ただキミを幸せにする為の物語 SSランクの幸運スキルを持つ俺は、パーティーを追放されたのでSSランクの不幸少女と最強のパーティーを組みます

山外大河

文字の大きさ
121 / 228
三章 人間という生き物の本質

ex あの時あの場所で起きた事

しおりを挟む
「結構おまけしてくれたっすね」

「お前やアリサの好感度は別に悪くねえ。この村に起きたイレギュラーにも程があるような危機を退けた恩人だ。そのお前が顔見せたってなると、別におかしい事はねえだろ」

「なるほど……まあでも、おまけして貰っても全然ありがたみを感じないというか、変わんないんすけどね、不快感は」

「それでコロっと掌返してたら色々とヤバいだろ……いいんだよ、それで」

 買い物を終えたグレンとリーナはそんなやり取りを交わしながら帰路に就く。
 買い物の間、クルージに向けられたような不快感しか感じない視線は一切感じる事は殆どなく、精々がグレンというクルージを擁護する異端者染みた存在に対する僅かな不快感のような視線が少しだけ向けられた位。

(……まあ仕方ねえよな)

 今の現状についてグレンは心中でそう考える。
 明確な殺意までが向けられている人間を、唯一表だって擁護している。まず間違いなく好印象は向けられない。
 この位の視線は向けられて当然の物だ。
 だけどそんな視線の事はどうでもいい。向けられるのはクルージとは比較にならない物ではあるし、いずれ自分も村から出る身だし、そして何より今回の件で本当にどうしようもない連中だと確信して言えるようになった今、そんな連中からどういう評価を得てようと気にならない。
 だからそんなのは無視しながら、話題を少しだけ変えた。

「ところでリーナ。聞いておきたかった事があるんだが」

「なんすか?」

 軽い感じにそう聞き返してくるリーナに、今までそれどころじゃなくてスルーして来た疑問をぶつける。

「お前が一方的に黒い霧の化物にやられてるクルージを見付けた時の事なんだけどよ……お前、一体なにやった?」

「何って……」

「さっき村の連中から聞いた話じゃ、突然お前が猛スピードであの化物に突っ込んで、ぶん殴って貫いたって話だったんだが……お前、聞いてた話じゃそんな荒々しい近接戦闘できる感じじゃなかっただろ」

 それが大きな疑問だった。
 リーナという少女は異常な程に何でもできる。
 だがそれでも、リーナは異常な速度で成長している駆け出しの魔術師で、それは村に辿り着くまでに何度かあった戦闘で分かっていて。
 魔術の出力的に自身の身体能力を大きく上げるような事ができない以上、冒険者や兵士という戦闘に携わる者特有の常人離れした身体能力を今現在持ち合わせていない以上、起きた事に関しては不可解でしか無いのだ。
 逃避スキルではない。ああいう状況に適したスキルを持っていなければ。
 そしてグレンの問いにリーナは少し気まずそうに言う。

「いや、あの……答えたいのは山々なんすけど、実を言うと私自身全然分かんないんすよね、あの時の事は」

「分からない?」

「なんというか……先輩が殺されるかもしれないって。それは嫌だって。そう思ったら……気が付いた時にはそういう事になってたっす。
むしろ私が聞きたいんすよね。グレンさんは何でだと思うっすか?」

「……」

「グレンさん?」

「あーいや、わかんねえ。わかんねえから聞いてるわけだし」

「そうっすよねー。まあ今回は先輩助けられたからそれでよしって事で」

 そう言ってリーナは笑うが、とても笑える話では無かった。

(それは嫌だ……か)

 確定ではない。仮説でしかない。だけどそれでもグレンの中で答えが出た。
 その時何があったのか。
 そして……もう一つ。
 リーナという少女に対して抱いていた疑問についての答えが。
 だけどそれらを口にするような真似はしない。

(……俺が踏み込んでいい話じゃねえな)

 自分はあくまで依頼主に過ぎない。こういうデリケートな問題に直接踏み込んでいいような立場ではない。
 やるべきなのは。やっていいのはもっと近しい人間だけ。

(こういうのはクルージ達じゃねえと駄目だ)

 だから何も気付かなかった振りをしていればいい。
 少なくとも今この場では。

(どうするかはアイツら次第だ)

 自分からこの話を聞いてどうするのか。そこに委ねる。
 自分に出来ることは。やるべきなのは。きっとそこまでだ。

 今の立場のままなら、そこまでだ。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。 死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった! 呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。 「もう手遅れだ」 これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

処理中です...