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三章 聖女さん、冒険者やります

29 後任聖女、来訪

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「え、ちょ、なんで!? 何しにこんな所に……!?」

「さあな。それはまだ本人の口からは聞けてねえらしい」

「……滅茶苦茶きな臭いね」

 私が張った結界がまだ健在で引継ぎ中。
 だからまだ管理者である新しいあの聖女がこの国に来るっていうのは問題無いし、そもそも各国で起きている事を考えると、新しい聖女が危険人物の可能性が高い訳で。

 だから国を出て自由に動けるという意味では、どっちの場合でも考えられる。

 だけど動く意味は分からない。
 それも私を探す為にだ。

 前者なら自分じゃどうにもできないから泣きつきに来たって感じかな?
 でも、流石に今の状況を考えるといくらあの馬鹿王でも私利私欲で私を追放して新しい聖女を迎え入れたって線が薄くなっている気がするし……そしてそうでなければ何だろう。
 今起きている事が次のステップに進んだという事だろうか。

 実際に先日のテロを皮切りにあんな幽霊屋敷が出てきたり、空間を抉り取る何かが出てきたりと、色々起きているから。
 何か新しい動きが起きるのもおかしい事じゃない。

 会うにしろ会わないにしろ警戒しないと。
 と、そこで私は一つとんでもない事実に気付く。

「……って、ちょっと待ってちょっと待って」

「どうした?」

「あの、今の状況考えるとその聖女ってヤバい奴かもしれないんですけど……一体しーちゃんとどんな関係が?」

「最初に偶然接触したのがアイツ。で、アイツも事情を知っているんだ。機転を利かして一旦俺達のアジトの方に連れて来た。で、お前達にそれを伝える為の連絡を俺に寄こしてきたって感じだ」

「って事は多分しーちゃんもまだそこに居るって事だよね」

「まあいるだろうな。アイツこうなったら事が終わるまで関係者面して最後まで関わって来るのがいつものパターンだからな」

 そんなパターンとか言われる位にいつもいつも何かあるのか! って心配は一旦置いておいて、今の話だ。

 ……こうなった以上、もう会わないという選択肢はない。

 そもそも少しでも新しい情報が欲しい今、リスク考慮して会わないなんて選択肢は無かったのかもしれないけど、これで踏ん切りがついた。

「そんな訳で皆。ごめんだけど報酬貰ったらちょっと私行ってくる。ご飯は三人で行ってきて」

 帰って来るまでの間に、報酬貰ったらご飯でも食べに行こうって話をしていた訳だけど……それどころじゃなくなっちゃった。

 だけど皆は首を振る。

「いやいや、私も付いていきますよ。何があるか分からないんですから」

「ああ、俺もだ。友達の問題は俺達の問題でもあるし、そもそもシエルも心配だしな」

「第一友達云々抜きにしても、その手の問題ってボク達全員の問題っすからね。当然ボクも行くっすよ」

「……ありがと、皆」

 これで百人力だ。何が有っても大丈夫。

「よし。じゃあ俺の方からお前らが四人共今から向かうって連絡入れておくわ」

「よろしくお願いします」

「でも……無事連絡付くといいっすけどね。この前の戦いの事を考えると、もし敵なら相当強い可能性もあるっすから……現在進行形でエラい事にってパターンも……」

「そこは大丈夫だろ。俺の仲間はお前らが思ってるより優秀だ。それに……アイツらも呼んだ」

「アイツら?」

「もう二人居るだろ……この件の関係者」

「ルカとミカだ!」

「ああ。アイツらは早い段階で連絡が付いたからな……何かあった時の戦力としては充分だろ」

「……だね、なら安心」

 ルカが居るならまあ大丈夫でしょ、うん。

 それに丁度良いや。

 アイツに見えるかどうかは分からないけど、多分私が知る限りで一番レリアさんと会いたそうなのがルカだ。
 最初はレリアさんの霊と会った事を自慢してマウントでも取ろうかなって思ってたけど、こうして付いて来て貰ってる訳だから会わせてあげよう。

 この前は色々と負担を掛けちゃったし、これで多少は借りを返せるかな。


 そんな訳で私達は再びマフィアの事務所へと向かう事にしたのだった。
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