ただキミを幸せにする為の物語 SSランクの幸運スキルを持つ俺は、パーティーを追放されたのでSSランクの不幸少女と最強のパーティーを組みます

山外大河

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三章 人間という生き物の本質

18 誤解を解く為のピース

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「……しかしSSランクの不運スキル……か」

 グレンは複雑な表情でそう言う。

「どうした?」

「いや、まあ考えたって答えが出るような話じゃねえんだけどよ……なんでマイナススキルみてえな意味の分からねえスキル持って生まれてくる人間がいるのかなと思ってさ」

「……まあ確かにな」

 改めて言われて考える。
 ……本当にどうしてそんなスキルが存在するのだろうか?
 スキルに関しては本当に分からない事だらけなので全てにおいて憶測でしか語れないのだけれど、それに関しては本当に理不尽以外の何物でもないと思う。

 スキルは両親からの遺伝などで伝わってくる物ではない。だから常に突然変異の様に得る力だ。
 だけどだからと言って、そこまで全てが変わってしまう程、人間の遺伝子という奴はおかしな作りをしているのだろうか。
 そうでないのだとすれば……まるで誰かから与えられる様な、そんな物なのだろうか。

 だとしたら、なんでそんな訳の分からない最悪な力を押し付けられなければならなかったのか。
 そして同じような事をグレンは考えていたらしい。

「なあクルージ」

 グレンは言う。

「お前、もしこの世界に本当に神様なんてのが居たとして、ソイツが適当にスキルを人に与えていたりでもしてたら、お前どうする」

「顔面ぶん殴りに行くよ」

「SSランクの幸運スキル貰っといてバチ当たりな奴だな」

「確かに。そう考えると俺にはぶん殴る資格ねえかもな。やったらそれはそれで理不尽かもしれねえ」

「でも殴るだろ」

「殴るな。向こうが理不尽な事やりまくってんだから、こっちも理不尽にぶん殴ってやるよ」

 とはいえそれはたとえ話。
 実際神様なんてのがいるかどうかは分からなくて。いたとしてそんな理不尽を振り撒いている様な奴かは分からなくて。
 だけどいたとすれば、ろくでもない奴なんじゃないかって思うよ。
 だってこの世界には、どうにかしなければならない事が山の様にあるから。
 せめてマイナススキルなんてどうしようもない物を持っている人間位は、どうにかして貰わなければおかしいのだから。
 でなければ、いても祀る価値も無い。

「……神樹の森のご神体、伐採するか」

「いいんじゃね別に」

「いや本気にするなよ」

 でも実際神様が本当にいて、それがどうしようもない奴なのだとすれば。
 その位はしてもいいんじゃないかって。そう思うよ。
 そしてそんなやり取りをしている中で、俺はふと言っておかなければならない事を言っておくのを忘れた事を思いだしてグレンに言う。

「あ、そうだグレン。村に着いてからの事なんだけどさ……絶対にアリサの不幸運スキルの事は口にするなよ」

 これだけは絶対だ。
 多分あの人達はそういう運気絡みの事に、相当神経質になっている。
 そんな中に不運スキルなんて悲惨なマイナススキルを持った人間を連れて行くのだから、それがバレれば碌でもない事になるのは火を見るより明らかだ。
 だからそれだけは禁句だと、グレンに釘を刺した。
 ……筈だった。

「……そうだ」

 だけど刺した釘で何らかの理論が組み上がったかの様に、グレンは悪い笑みを浮かべる。

「おいクルージ。朗報だ」

「なんだよ」

「アイツら全員の誤解を解いて、頭下げさせる方法を見つけた」

「……は?」

 イマイチ何が言いたいのか分からなくて首を傾げる俺に対してグレンは言う。

「……アリサのスキルとその詳細を村の連中に伝える。それで終わりだ」

「ば、ちょ、おいお前何言ってんだよ!」

 流石に反論する。

「俺今それだけは止めろっつったよな!?」

「だけど冗談抜きで碌でもない能力だとしても、お前が相殺できてんだろ? だったらなんの問題も無い。被害だって及ばない」

 そしてグレンは言う。

「勿論うまい説明が必要だが……不運スキルの事をバラして得られるのは、お前の幸運スキルの生き証人というアドバンテージ。誤解を解く為のピースだよ」
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