術式理論は未だに形にできていない……というか理論が正しい事を証明できていないんだ。でもそういう魔術を使っていた事自体は間違いがない訳だから、通称オルフィル理論を証明する事は私達研究者の一つの課題となっている位で──」

「お、おう、分かった分かったすげえんだな、うん」

 いや、なんか話遮られたけど、もっと言いたい事が……と、というか!

「そ、そうだ。ねえ誰か色紙とサインペンとか持ってない!? 折角だからサイン! サイン貰わないと!」

「すげえ、大好物目にした子供みてえに目ぇキラキラさせてやがる……俺はねえけど……二人は……持ってなさそうだな。というか持ってこねえよそんなもん」

「だ、だよねぇ……くそぅ! 依頼先でとんでもない人と出くわすケースを考えてちゃんと持ってくれば良かった! 私の馬鹿ァッ!」

「いやそんなもん想定してこんな所に持ち込む方が馬鹿だろ……」

 どこか呆れたように溜息を吐くステラ。

「いやーそういう事なら私馬鹿でもいいかな」

「……シルヴィもそうだけど段々各々変な所見えてくるよなぁ。まあいいけどさ」

 そう呟いたステラは一拍空けてからレリアさんに言う。

「ま、とにかく自己紹介も終わった事だしそろそろ話始めようぜ」

「そ、そうだ! 未解明のままこの時代に残ってる術式の話とか聞きたい事が山程──」

「いやそうじゃねえだろ……ああこれアレだ。俺がしっかりしないといけない奴だ」

「お主も大変じゃの」

「いや、状況変われば立場変わるかもしんねえからな。今度俺がおかしい時とかは助けてもらう」

「成程いいチームワークじゃの」

「そりゃどうも」

 そしてステラは一拍空けてから言う。

「で、アンタは確か世界のバランスがおかしくなってるみてえな事を言ってたな。その事について現時点で分かっている事を全部教えてくれ。こっちも持ってる情報は全部出す。情報の擦り合わせだ」

「成程……じゃがまあワシはあくまで直感でそう感じ取って魔術でなんか便宜上バランスとしか言えないような何かがおかしくなってね? ってのが分かってるだけじゃからの そう、なんかおかしくなってね? っていうふわふわした言葉でしか伝えられん情報しか持っとらん。寧ろ事の解決の過程でその詳細を掴んでいく必要があった訳じゃ」

「……つまり何も言えるような事は殆どねえと」

「まあそうなるの、申し訳ないが……じゃが」

「じゃが?」

「これでもそこのワシのファンが言った通り、ワシはそこそこ名が知れた魔術師での、お主らの抱えている問題に対しては何かしらのアドバイスを送れるかもしれん……もしかすればそこからワシが感じたバランスの話にも繋がるかもしれんしの。一回話してみい」

「……そうするか」

「ちょっと待って。レリアさん全然そこそこなんてレベルじゃないよ!?」

 だからテンション上がってるんだよね!
 多分ステラも後ろで控えてる二人もどの位ヤバい人かってのを正確には分かっていないと思うんだよね。
 私の知り合いで誰か分かる人居るかな?
 ……そうだ、ルカだ。
 よし今度会った時、私レリアさんの幽霊と会って話したんだよって自慢しよ。マウント取っちゃお。

「アンナちょっと静かに」

「むぐぐ!」

 ステラに口を塞がれる。
 酷い!

「で、どこから話すか」

 そしてステラは一拍空けてからこれまでの事をレリアさんに話し始めたのだった。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります

桜井正宗
ファンタジー
 無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。  突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。  銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。  聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。  大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした

猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。 聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。 思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。 彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。 それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。 けれども、なにかが胸の内に燻っている。 聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。 ※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています

処理中です...