23 / 228
二章 ごく当たり前の日常を掴む為に
11 刹那の攻防
しおりを挟む
俺達が接近してくるのに気付いたのか、リーナは助けが来たと思ったのか、険しい表情から一点、希望に満ち溢れた様な明るい表情を浮かべる。
だがそれで気が抜けたのかもしれない。そもそも体力的に限界だったのかもしれない。
その魔獣から逃げられる程の速度を保ったまま、思いっきり躓いた。
「あぶねえ!」
俺がそう叫んだ所で何かが変わる事は無く、リーナはそのまま凄い勢いで地面に転がる。
無事受け身を取れたのかどうかは良く分からない。その転倒が軽い怪我で済んだのか重症を負ったのかは分からない。
だけどどちらにしてもそれでリーナの動き止まった。
だとすればもう確実に魔獣に追い付かれる。
だけどそれよりも早く……アリサのナイフが到達した。
投擲されたのは二本のナイフ。その二本がやや先行していた二体に突き刺さり、動きを止める。
そして三匹目が到達する前に、俺よりも先行していたアリサはリーナの元へと辿り着き、抱きかかえて魔獣の上に、爪による攻撃を躱すように跳びあがった。
「クルージさん!」
「ああ!」
そして先程までリーナがいた地点に。魔獣の前に、僅かに遅れて俺が辿り着いた。
そしてリーナへの攻撃をアリサに躱させられた魔獣に対し、鞘から刀を抜き一閃。
そして間髪空けずに踏み込む。
狙いはアリサが動きを止め、今まさに動きだそうとしていた二体の魔獣。
風を刀に纏わせ、魔獣の攻撃を躱しながら二体同時に切り抜ける。
俺に傷は無い。
そして魔獣を切り伏せた手応えは確かにあった。
そして背後から魔獣の呻き声が聞こえる。
振り向くが起き上がってくる事は無い。三体とも完全に絶命している。
「……よし」
あの時俺がどうしようもない程大怪我を負ったのは、あくまであれだけの数を纏めて相手にしたからだ。
三体位ならどうにかなる。ならないと話にならねえ。
俺は一拍空けてから刀を鞘に戻す。
発見から討伐まで一瞬の出来事だったが無事俺達の勝利だ。
助けるべき対象も無事で。
……って無事なのか本当に。
「アリサ! その子大丈夫か?」
「とりあえず意識はあります!」
アリサのそんな返答を聞きながら、アリサ達の元へと駆け寄る。
するとアリサに静かに地面に下ろされたリーナは俺達に向けて力無い声で言う。
「う、受け身は取れたんで、大丈夫っす」
本人がそう言っているのだから、その辺はうまくいったのだろう。
「……でも軽く怪我してますね。とりあえず治療しておきましょう」
「すんません助かるっす……じゃない! そんな事よりマジで助かったっす! 助けていただきありがとうございました!」
そう言って物凄い勢いで土下座にフォームチェンジする。
「あ、あの、土下座とか別にいいから」
「あ、頭上げてください」
「いや、その、本当にありがとうございました!」
「……」
「……」
「……なんかどこかで見覚えがある光景ですね」
「お前だよお前」
まあとにかく、アリサの時の様にリーナが頭を上げるまではそれなりに時間がかかった。
もっとも此処は街中では無いので、何かあっても誰かに見られる事は無い。それがある意味救いではあった。あの状況無茶苦茶面倒だもんね。
そしてその後、転倒して怪我をしたリーナの応急処置を施しながら会話を交わす。
「それであの……お二人は一体……こんな所に来る様なランクの冒険者に見えないんすけど」
不思議そうにリーナは言う。
確かにそれはその通りだろう。この場所に来る冒険者は基本的にソロか駆け出しの奴が大半を占めるだろうから。
そんなリーナに俺は言う。
「今お前が襲われてた通り、どういう訳か今この辺りに魔獣が出現してるみたいでな。俺達はギルドから依頼されてお前を助けに来たんだよ」
「へ? 私を助けにっすか?」
「はい、そうです。リーナさんが駆け出しの冒険者との事なので危ないって判断したみたいで」
「あーそういう事だったんすか」
リーナはそう言った後、胸を撫で下ろして言う。
「いや、あの……ほんと、助けにきてくれてありがとうございます。魔獣なんて出てくると思わないっすから、出て来た時マジでヤベエって思ったんすよ。あ、これ死んだなーって。お二人が来てなかったら私今頃魔獣のエサっすよ。ほんと怖かったんすよぉ」
あーうん。まあ本当に怖かったんだろうなってのは伝わってくるよ。
そして俺達に本気で感謝してるのも伝わってくる。
伝わってくるけど。
「それにしてもお二人ともマジでパネエっすね! マジでかっこよかったっす! よろしければお名前教えてもらってもいいっすか?」
「ああ、俺はクルージ」
「ボクはアリサです」
多分自己紹介しながらアリサも同じ事考えてんじゃないかな。
……喋り方のクセ強い!
だがそれで気が抜けたのかもしれない。そもそも体力的に限界だったのかもしれない。
その魔獣から逃げられる程の速度を保ったまま、思いっきり躓いた。
「あぶねえ!」
俺がそう叫んだ所で何かが変わる事は無く、リーナはそのまま凄い勢いで地面に転がる。
無事受け身を取れたのかどうかは良く分からない。その転倒が軽い怪我で済んだのか重症を負ったのかは分からない。
だけどどちらにしてもそれでリーナの動き止まった。
だとすればもう確実に魔獣に追い付かれる。
だけどそれよりも早く……アリサのナイフが到達した。
投擲されたのは二本のナイフ。その二本がやや先行していた二体に突き刺さり、動きを止める。
そして三匹目が到達する前に、俺よりも先行していたアリサはリーナの元へと辿り着き、抱きかかえて魔獣の上に、爪による攻撃を躱すように跳びあがった。
「クルージさん!」
「ああ!」
そして先程までリーナがいた地点に。魔獣の前に、僅かに遅れて俺が辿り着いた。
そしてリーナへの攻撃をアリサに躱させられた魔獣に対し、鞘から刀を抜き一閃。
そして間髪空けずに踏み込む。
狙いはアリサが動きを止め、今まさに動きだそうとしていた二体の魔獣。
風を刀に纏わせ、魔獣の攻撃を躱しながら二体同時に切り抜ける。
俺に傷は無い。
そして魔獣を切り伏せた手応えは確かにあった。
そして背後から魔獣の呻き声が聞こえる。
振り向くが起き上がってくる事は無い。三体とも完全に絶命している。
「……よし」
あの時俺がどうしようもない程大怪我を負ったのは、あくまであれだけの数を纏めて相手にしたからだ。
三体位ならどうにかなる。ならないと話にならねえ。
俺は一拍空けてから刀を鞘に戻す。
発見から討伐まで一瞬の出来事だったが無事俺達の勝利だ。
助けるべき対象も無事で。
……って無事なのか本当に。
「アリサ! その子大丈夫か?」
「とりあえず意識はあります!」
アリサのそんな返答を聞きながら、アリサ達の元へと駆け寄る。
するとアリサに静かに地面に下ろされたリーナは俺達に向けて力無い声で言う。
「う、受け身は取れたんで、大丈夫っす」
本人がそう言っているのだから、その辺はうまくいったのだろう。
「……でも軽く怪我してますね。とりあえず治療しておきましょう」
「すんません助かるっす……じゃない! そんな事よりマジで助かったっす! 助けていただきありがとうございました!」
そう言って物凄い勢いで土下座にフォームチェンジする。
「あ、あの、土下座とか別にいいから」
「あ、頭上げてください」
「いや、その、本当にありがとうございました!」
「……」
「……」
「……なんかどこかで見覚えがある光景ですね」
「お前だよお前」
まあとにかく、アリサの時の様にリーナが頭を上げるまではそれなりに時間がかかった。
もっとも此処は街中では無いので、何かあっても誰かに見られる事は無い。それがある意味救いではあった。あの状況無茶苦茶面倒だもんね。
そしてその後、転倒して怪我をしたリーナの応急処置を施しながら会話を交わす。
「それであの……お二人は一体……こんな所に来る様なランクの冒険者に見えないんすけど」
不思議そうにリーナは言う。
確かにそれはその通りだろう。この場所に来る冒険者は基本的にソロか駆け出しの奴が大半を占めるだろうから。
そんなリーナに俺は言う。
「今お前が襲われてた通り、どういう訳か今この辺りに魔獣が出現してるみたいでな。俺達はギルドから依頼されてお前を助けに来たんだよ」
「へ? 私を助けにっすか?」
「はい、そうです。リーナさんが駆け出しの冒険者との事なので危ないって判断したみたいで」
「あーそういう事だったんすか」
リーナはそう言った後、胸を撫で下ろして言う。
「いや、あの……ほんと、助けにきてくれてありがとうございます。魔獣なんて出てくると思わないっすから、出て来た時マジでヤベエって思ったんすよ。あ、これ死んだなーって。お二人が来てなかったら私今頃魔獣のエサっすよ。ほんと怖かったんすよぉ」
あーうん。まあ本当に怖かったんだろうなってのは伝わってくるよ。
そして俺達に本気で感謝してるのも伝わってくる。
伝わってくるけど。
「それにしてもお二人ともマジでパネエっすね! マジでかっこよかったっす! よろしければお名前教えてもらってもいいっすか?」
「ああ、俺はクルージ」
「ボクはアリサです」
多分自己紹介しながらアリサも同じ事考えてんじゃないかな。
……喋り方のクセ強い!
0
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。
《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。
無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。
やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる