234 / 280
三章 聖女さん、冒険者やります
28 聖女さん、まさかの来訪者
しおりを挟む
依頼を報告して報酬を貰う為に、私達は冒険者ギルドへと戻ってきた。
「おう、お疲れさん……っても、お前ら的にはCランクの依頼なんて朝飯前だと……って滅茶苦茶血塗れじゃねえか! どうした!?」
入口付近の喫煙所の前で声を掛けてきた部長さんが、主にステラの風貌を見て驚愕してそう言う。
「あ、あれ? お前ら受けたのって本当にCランクの依頼だったよな? これまさかアレか? どっかで依頼難易度の査定間違ってたか!?」
げっそりとした表情の部長さんは、煙草の火を消してから、頭を下げて言う。
「……慰謝料諸々は別口で用意するんで、この件はご内密で頼む。この通りだ」
「お、大人のガチ謝罪だ……」
「いや、今日みたいに俺が死ぬ程キレられんのは良いんだ。でもこの査定に関わった奴は守ってやんねえと……でも残業代の件で上とモメたばかりだからよ。うまくやれるかどうか分からねえし」
「ああ別に良いって慰謝料とか。第一あんなもん事前の査定とかで読めるかよ。この前の非じゃねえレベルのイレギュラーだったしな。こうして無事に帰ってこられているからそれで良い」
「そうか……悪いな。ありがとう」
改めて礼を言った後、部長さんは私達に聞いて来る。
「それで、一体どんなイレギュラーが有ったんだ。今後の為にも教えてくれねえか?」
「屋敷が幽霊屋敷になってた」
「成程幽霊屋敷……は?」
私がそう答えると部長さんは間の抜けた声を出す。
「幽霊って……あの幽霊か?」
「あの幽霊以外に幽霊なんてないっすよ」
「だ、だよなぁ……ってちょっと待ってくれ。幽霊なんて本当に……いや、でも事実居たからそんな怪我負ってんだよなぁ。居るのかぁ」
私達の誰かが怪我を負っただけで話の信憑性が増すんだ……まあ私も知らない所でステラとかが怪我してたらそうなるかも。
「ちなみに今一人付いて来てるっすよ」
「え……いやいやお前、流石にそれは冗談だろ」
「ふむ、この男には見えておらん様じゃの」
私の隣に立っていたレリアさんがそう呟くけど、部長さんの反応は無い。
「いやいや、いるんすよ。ボクやシルヴィさんも最初は見えて無かったっすけど、色々あって見えるようになったんで、部長もその内見えるようになると思うっすよ!」
「ちなみに色々ってなんだよ」
「取り憑かれたっす」
「その内って、そんな事あってたまるか!」
と、そんなやり取りをしていると、どこかに外出していたのかギルドの方に向かって歩いて来た、受付嬢で多分マフィアのアリアさんが声を掛けてくる。
「あ、お疲れ様です……って何ですかその怪我。これはまた色々イレギュラーが有って……って、現在進行形でイレギュラーが起きてますね。何ですかその……皆さんは見えてます?」
「うん、見えてるし分かってる」
「私達の味方っす」
「ま、そういう訳じゃ。お主が誰なのかは存じ上げんが、警戒はしなくてよいぞ」
「そうですか」
瞬時に僅かな警戒態勢を取っていたアリアさんは、それを解く。
そしてそんな当たり前のように会話を繰り広げたアリアさんに、部長さんは問いかける。
「あの……これ見えていないの俺だけな感じか? それかもしかしてこれドッキリか何か? 俺何か試されてる?」
「さあ、どうでしょうか……それより」
幽霊という明らかな超常現象をそれよりの一言で片づけたアリアさんは、部長さんに問いかける。
「あの事、アンナさん達にお伝えしましたか?」
「いや、これからだ」
「あの事?」
なんだろう……冒険者としての事なら特別話す事なんてもう無さそうだし。
……という事はもう一つの方かな。
そして私の問いかけに部長さんは答える
「実はな、アンナさん。お前に会いたがっている奴がいるんだ」
「私に? 誰だろ……もしかしてしーちゃんがギルドに来てたりした?」
「いや、アイツ絡みではあるが違うな」
しーちゃん絡みではあるんだ。
そしてまた知らない所でしーちゃんが訳の分からない事に巻き込まれてそうで心配になっている私に部長さんは言う。
「驚くと思うが……相手はお前の後任だよ」
「私の後任? ……ってまさか!」
「ああ。国を追放されたお前に変わって新しく聖女の座に就いた若い女だ。ソイツが今、お前を探しにこの国にまで来ている」
「おう、お疲れさん……っても、お前ら的にはCランクの依頼なんて朝飯前だと……って滅茶苦茶血塗れじゃねえか! どうした!?」
入口付近の喫煙所の前で声を掛けてきた部長さんが、主にステラの風貌を見て驚愕してそう言う。
「あ、あれ? お前ら受けたのって本当にCランクの依頼だったよな? これまさかアレか? どっかで依頼難易度の査定間違ってたか!?」
げっそりとした表情の部長さんは、煙草の火を消してから、頭を下げて言う。
「……慰謝料諸々は別口で用意するんで、この件はご内密で頼む。この通りだ」
「お、大人のガチ謝罪だ……」
「いや、今日みたいに俺が死ぬ程キレられんのは良いんだ。でもこの査定に関わった奴は守ってやんねえと……でも残業代の件で上とモメたばかりだからよ。うまくやれるかどうか分からねえし」
