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三章 人間という生き物の本質
59 触れてはいけない事について
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グレンの家に帰ってきた後、まずやる事になったのは夕飯の準備だ。
俺がいる時点でこの村で外食という選択肢は無い。なので自炊の必要がある。
「じゃあ行ってくるわ」
「留守番よろしくっす!」
俺とアリサを残してグレンとリーナが買い出しに向かう。グレンが道案内と荷物持ちでリーナが食材選びという訳だ。
そんな訳でアリサと二人きりになった。
「リーナさん、夕飯何作ってくれるんですかね?」
「まあ何が出てきても絶対美味いって保証があるからな……正直すげえ楽しみ」
この村に来てから数少ない心踊る状況である。
「そうですね。昨日のシチューも美味しかったですから」
「いや、ほんとなんというかこう……美味すぎて毎日食べたい感があるわ」
自然とそんな言葉を呟くとアリサは何故か少しムっとした表情を浮かべる。
「ぼ、ボクもすぐに追い付きますから! 完璧にマスターしてみせます!」
「……アリサ」
俺は心の底から沸き上がって来た言葉を伝える。
「……怪我には、気を付けろよ」
「な、なんか思ってた反応と違う……」
いや、これ以外の言葉無くないですかね?
もうね、心配で心配で仕方がないんですよ。
だけどまあ……少し考えれば、そうじゃないなってのは分かって来た。
「頑張れ、アリサ。結構楽しみにしてる」
今はとにかく危なっかしくて危機感しか覚えないけど、アリサが料理できるようになって作ってくれるって言うならそれは普通に嬉しい事で。
そう考えればきっと、本人に意欲があるなら応援してやる方が良いのかもしれない。心配で仕方がないけど。
「はい!」
そう言ってアリサは笑う。
……文字通り無事に成就してくれればいいけど。本当に無事にな。
「とりあえず王都に戻ったらリーナさんに教えて貰える約束はしましたし……頑張りますよ!」
「おう」
……ほんと、リーナも頑張ってな。うん、ほんと……頑張れよ。
と、そこまで話した所でだ。
「……で、そのリーナさんの事なんですけど。今いないし今の内に」
そう言ったアリサは表情から笑みを消して、真剣な眼差しで言う。
「結局あれからこの話をするタイミングがありませんでしたね……馬車での事、覚えてます?」
「……ああ」
それを聞いてアリサが何を話したいのかを理解した。
馬車での事。十中八九リーナの出身地などを聞いた時の話だろう。
あの時アリサは俺に対して、露骨にあの時の事に関しての話し合いを求める視線を向けていた。
そのタイミングが今やっと来たという訳だ。
「アイツさ、絶対自分の過去には触れられたくないような、そんな感じだったよな?」
「はい。クルージさんがなんで王都に来たのかって聞いた時の空気……凄かったですからね」
「……ああ。流石にそれ以上は聞けなかったよ」
踏み止まざるを得なかった。それだけあの瞬間のリーナは重かった。
「……一応ですよ。あそこで止まってくれたクルージさんなら言わなくても分かってると思うんですけどね…
…これから基本的にはリーナさんにああいう事を訪ねるのは止めておきましょう。ボクが言いたかったのはそういう事です」
「……ああ、分かってるよ。聞かない。あれ以上聞ける訳がない……まあ、アイツから話すような事がなければ本人に直接無理な詮索をするような真似はしない」
「はい、そうしましょう……色々と気になるのは間違いないですけど」
「でもまあできる限り気にしないで行こう。アイツは俺達の友達で仲間。アイツがどんな奴かって言われればそれも間違いじゃないんだからさ」
「……ですね。じゃあお互い無理に問い詰める意思がないって確認が取れた所で、この話はお終いって事で」
そして俺達のリーナに対する接し方の確認は終わる。
謎は謎のままで。触れられたくないならそれでいい。
俺達二人の結論はそういう風に纏まった。
俺がいる時点でこの村で外食という選択肢は無い。なので自炊の必要がある。
「じゃあ行ってくるわ」
「留守番よろしくっす!」
俺とアリサを残してグレンとリーナが買い出しに向かう。グレンが道案内と荷物持ちでリーナが食材選びという訳だ。
そんな訳でアリサと二人きりになった。
「リーナさん、夕飯何作ってくれるんですかね?」
「まあ何が出てきても絶対美味いって保証があるからな……正直すげえ楽しみ」
この村に来てから数少ない心踊る状況である。
「そうですね。昨日のシチューも美味しかったですから」
「いや、ほんとなんというかこう……美味すぎて毎日食べたい感があるわ」
自然とそんな言葉を呟くとアリサは何故か少しムっとした表情を浮かべる。
「ぼ、ボクもすぐに追い付きますから! 完璧にマスターしてみせます!」
「……アリサ」
俺は心の底から沸き上がって来た言葉を伝える。
「……怪我には、気を付けろよ」
「な、なんか思ってた反応と違う……」
いや、これ以外の言葉無くないですかね?
もうね、心配で心配で仕方がないんですよ。
だけどまあ……少し考えれば、そうじゃないなってのは分かって来た。
「頑張れ、アリサ。結構楽しみにしてる」
今はとにかく危なっかしくて危機感しか覚えないけど、アリサが料理できるようになって作ってくれるって言うならそれは普通に嬉しい事で。
そう考えればきっと、本人に意欲があるなら応援してやる方が良いのかもしれない。心配で仕方がないけど。
「はい!」
そう言ってアリサは笑う。
……文字通り無事に成就してくれればいいけど。本当に無事にな。
「とりあえず王都に戻ったらリーナさんに教えて貰える約束はしましたし……頑張りますよ!」
「おう」
……ほんと、リーナも頑張ってな。うん、ほんと……頑張れよ。
と、そこまで話した所でだ。
「……で、そのリーナさんの事なんですけど。今いないし今の内に」
そう言ったアリサは表情から笑みを消して、真剣な眼差しで言う。
「結局あれからこの話をするタイミングがありませんでしたね……馬車での事、覚えてます?」
「……ああ」
それを聞いてアリサが何を話したいのかを理解した。
馬車での事。十中八九リーナの出身地などを聞いた時の話だろう。
あの時アリサは俺に対して、露骨にあの時の事に関しての話し合いを求める視線を向けていた。
そのタイミングが今やっと来たという訳だ。
「アイツさ、絶対自分の過去には触れられたくないような、そんな感じだったよな?」
「はい。クルージさんがなんで王都に来たのかって聞いた時の空気……凄かったですからね」
「……ああ。流石にそれ以上は聞けなかったよ」
踏み止まざるを得なかった。それだけあの瞬間のリーナは重かった。
「……一応ですよ。あそこで止まってくれたクルージさんなら言わなくても分かってると思うんですけどね…
…これから基本的にはリーナさんにああいう事を訪ねるのは止めておきましょう。ボクが言いたかったのはそういう事です」
「……ああ、分かってるよ。聞かない。あれ以上聞ける訳がない……まあ、アイツから話すような事がなければ本人に直接無理な詮索をするような真似はしない」
「はい、そうしましょう……色々と気になるのは間違いないですけど」
「でもまあできる限り気にしないで行こう。アイツは俺達の友達で仲間。アイツがどんな奴かって言われればそれも間違いじゃないんだからさ」
「……ですね。じゃあお互い無理に問い詰める意思がないって確認が取れた所で、この話はお終いって事で」
そして俺達のリーナに対する接し方の確認は終わる。
謎は謎のままで。触れられたくないならそれでいい。
俺達二人の結論はそういう風に纏まった。
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