最強聖女は追放されたので冒険者になります。なおパーティーメンバーは全員同じような境遇の各国の元最強聖女となった模様。

山外大河

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四章《裏》黒装束の男達、諸悪の根源との決戦に臨みます

1 黒装束の男達、再び地下へ

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 アンナ・ベルナール達がドルドット王国へと向かった後、残ったルカ達もそれぞれ動き始めた。
 居候先の飲食店でのアルバイトがあるステラ以外は先日の一件で戦場となった地下施設の再調査だ。

「ほぉ成程……確かに四方八方とんでもなく高度な術が施された空間じゃな!」

 先日の戦いの場となった地下施設内部を歩きながら、今回の調査の要となるレリアがややテンション高めにそう言う。
 彼女程の偉人がとんでもなく高度というのだから、そのレベルの高さはあの戦いの最中に自分達が感じていたものより相当高いのかもしれない。
 少なくとも今現時点の自分では、やはり何も理解でき無さそうだ。

 どうしようもない程に。

(……本当に、こんな有様で俺が何か役に立てるのか? ただ此処に突っ立っているだけじゃないのか?)

 気を抜けばそんな自問自答を繰り返してしまう。
 だけどその度に、何とか自分に言い聞かせる。

(……折れるな)

 なんとか、前を向く。
 この苦い記憶が詰まったかつての戦いの場で。

 そしてそう言い聞かせているルカをよそに、テンション高めなレリアにマルコが言う。

「ここら辺から既にお前みたいな偉人には情報の宝庫かもしれねえが、まずははっきり何かをやっていた最深部の調査だ」

「分かっておる。まあこの辺の調べも移動しながらやる訳じゃがの」

「器用な事しやがるな……まあ心強いが。とにかくニック、道案内頼むぞ」

「任せてくださいよ」

 ニット帽がトレードマークなマフィアの構成員、ニックがそう答え先頭を歩く。
 それに付いて行くとやがて到達する。

 あの時自分が到達できなかった目的地。
 子供達が捕らえられていた、何かしらの術式が発動する筈だった部屋。

「しかしこんなところに子供誘拐して閉じ込めとくなんて本当にヤバイよ。ウチの経験上まともだった奴なんて一人もいないし」

「経験踏まえて語れる辺り、ほんと凄い私生活送ってますよねシエルさん」

「でしょ。凄いでしょミカちゃん」

「ドヤるなそんな事でこの馬鹿がよ。毎度毎度訳分からねえ事に巻き込まれやがってふざけんなよマジで」

「マコっちゃんが言えた立場かな? いっつもどこかとドンパチしてる」

「マフィアとケーキ屋の娘一緒にすんじゃねえよ」

「良い意味で甘い所がある皆さんと甘いケーキ。共通点、あるよね」

「はぁ? 甘いのはウチのバカボスだけだ! 俺まで一緒にするんじゃねえよ!」

「どうだかなぁ……」

「なんかこの二人の痴話喧嘩聞いてると、真面目な事やりに来てるのにシリアス感消えますね。そう思いません? ボス」

「俺に同意求めないでくれる?」

 そんな風に場と目的に似合わずワイワイガヤガヤとしている皆の声を聞きながら、ルカはその場を調べ始めたレリアに問いかける。

「どうですか? 今の所何か分かった事は」

「少なくともこの場には道中に施されていたもの以外の術式は施されてはおらんな。撤退の際にしっかりと証拠隠滅は計ったのじゃろう。駒の脳にあんなプロテクトを施している連中じゃからな、良くも悪くもちゃんとしておる」

「……」

「……お主の前ではその話はしない方が良かったかの。すまん、傷を抉るつもりは無かったのじゃ」

「……いえ、全部俺の未熟さが招いた事です」

「……あの時も言ったがお主はまだ若い。それにこれからの人生はまだ続いて行く。これから積み重ねていけば良い。変に焦るな」

「精進します」

「それでいいのじゃ」

「……それで、つまりこの場には何も残っていないと」

「ん? ああそうじゃな……だけどこの地下に足を踏み入れた事自体は決して無駄じゃ無かった。寧ろこの道中にこそ大切な情報が眠っていたと言っても良い」

「大切な情報……それは一体……」

 ルカがそう問いかけると、少し気まずそうに視線を反らしたレリアは逆にルカに尋ねてくる。

「なあ。確かシエルはワシのファンガール……アンナ・ベルナールの親友という事じゃったな」

「ええ、どうやらそのようです」

 レリアの問いにそう答えながら、内心疑問に思う。

(……どうして今、ベルナールの名前が出てくる?)

 その疑問の答えが出る間も無く、レリアは言った。

「……可能なら、今の問い自体を一旦忘れてくれ。それから……少しあの娘と話がある」

 アンナ・ベルナールの親友であるシエルに視線を向けて。
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