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一章 幸運少年と不幸少女
9 戦いの後
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その後、アリサが全ての魔獣の角を取り袋に詰めた後、少し休んでから王都へと戻る事にした。
休んでいる間に魔獣が出てこなかったのが幸いだった。もしかすると狩り尽くしたのかもしれない。
そして休んである程度体力を回復させてから森を出た。
幸いな事に俺は足をやられてはいなかった。
だからまあ体力の回復と鎮痛剤。後はアリサの応急処置のおかげで、死ぬほどキツイけどとりあえず歩く事はできた。
……うん、死ぬほどキツい。実際現在進行形で重体な訳だし。
だけど流石に八割近い魔獣をアリサに任せておいて、帰りに背負ってもらったりする訳にもいかない。この位の事は頑張ろうと思う。
だから時間は掛かったけど、なんとか王都の冒険者ギルドにまで辿りついた訳だ。
「あの……なんか森がエライ事になってたんですけど」
「これ魔獣の角です」
「え? ちょ、ちょっと待ってください! なんですかこの量!?」
「……魔獣、100体以上いましたよ」
俺達はあの森が明らかにCランクの依頼となる様な状況ではなかった事を説明した。
受付嬢のお姉さんも持ってきた角の量や俺の怪我を見て、自分達が把握していた以上の状態になっていた事を理解してくれたのだろう。
「申し訳ありません! こちらが把握していた情報と現場の状態に大きな齟齬があったようで……本当に申し訳ありません!」
「あ、いや、頭上げてください! とりあえず生きて戻ってこれたんでセーフって事で、ね?」
「す、すみません! ですがそんな簡単には終わらせられないんですよ。これは私達にとって大きな失態ですから。とりあえず本日は規定の報酬をお支払いしますが、後日正当な審査の元、追加報酬をお支払いさせていただきます!」
そう言った受付嬢のお姉さんは慌てた様子で、そんなことよりと俺に向かって言う。
「とにかくこの話はまた後です! とにかく早くその怪我どうにかしましょう! 今馬車を呼びますので、それ乗って早く病院に行ってください! 当然交通費や治療代はギルドが持ちますから!」
「あ、そうですか……じゃあお願いしてもいいですか?」
俺は素直にそれを受け入れる事にした。
なんというか……俺達がやったのは応急処置止まりで。後は頑張ってアリサの隣りで涼しい顔して歩いていたけど、正直限界もまあ限界だった。
腕はまあいいとして、背中と脇腹。後多分喰らった突進であばら骨とか折れて無い? 大丈夫? 死ぬ程痛いよ?
「そ、そんな訳でアリサ。俺ちょっと病院行ってくるよ」
「あ、ボクも付き添いで行きます!」
そして馬車の代金も治療費も冒険者ギルド持ちで、病院に担ぎ込まれる。
そして。診察終了。
「これは……一週間程入院が必要だね」
「えぇ……」
なんか普通に入院する事になった。
まあ当然といえば当然の怪我をしている訳だし。
というか一週間程入院って、多分それで完全に完治する訳じゃないだろうし……復帰するまでそこからもう少し時間がかかりそうだな。
それでも冒険者を始めとする普段から戦いに臨む様な人間は、そうではない普通の人とは鍛え方が違う。具体的に科学的な根拠がある訳ではないが、確かにそうなのだ。
常人よりも高い身体能力や動体視力に……後は回復力を持ち合わせている。
でなければあばら骨が思いっきり折れてて一週間で治るかよ。
……うん、やっぱりあばら折れてた。
そして病室で、付き添いに来ていたアリサが言う。
「まあゆっくり治してください。どうもこういう場合って入院費もギルドが持ってくれるみたいですよ」
「そりゃありがたいな」
「まあ向こうのミスが原因みたいなものですからね」
「ま、あんな馬鹿みたいな数出てこなきゃこうはならなかっただろうな」
入院費なんてのは馬鹿にならないだろうし、その辺をギルドが持ってくれるならありがたい。
「ボクも毎日お見舞いに来ますよ」
「無理はすんなよ。お前にだって都合とかあるだろうし」
そしてそうは言うものの、それもありがたい事だった。
たった一週間とはいえ一人でいるのは退屈だろうから。
そしてそれはアリサも変わらなかったらしい。
「無理にはならないですよ。今他に予定ないですし……あってもクルージさんと一緒にいたいですし」
「……」
しかし改めてそんな事を言われると、凄い恥ずかしい気分になる。
そしてなんとなくアリサも同じような気持ちになったらしい。
「あ、ボク何か買ってきますね! あ、そうです、リンゴ! リンゴ買ってきます!」
そんな事言いながら物凄いスピードで病室から出て行く。
とりあえずあまり退屈しない入院生活になりそうだ。
「……」
そして考える。
アイツは昔ドラゴンと戦って死にかけたって言ってた。
そうなれば同じ様に病院に担ぎ込まれたのだと思うけれど……その時俺にとってのアリサの様に、お見舞いに来てくれる人とかはいたのだろうか?
