ただキミを幸せにする為の物語 SSランクの幸運スキルを持つ俺は、パーティーを追放されたのでSSランクの不幸少女と最強のパーティーを組みます

山外大河

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二章 ごく当たり前の日常を掴む為に

11 刹那の攻防

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 俺達が接近してくるのに気付いたのか、リーナは助けが来たと思ったのか、険しい表情から一点、希望に満ち溢れた様な明るい表情を浮かべる。
 だがそれで気が抜けたのかもしれない。そもそも体力的に限界だったのかもしれない。
 その魔獣から逃げられる程の速度を保ったまま、思いっきり躓いた。

「あぶねえ!」

 俺がそう叫んだ所で何かが変わる事は無く、リーナはそのまま凄い勢いで地面に転がる。
 無事受け身を取れたのかどうかは良く分からない。その転倒が軽い怪我で済んだのか重症を負ったのかは分からない。
 だけどどちらにしてもそれでリーナの動き止まった。

 だとすればもう確実に魔獣に追い付かれる。

 だけどそれよりも早く……アリサのナイフが到達した。
 投擲されたのは二本のナイフ。その二本がやや先行していた二体に突き刺さり、動きを止める。
 そして三匹目が到達する前に、俺よりも先行していたアリサはリーナの元へと辿り着き、抱きかかえて魔獣の上に、爪による攻撃を躱すように跳びあがった。

「クルージさん!」

「ああ!」

 そして先程までリーナがいた地点に。魔獣の前に、僅かに遅れて俺が辿り着いた。
 そしてリーナへの攻撃をアリサに躱させられた魔獣に対し、鞘から刀を抜き一閃。

 そして間髪空けずに踏み込む。

 狙いはアリサが動きを止め、今まさに動きだそうとしていた二体の魔獣。
 風を刀に纏わせ、魔獣の攻撃を躱しながら二体同時に切り抜ける。

 俺に傷は無い。
 そして魔獣を切り伏せた手応えは確かにあった。

 そして背後から魔獣の呻き声が聞こえる。
 振り向くが起き上がってくる事は無い。三体とも完全に絶命している。

「……よし」

 あの時俺がどうしようもない程大怪我を負ったのは、あくまであれだけの数を纏めて相手にしたからだ。
 三体位ならどうにかなる。ならないと話にならねえ。

 俺は一拍空けてから刀を鞘に戻す。
 発見から討伐まで一瞬の出来事だったが無事俺達の勝利だ。

 助けるべき対象も無事で。

 ……って無事なのか本当に。

「アリサ! その子大丈夫か?」

「とりあえず意識はあります!」

 アリサのそんな返答を聞きながら、アリサ達の元へと駆け寄る。
 するとアリサに静かに地面に下ろされたリーナは俺達に向けて力無い声で言う。

「う、受け身は取れたんで、大丈夫っす」

 本人がそう言っているのだから、その辺はうまくいったのだろう。

「……でも軽く怪我してますね。とりあえず治療しておきましょう」

「すんません助かるっす……じゃない! そんな事よりマジで助かったっす! 助けていただきありがとうございました!」

 そう言って物凄い勢いで土下座にフォームチェンジする。

「あ、あの、土下座とか別にいいから」

「あ、頭上げてください」

「いや、その、本当にありがとうございました!」

「……」

「……」

「……なんかどこかで見覚えがある光景ですね」

「お前だよお前」

 まあとにかく、アリサの時の様にリーナが頭を上げるまではそれなりに時間がかかった。
 もっとも此処は街中では無いので、何かあっても誰かに見られる事は無い。それがある意味救いではあった。あの状況無茶苦茶面倒だもんね。




 そしてその後、転倒して怪我をしたリーナの応急処置を施しながら会話を交わす。

「それであの……お二人は一体……こんな所に来る様なランクの冒険者に見えないんすけど」

 不思議そうにリーナは言う。
 確かにそれはその通りだろう。この場所に来る冒険者は基本的にソロか駆け出しの奴が大半を占めるだろうから。
 そんなリーナに俺は言う。

「今お前が襲われてた通り、どういう訳か今この辺りに魔獣が出現してるみたいでな。俺達はギルドから依頼されてお前を助けに来たんだよ」

「へ? 私を助けにっすか?」

「はい、そうです。リーナさんが駆け出しの冒険者との事なので危ないって判断したみたいで」

「あーそういう事だったんすか」

 リーナはそう言った後、胸を撫で下ろして言う。

「いや、あの……ほんと、助けにきてくれてありがとうございます。魔獣なんて出てくると思わないっすから、出て来た時マジでヤベエって思ったんすよ。あ、これ死んだなーって。お二人が来てなかったら私今頃魔獣のエサっすよ。ほんと怖かったんすよぉ」

 あーうん。まあ本当に怖かったんだろうなってのは伝わってくるよ。
 そして俺達に本気で感謝してるのも伝わってくる。
 伝わってくるけど。

「それにしてもお二人ともマジでパネエっすね! マジでかっこよかったっす! よろしければお名前教えてもらってもいいっすか?」

「ああ、俺はクルージ」

「ボクはアリサです」

 多分自己紹介しながらアリサも同じ事考えてんじゃないかな。

 ……喋り方のクセ強い!
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