「ああ別に良いって慰謝料とか。第一あんなもん事前の査定とかで読めるかよ。この前の非じゃねえレベルのイレギュラーだったしな。こうして無事に帰ってこられているからそれで良い」
「そうか……悪いな。ありがとう」
改めて礼を言った後、部長さんは私達に聞いて来る。
「それで、一体どんなイレギュラーが有ったんだ。今後の為にも教えてくれねえか?」
「屋敷が幽霊屋敷になってた」
「成程幽霊屋敷……は?」
私がそう答えると部長さんは間の抜けた声を出す。
「幽霊って……あの幽霊か?」
「あの幽霊以外に幽霊なんてないっすよ」
「だ、だよなぁ……ってちょっと待ってくれ。幽霊なんて本当に……いや、でも事実居たからそんな怪我負ってんだよなぁ。居るのかぁ」
私達の誰かが怪我を負っただけで話の信憑性が増すんだ……まあ私も知らない所でステラとかが怪我してたらそうなるかも。
「ちなみに今一人付いて来てるっすよ」
「え……いやいやお前、流石にそれは冗談だろ」
「ふむ、この男には見えておらん様じゃの」
私の隣に立っていたレリアさんがそう呟くけど、部長さんの反応は無い。
「いやいや、いるんすよ。ボクやシルヴィさんも最初は見えて無かったっすけど、色々あって見えるようになったんで、部長もその内見えるようになると思うっすよ!」
「ちなみに色々ってなんだよ」
「取り憑かれたっす」
「その内って、そんな事あってたまるか!」
と、そんなやり取りをしていると、どこかに外出していたのかギルドの方に向かって歩いて来た、受付嬢で多分マフィアのアリアさんが声を掛けてくる。
「あ、お疲れ様です……って何ですかその怪我。これはまた色々イレギュラーが有って……って、現在進行形でイレギュラーが起きてますね。何ですかその……皆さんは見えてます?」
「うん、見えてるし分かってる」
「私達の味方っす」
「ま、そういう訳じゃ。お主が誰なのかは存じ上げんが、警戒はしなくてよいぞ」
「そうですか」
瞬時に僅かな警戒態勢を取っていたアリアさんは、それを解く。
そしてそんな当たり前のように会話を繰り広げたアリアさんに、部長さんは問いかける。
「あの……これ見えていないの俺だけな感じか? それかもしかしてこれドッキリか何か? 俺何か試されてる?」
「さあ、どうでしょうか……それより」
幽霊という明らかな超常現象をそれよりの一言で片づけたアリアさんは、部長さんに問いかける。
「あの事、アンナさん達にお伝えしましたか?」
「いや、これからだ」
「あの事?」
なんだろう……冒険者としての事なら特別話す事なんてもう無さそうだし。
……という事はもう一つの方かな。
そして私の問いかけに部長さんは答える
「実はな、アンナさん。お前に会いたがっている奴がいるんだ」
「私に? 誰だろ……もしかしてしーちゃんがギルドに来てたりした?」
「いや、アイツ絡みではあるが違うな」
しーちゃん絡みではあるんだ。
そしてまた知らない所でしーちゃんが訳の分からない事に巻き込まれてそうで心配になっている私に部長さんは言う。
「驚くと思うが……相手はお前の後任だよ」
「私の後任? ……ってまさか!」
「ああ。国を追放されたお前に変わって新しく聖女の座に就いた若い女だ。ソイツが今、お前を探しにこの国にまで来ている」
0
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります
桜井正宗
ファンタジー
無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。
突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。
銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。
聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。
大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした
猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。
聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。
思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。
彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。
それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。
けれども、なにかが胸の内に燻っている。
聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。
※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる