最強聖女は追放されたので冒険者になります。なおパーティーメンバーは全員同じような境遇の各国の元最強聖女となった模様。

山外大河

文字の大きさ
265 / 280
四章《表》聖女さん、自分を追放した国に里帰りします

5 聖女さん達、情報交換

しおりを挟む
 元々ミーシャを城へと送迎する為に馬車を用意していたらしく、私達はそれに乗りあの馬鹿も居るであろう城を目指した。
 そしてその道中で私達は情報交換もおこなう。

 ロイとしてもシルヴィとシズクの居た国の話を聞いて情報を入れたかったんだろうし、私達としてもこの国の外務省に動いてもらう為の交渉をこの先円滑に行う為にも、間に入ってくれそうな人間にこちらの事情を伝えておきたかった。

 ……とはいえ交渉もなにも、私達がアクションを起こす前に、まさしく頼みたい事をやっていたみたいなんだけどね。

「……普通占い信用してそこまで人とお金動かす?」

「俺も同じ事言ったんですよ。それでもグラン様は何も無ければそれで良いだろって」

「流石グラン。良くも悪くも思い切りが良いですわ!」

 どうやら既にこの国の外務省が動いて、世界各地で起きている事について。
 正確に言えば、何かが起きているのかを調べているらしい。

 まだ動き始めたばかりで分かっている事は何も無いらしいけど、実質的に何もせずとも、私達の目的は達成出来ちゃったわけだ。
 こうなったら私達に直接情報を回してくれなかったとしてもミーシャが、そして多分ロイ辺りは回してくれそうだしね。

 だから……正直行く意味ある? って感じになりつつもある訳だよ。
 まあ直接この国の外務省と協力関係を結べた方が良いに決まっているから、行く意味はあるんだろうけど。

「……とにかく、その思い切りの良さに今回は救われそうですね。アンナさん達から聞いた話を考えるに、少しでも早く事を進めた方が良いのは間違いないでしょうから」

 情報交換の過程で、当然こちらからの情報も提供した。
 話した範囲についてはミーシャに伝えた事と同じ位。
 つまりほぼフルオープン。
 流石に国に動いてもらうってなったら変な隠し事は出来ないしね。

「……しかし、そういう事か」

 ふと納得したようにロイがそう呟く。

「そういう事って、何がっすか?」

「ええ、腑に落ちたんですよ。自分の占いの結果に」

「占いの結果……ですか?」

 シルヴィの問いに追ロイは答える。

「グラン様がアンナさんを追放すると言い出した時、当然の事ながら内心何考えてんだこの馬鹿と俺は思いましたよ」

「アンタ腰巾着みたいなポジションの割に、内心かなり口悪いじゃん」

「あ……い、いや今のはうっかりです。うっかり」

「凄いスラスラと口に出てたっすけどね」

「気を付けないと本人の前で言っちゃいますよ」

「アンタの場合そうなったら大変でしょ。立場的にも物理的にも首吹っ飛びかねなくない?」

「いやグラン様に限ってそれは無いですね。もう実際に何度か口を滑らせてますけど、俺には良いけど他国のお偉いさんの前とかは気を付けろよって注意はされましたけど……ていうか振り返るとそれ以前も結構余計な事言っちゃってる気がする。良くクビになってないな俺……」

「……なんかアンナさんから聞いてイメージしてた王様からだいぶかけ離れて来たっすね」

「まあお友達人事で選ばれたのがロイって訳だから。身内には優しいって事なんじゃないかな」

「はははそうかもしれませんね。だとしたらその分頑張って支えないとなって思うんですけど」

 そう言って笑うロイ。
 ……なんかこう、それでお咎めなしで窘められてるって事は、文字通り本当にお友達人事なんだろうね。
 だから多分聖女のポジションがその【お友達】に入っていたら、追放とかにはさせずに穏便に事を進めたんじゃないかなって思う。

 私は入っていないから、こうなった訳だ。

 …………それだけか?

 いやそれだけでしょ、うん。
 私に過失は無いし。

「で、アンタが内心暴言吐いてたところの続きは?」

「ああ、そうですね。話が脱線してました」

 そう言ってロイは軽く咳払いをしてから続ける。

「まあ俺がそう思う位なんで、あの時のグラン様の行動は中々に滅茶苦茶でした。普通ならそれは止めるべきだ。だから俺は占ったんです。その選択が吉と出るか凶と出るか。答えは分かり切ってましたが……説得材料にする為にも、何よりも自分の背を押す為にも」

 ですが、とロイは言う。

「結果としては、アンナさんを追放した方がこの国どころか世界的が良い方に向かうとのものでした。こうなったら俺にはもう止める事は出来ません。背中を押してもらうはずだった占いにアームロックを掛けられた気分でしたよ」

「だから止めなかったんすか?」

「ええ。そして結果それは正しかった」

 ロイはどこか安堵した表情を浮かべて言う。

「その後、俺はこの占いを元にこの世界の事を占いました。その結果グラン様が外務省の人間を動かしている訳ですが……俺の占いが正しければ、こうして動き出すより前に、この世界は大変な事になっているかもしれなかった。その起きていたかもしれなかった日が先程話して貰った、アンナさん達が解決した事件の日です」

「……確かに私が追放された方が、世界的にいい結果になるって訳か」

「結果的にそうなった訳です」

 あの日私が追放された結果、皆と出会ってあの事件にも巻き込まれる事になった。
 それは皆も同じなのかもしれない。
 私がシルヴィと出会ったからその後ステラと出会ったし、ステラと出会っていなかったらルカ達と遭遇したあの依頼を受けていないし、それを受けて居なかったらシズクと組む事も無かったと思う。
 その後も言わずもがな。
 そんな感じに私だけじゃなく、私達があの一件に関わる切っ掛けになったのは、多分私があの日追放されたからだ。

 ……此処でもロイの占いは当たっていた訳だね。ちょっと気持ち悪い位に。

「まああんな意味分からない形で追放してきた行為は絶対肯定しないけどね」

「それで良いですよ。何度も言いますが、それは俺達が全面的に悪いんです」

 そう言って苦笑いを浮かべたロイは、一拍空けてから言う。

「まあとにかく、アンナさん達はそんな世界規模の問題に今だ向き合っている最中な訳で。当然俺達が得た情報は流しますよ。仮にグラン様が駄目だと言っても……まあ言わないと思いますがね」

「……」

 ……なんかこうして話している内に、あの馬鹿でも流石に情報回してくれるかって思えて来たのがなんか嫌だな。普通に嫌だ。
 拒否られて裏から誰かに情報流してもらう方が精神衛生上良い気がする。
 ……あんまりアイツのまともな部分の話を、見たく無いし聞きたく無いのかもしれない。

 とにかくあの馬鹿は嫌いだからね。
 周りが何言おうと。

 と、そうやって情報交換とかをしている内に。

「そうこうしている内に見えてきましたね。あれがドルドット城です」

 なんか色々と因縁がある古巣が見えて来た。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります

桜井正宗
ファンタジー
 無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。  突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。  銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。  聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。  大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした

猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。 聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。 思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。 彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。 それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。 けれども、なにかが胸の内に燻っている。 聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。 ※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています

処理中です...