262 / 280
四章《表》聖女さん、自分を追放した国に里帰りします
2 占い大臣、怪しまれる
しおりを挟む
私が向こうに気付いたのとほぼ同時に腰巾着もこっちに気付いたようで、驚いたような表情を浮かべた後、複雑な表情を浮かべた。
そりゃそうだよね、追放した筈の元聖女が国に戻ってきてるんだから。
そんな腰巾着にミーシャが声を掛ける。
「ただいま戻りましたわ」
「お、お帰りなさいミーシャさん」
と、ミーシャにそう言った後、こちらに視線を向ける。
「……えっと、アンナさんも」
「なんか腫れ物に触るみたいなテンションじゃん」
「い、いやぁ……そんな事無いですよハハハ……」
そう言って苦笑いする腰巾着。
「気まずさの極みって感じですね」
「まあ立場逆ならボクもああなるっすよ」
「経緯が経緯なんで同情はしませんけどね」
「そうっすね……って言いたいのは山々なんすけど、大臣って言わば王様とその下の人達との中間管理職みたいなポジションっすよね。だったら普段色々見て来たからなんかこう……大変そうだなぁって気も……」
「大臣ってそういうポジションでしたっけ?」
少し後ろでシルヴィとシズクがそんな議論を交わしているのを聞きながら、私は腰巾着に問いかける。
「で、アンタはなんでこんな所にいるの?」
「確かに。私戻って来るタイミングも何も伝えてませんのに」
「……なんかアンタ達相手だと何でも怪しく見えて来るね。なんか企んでる?」
「いや企んでない! 企んでませんよぉ! ほら、アレです。そろそろミーシャさんが戻って来るかなって占ってみたら今日のこの位の時間帯にって感じに出たんで」
「占い?」
なんか訳分かんない事言い出したよ腰巾着。
「いやいや占いって、こんなピンポイントで物事的中させられる占いなんて無いでしょ。なんか余計に怪しくなってきたんだけど! 絶対何か企んでる!」
「いや! いやいやいや! ……いやまあおっしゃる通り怪しさしか無いのは自分が一番よく分かってるんですけど……」
苦笑いを浮かべながら視線を泳がせる腰巾着から視線をミーシャに移して問いかける。
「ミーシャもそう思うよね?」
「……アンナさん。正直に申し上げると、彼の話は普通にあり得る話ですわ」
「……え?」
なんだろう、ミーシャがこの腰巾着の肩を無理矢理持つタイプだとは思えないし……マジで言ってる?
「え? ってなるのも分かりますが……一つ可能性として聞いてくださいませ」
ミーシャは思い返すように言う。
「私がアンナさんに謝りに行こうと思った時、私はあなたの位置情報を一切把握していなかった。そんな中、私に一番アンナさんが居る可能性が高い場所として挙げたのがあの国でした。移民の受け入れも盛んだからと」
「う、うん……」
まあ確かにあの国は冒険者になれば簡単に滞在する為のビザとして機能する身分証明書が手に入っちゃうちょと滅茶苦茶さがある国だし、可能性として挙げるのは分かるね。
「でもそれと占いにどんな関係が?」
「あの時彼自身にそういう意思が有ったかは分かりませんが、推測したアンナさんの居場所を口にする時よりも、移民の受け入れが盛んという根拠を述べる時の方が露骨に自信が無さげでした。その理由は根拠をその場の思い付きの後付けで用意したからではないかと思っています」
「……え、俺そんなに声のトーンとか変わってました?」
「変わってましたわ」
「えっとつまりどういう事?」
「彼は占いでアンナさんの居場所を事前に把握していたのではないか、という事です」
「……」
「……」
「……」
私はシルヴィとシズクと顔を合わせて首を傾げる。
……そんな事あるぅ?
そりゃそうだよね、追放した筈の元聖女が国に戻ってきてるんだから。
そんな腰巾着にミーシャが声を掛ける。
「ただいま戻りましたわ」
「お、お帰りなさいミーシャさん」
と、ミーシャにそう言った後、こちらに視線を向ける。
「……えっと、アンナさんも」
「なんか腫れ物に触るみたいなテンションじゃん」
「い、いやぁ……そんな事無いですよハハハ……」
そう言って苦笑いする腰巾着。
「気まずさの極みって感じですね」
「まあ立場逆ならボクもああなるっすよ」
「経緯が経緯なんで同情はしませんけどね」
「そうっすね……って言いたいのは山々なんすけど、大臣って言わば王様とその下の人達との中間管理職みたいなポジションっすよね。だったら普段色々見て来たからなんかこう……大変そうだなぁって気も……」
「大臣ってそういうポジションでしたっけ?」
少し後ろでシルヴィとシズクがそんな議論を交わしているのを聞きながら、私は腰巾着に問いかける。
「で、アンタはなんでこんな所にいるの?」
「確かに。私戻って来るタイミングも何も伝えてませんのに」
「……なんかアンタ達相手だと何でも怪しく見えて来るね。なんか企んでる?」
「いや企んでない! 企んでませんよぉ! ほら、アレです。そろそろミーシャさんが戻って来るかなって占ってみたら今日のこの位の時間帯にって感じに出たんで」
「占い?」
なんか訳分かんない事言い出したよ腰巾着。
「いやいや占いって、こんなピンポイントで物事的中させられる占いなんて無いでしょ。なんか余計に怪しくなってきたんだけど! 絶対何か企んでる!」
「いや! いやいやいや! ……いやまあおっしゃる通り怪しさしか無いのは自分が一番よく分かってるんですけど……」
苦笑いを浮かべながら視線を泳がせる腰巾着から視線をミーシャに移して問いかける。
「ミーシャもそう思うよね?」
「……アンナさん。正直に申し上げると、彼の話は普通にあり得る話ですわ」
「……え?」
なんだろう、ミーシャがこの腰巾着の肩を無理矢理持つタイプだとは思えないし……マジで言ってる?
「え? ってなるのも分かりますが……一つ可能性として聞いてくださいませ」
ミーシャは思い返すように言う。
「私がアンナさんに謝りに行こうと思った時、私はあなたの位置情報を一切把握していなかった。そんな中、私に一番アンナさんが居る可能性が高い場所として挙げたのがあの国でした。移民の受け入れも盛んだからと」
「う、うん……」
まあ確かにあの国は冒険者になれば簡単に滞在する為のビザとして機能する身分証明書が手に入っちゃうちょと滅茶苦茶さがある国だし、可能性として挙げるのは分かるね。
「でもそれと占いにどんな関係が?」
「あの時彼自身にそういう意思が有ったかは分かりませんが、推測したアンナさんの居場所を口にする時よりも、移民の受け入れが盛んという根拠を述べる時の方が露骨に自信が無さげでした。その理由は根拠をその場の思い付きの後付けで用意したからではないかと思っています」
「……え、俺そんなに声のトーンとか変わってました?」
「変わってましたわ」
「えっとつまりどういう事?」
「彼は占いでアンナさんの居場所を事前に把握していたのではないか、という事です」
「……」
「……」
「……」
私はシルヴィとシズクと顔を合わせて首を傾げる。
……そんな事あるぅ?
12
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります
桜井正宗
ファンタジー
無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。
突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。
銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。
聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。
大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした
猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。
聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。
思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。
彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。
それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。
けれども、なにかが胸の内に燻っている。
聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。
※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる