ただキミを幸せにする為の物語 SSランクの幸運スキルを持つ俺は、パーティーを追放されたのでSSランクの不幸少女と最強のパーティーを組みます

山外大河

文字の大きさ
57 / 228
三章 人間という生き物の本質

4 受けるか否か 上

しおりを挟む
 そんな騒がしい一悶着があった後、俺達は改めてその依頼書と向き合う事にした。

「それで、どうしますかね」

 アリサはそう言った後、一拍空けてから俺に問いかけてくる。

「クルージさんは、どうしたいですか?」

 ……どうしたいか。
 その答えを出すのは難しい事ではない。

「俺にどうにかできるなら、どうにかしたいって思うよ」

 少しだけ躊躇いはあったけれど、それでも俺はそう思う。

「……え? 先輩それ本気で言ってるんすか?」

 そして俺の言葉に違和感を覚えたのはリーナだった。

「……一応本気のつもりだよ」

「え、でも、だって……先輩、実質的にあの人達に追い出されてるんすよ」

「……そうだな」

「私みたいな部外者に、あることないこと言ってんすよ?」

「……まあ、それは流石にキツいけど、それも分かってるよ」

 分かった上でだ。

「……それでも俺はあの人達を助けたいって思うんだ」

 理由としては簡単だ。
 昨日の事もあるしそれに……結局起きている事全ては勘違いから来ている物だから。
 ……その、筈だから。
 だとしたら……俺の中であの人達に手を貸す事を躊躇っても、手を貸さない理由にはならない。
 だってそうだろ。
 そんな勘違いや、洒落にならない不運が連続して起きたような状況下ではきっとまともな判断なんてできる筈がないから。
 ……そんな中で出てきた答えが人間の本質である筈がないから。

 そうだと、思いたかったから。 

「そうっすか」

 そして俺がそんな理由を告げる前に、リーナはどこか納得したような、諦めた様な。そんな声音でそう言った。

「まあ先輩がそうしたいっていうのなら、それは先輩には先輩なりの考えがあるんすよね。話を中途半端に聞き齧っただけの私が何か言える様な話じゃないっすかねこれ」

 そしてそう言ったリーナはだったら、とその依頼書を掌で軽くバンと叩く。

「この依頼、私達で受けますか」

「ああ……っていやいや!? ちょっと待てちょっと待て」

 実際にできるならそうしたかった俺はリーナの言葉に思わず一度は頷いてしまうが、それでも慌てて訂正に掛かる。

「ん? 何か不都合あるっすか?」

「あるだろ見てみろよこれ」

 と、依頼書をある一文を指差す。

「お前これ、Bランクの依頼だぞ」

 簡単な依頼がないのならば、俺達が受けることのできる依頼の中で最も難易度が低い物を選ぶべきである。
 それがCランクの依頼。Bランクのこの依頼を受けるのは得策ではないんだ。
 だから素直にこのパーティー構成で最も適したCランクの依頼も依頼を受付で斡旋してもらう。これが多分正解なんだ。

 だけどリーナは言う。

「でも先輩、それを受けたいんすよね」

「……ッ」

「だったらそれは受けないと駄目っすよ。具体的に何が先輩をそこまで駆り立てるのかは知らないっす。だけど……お金の為じゃ無くてやらないといけない事だって思ったなら、やらないと絶対後悔するっす」

「……」

「大丈夫っすよ。何せ私はSランクの逃避スキルを持ってるんすから、CでもBでもどんと来いっっすよ」

 そう言ってリーナは胸をトンと叩く。
 そんなリーナを見ながら……俺は言う。

「いいのか? 本当に」

「しつこいっすね。私が良いって言ったら私にとってはいいんすよ」

「ボクもそれでいいと思います」

 アリサもリーナの意見に乗る。

「クルージさんが受けたくて、リーナさんがそれでもいいっていうんでしたら受けたって良いんじゃないですか。大丈夫です。リーナさんは私がフォローしますし」

 それに、とアリサは言う。

「……多分クルージさんは、これ受けないと駄目ですよ」

 まるで昨日の事を思いだしながらというように、アリサはそう言った。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...