最強聖女は追放されたので冒険者になります。なおパーティーメンバーは全員同じような境遇の各国の元最強聖女となった模様。

山外大河

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四章《表》聖女さん、自分を追放した国に里帰りします

14 聖女さん達、ひとまず残留

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「えっと、どういう事? 教えてよ詳細を。なんで皆と合流しちゃ駄目なのかな?」

 私が戻っても大して意味が無い、なんて理由だったら割とすんなり受け入れられると思う。

 今日皆は再びあの地下を調べている訳だけど、そこはもうドンパチをやり切った場所だから今回これからの戦場になる可能性は低い様に思えて。
 そういう意味で戻ったところで戦力過多になりそうだから意味が無いっていうのなら分かる。

 そしてもう一つ、私は魔術の研究者としてあの地下に掛けられた魔術に対して手も足も出なかった訳で、そもそも大した役割を担えないんじゃないかって可能性もあるから、そういう意味で戻らなくても良いって事なら分かる。

 あんまり認めたくは無いけどね。
 正直レリアさんが居る以上、その分野で私にできる事は精々あの人の助手みたいな真似ができるかどうか程度だ。

 まあそんな訳で、行っても無駄って事なら一応理解はできるよ。

 だけど合流する事が駄目だと否定されるなら、話は別。

「それがどういう理由かで、今後の行動変わるからさ」

 例えば戻る事が私にとって危険だから、みたいな理由だったら普通に戻らないといけない。

 ロイの占いが当たっている事を前提で考えて戻る事が危険だというのなら、そういう状況にきっとステラやルカ達を晒している事になる訳で。
 だから危険だと、もしくはそれを通り越して最悪かもしれない占いの結果を、他の皆にも降りかかるかもしれない分まで全部含めて捻じ曲げて突破しないといけない。

 今馬鹿を含めたこの国の連中が、占いの結果本来取らなかったであろう行動を取っているように、私が足を運ばない事を推奨されるような危険がある事が分かった前提でこの先に一歩踏み出せば、違った結果を引きずり出せるかもしれないから。

 占いが外れるとかじゃなくて、占いの結果を捻じ曲げる。
 未来を捻じ曲げる。

 その為に行かないといけない。


 でももし、私が戻る事自体が、何か良くない事のトリガーになるのだとしたら?