……おそらくいなかったのだろう。
いなかったから、今の人に飢えているアリサがいる。
そう考えるとやっぱり俺は幸せなんだと思う。
そして……アイツにも幸せになってほしいって思うんだ。
休んでいる間に魔獣が出てこなかったのが幸いだった。もしかすると狩り尽くしたのかもしれない。
そして休んである程度体力を回復させてから森を出た。
幸いな事に俺は足をやられてはいなかった。
だからまあ体力の回復と鎮痛剤。後はアリサの応急処置のおかげで、死ぬほどキツイけどとりあえず歩く事はできた。
……うん、死ぬほどキツい。実際現在進行形で重体な訳だし。
だけど流石に八割近い魔獣をアリサに任せておいて、帰りに背負ってもらったりする訳にもいかない。この位の事は頑張ろうと思う。
だから時間は掛かったけど、なんとか王都の冒険者ギルドにまで辿りついた訳だ。
「あの……なんか森がエライ事になってたんですけど」
「これ魔獣の角です」
「え? ちょ、ちょっと待ってください! なんですかこの量!?」
「……魔獣、100体以上いましたよ」
俺達はあの森が明らかにCランクの依頼となる様な状況ではなかった事を説明した。
受付嬢のお姉さんも持ってきた角の量や俺の怪我を見て、自分達が把握していた以上の状態になっていた事を理解してくれたのだろう。
「申し訳ありません! こちらが把握していた情報と現場の状態に大きな齟齬があったようで……本当に申し訳ありません!」
「あ、いや、頭上げてください! とりあえず生きて戻ってこれたんでセーフって事で、ね?」
「す、すみません! ですがそんな簡単には終わらせられないんですよ。これは私達にとって大きな失態ですから。とりあえず本日は規定の報酬をお支払いしますが、後日正当な審査の元、追加報酬をお支払いさせていただきます!」
そう言った受付嬢のお姉さんは慌てた様子で、そんなことよりと俺に向かって言う。
「とにかくこの話はまた後です! とにかく早くその怪我どうにかしましょう! 今馬車を呼びますので、それ乗って早く病院に行ってください! 当然交通費や治療代はギルドが持ちますから!」
「あ、そうですか……じゃあお願いしてもいいですか?」
俺は素直にそれを受け入れる事にした。
なんというか……俺達がやったのは応急処置止まりで。後は頑張ってアリサの隣りで涼しい顔して歩いていたけど、正直限界もまあ限界だった。
腕はまあいいとして、背中と脇腹。後多分喰らった突進であばら骨とか折れて無い? 大丈夫? 死ぬ程痛いよ?
「そ、そんな訳でアリサ。俺ちょっと病院行ってくるよ」
「あ、ボクも付き添いで行きます!」
そして馬車の代金も治療費も冒険者ギルド持ちで、病院に担ぎ込まれる。
そして。診察終了。
「これは……一週間程入院が必要だね」
「えぇ……」
なんか普通に入院する事になった。
まあ当然といえば当然の怪我をしている訳だし。
というか一週間程入院って、多分それで完全に完治する訳じゃないだろうし……復帰するまでそこからもう少し時間がかかりそうだな。
それでも冒険者を始めとする普段から戦いに臨む様な人間は、そうではない普通の人とは鍛え方が違う。具体的に科学的な根拠がある訳ではないが、確かにそうなのだ。
常人よりも高い身体能力や動体視力に……後は回復力を持ち合わせている。
でなければあばら骨が思いっきり折れてて一週間で治るかよ。
……うん、やっぱりあばら折れてた。
そして病室で、付き添いに来ていたアリサが言う。
「まあゆっくり治してください。どうもこういう場合って入院費もギルドが持ってくれるみたいですよ」
「そりゃありがたいな」
「まあ向こうのミスが原因みたいなものですからね」
「ま、あんな馬鹿みたいな数出てこなきゃこうはならなかっただろうな」
入院費なんてのは馬鹿にならないだろうし、その辺をギルドが持ってくれるならありがたい。
「ボクも毎日お見舞いに来ますよ」
「無理はすんなよ。お前にだって都合とかあるだろうし」
そしてそうは言うものの、それもありがたい事だった。
たった一週間とはいえ一人でいるのは退屈だろうから。
そしてそれはアリサも変わらなかったらしい。
「無理にはならないですよ。今他に予定ないですし……あってもクルージさんと一緒にいたいですし」
「……」
しかし改めてそんな事を言われると、凄い恥ずかしい気分になる。
そしてなんとなくアリサも同じような気持ちになったらしい。
「あ、ボク何か買ってきますね! あ、そうです、リンゴ! リンゴ買ってきます!」
そんな事言いながら物凄いスピードで病室から出て行く。
とりあえずあまり退屈しない入院生活になりそうだ。
「……」
そして考える。
アイツは昔ドラゴンと戦って死にかけたって言ってた。
そうなれば同じ様に病院に担ぎ込まれたのだと思うけれど……その時俺にとってのアリサの様に、お見舞いに来てくれる人とかはいたのだろうか?
……おそらくいなかったのだろう。
いなかったから、今の人に飢えているアリサがいる。
そう考えるとやっぱり俺は幸せなんだと思う。
そして……アイツにも幸せになってほしいって思うんだ。
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