 もしもそんな理由なのだとしたら、少し考えなければならなくなる。
 いやまあ私が動くことが良くないパターンて何だよって自問自答したくはなるけども。

 とにかく……進むにしろ止まるにしろ、もう少し情報は必要だ。

 だけどロイは気まずそうに言う。

「すみません、今回占えたのはそこまでです。具体的な事は何も……」

「え、ほんとに? なんかもうちょっと細かい話聞けると思ったんだけど」

「同じような事を占うとしても、どこまで深堀できるかなんてのはケースバイケースです。残念ながら、今回はこの程度という事で」

「この程度って言っても滅茶苦茶凄いと思うんすけどね。8割方当たる占いでそこまで出してくれたら」

「まあそれはそうなんだけどね」

 実際これだけの情報でも精度考えたら引くレベルではあるんだよね。

「でもどうしますアンナさん。占いじゃ合流しちゃ駄目って事ですけど」

 シルヴィに聞かれて考えるけど……うーん。
 …………これは駄目だ。

「戻って合流したら私が危ないって事なら自力でどうにかするから良いんだけど……戻る事で他の皆に迷惑が掛かる可能性の事考えたら、ちょっと迂闊に動けないかな」 

 此処で我を貫ける程、どんな状況になっても打開できる優秀な人間じゃない。
 不確定でも悪い方に傾いている方に進むだけのメリットを、多分自分は用意できないから。

 自分がそこまで特別秀でた駒ではない事は理解しているつもりだから。

「向こうの事は向こうの皆に任せる事にするよ」

 此処は皆に託そうと思う。

 大丈夫。
 向こうにはステラもルカもミカも、それにレリアさん。
 後、国が違うとはいえ憲兵のトップの居る前で言いたくないけど、マフィアさん達もいる訳だから。

 安心して任せられる。
 そこに不安要素を混ぜ込む必要は無いでしょ。

「正直俺もその方が良いと思いますぜ。意図せずパズルが完成するなんて事は良くも悪くも多々ある訳で。時には何もしない勇気ってのも必要でさぁ」

「それでしたら、お二人はどうされますの?」

 シルヴィとシズクにミーシャから向けられた問いに、ロイが補足する。

「ああ、同時に占わせて貰いましたが、お二人は此処に残っていただいても他の皆さんに合流していただいても、そのどちらでも問題ありません」

「そう聞くと、ほんと私が何かのトリガーになっちゃってる気がするね……それでほんとにどうする?」

 私が改めて問いかけると、二人は少し考える素振りを見せてから言う。

「アンナさんが残るなら私も残ろうかなと」

「ボクも同意見っす。なんか穏便に済んでいるとはいえ、流石にアンナさん一人にはしておけないかなって」

「シズクさん、多分あんまり穏便には進んでないですよ」

「……確かに。だったら尚更っすね」

 言いながら端にティッシュを詰めた馬鹿に視線を向ける二人。
 そして何故かピースサインを向ける馬鹿。
 なんのピース? IQ示唆してる?
 あ、ダブルピースになった。IQ4だ。

 ……まあとにかくだ。

「じゃあとにかく、私達三人は今日のところは此処に残留って事で決定だ……なんか皆には大変な事押し付けてるようで悪いけど」

 こっちがあまりにも楽過ぎて本当に申し訳ないんだけどマジで。

「実際占いが無かったとしても、その方が良かったのかもしれません」

 色々と察してくれたようにミーシャは言う。

「向こうの皆さんは文字通り任せられるような人達なのでしょう? そしてこの国では向こうの皆さんが得られない情報を得られる可能性がありますわ」

「外務省の報告、だよね」

「ええ。そしてそれはきっと私達第三者を通すよりも、きっとより良い形で皆さんに伝わる筈ですわ。特に此処に居るのが魔術の専門家のアンナさんなら尚更。つまりこのまま滞在する以上、まだまだこれからですわ」

 だから、とミーシャは言う。

「大変な事を押し付けてなんていませんわ。あの場に居た私以外の全員が、頑張り継続中って感じなのです」

 あの場に居たミーシャ以外の全員、か。

「いやいやミーシャも含めて全員で良いでしょ」

「そう思って頂けていると嬉しいですわ」

 どう考えてももう部外者じゃないでしょミーシャも。

 ……というより、この国の外務省の人達や公安の人達も含め、物凄い人数の人が結果的に同じ問題に向かって取り組んでいるんだ。

 最初は各々皆が聖女クビになって追放されたっていう一個人のトラブルみたいなところからスタートしてるのにね。
 そこから皆合流して、今度はマフィアと手を組んだと思ったら国一つ仲間になった感じ。
 スケール大きくなりすぎ。
 ……もしかしてまだまだデカくなるんじゃないかな。

 魔正教だかなんだか知らないし、そもそも本当に敵がソイツらなのかは分からないけど……もう全体の規模でも良い勝負できる気がする。

 いやでもIQ4の馬鹿と仲間ってのはちょっと嫌だな。
 ……ってそうだ、馬鹿とはビジネスライクな関係だ、ビジネスライク。
 あ、IQ6に増えてる……もはやピースじゃないじゃん。なにあれ。

 ……とにかく。

 こっちはこっちでやれる事全力でやって帰るから、頑張れステラ達!


 ……いや、ステラは何事も無ければバイトだった。
 まあバイト頑張れではあるんだけど、今言うのもなんか違う気がするし……じゃあこの場合頑張れルカ達で良いのかな?
 なんかステラの次だとそれが一番しっくり来るね。
 ……いや、普通に頑張れ皆でいいか。

 いやまあとにかく。

 そっちは頼んだ、皆!
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