ただキミを幸せにする為の物語 SSランクの幸運スキルを持つ俺は、パーティーを追放されたのでSSランクの不幸少女と最強のパーティーを組みます

山外大河

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三章 人間という生き物の本質

70 守れ尊厳を

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「まずその……えーっとだな……」

「ぐ、グレン……?」

 異議を唱えたグレンだが、なんか様子がおかしい。
 まて……まさかコイツ、反論する材料何も考えないで異議を唱えたのか?
 それにアレだ。異議は間違いなくある。あるだろうけど……確かにリーナの言い分的を射てるからな。
 射てるから思いつかないんだ。これは洞察力と思考能力の高いグレンでも厳しいか?

「お、俺の方が年上だし」

 厳しいなぁコレ……か、勝ち筋見えねぇ……。

「それ今関係ないっすよね」

 無いんだよなぁ普通に。

「だ、だけど多分、戦闘経験の長さは俺の方が上……そうだ、俺の方が長い! 一応副業で猟師もやってっからモンスターと戦うような事も多々ある。そういうのと戦って生計立ててる。じゃあ実質的に殆ど冒険者と変わらねえよなぁ!?」

 いや、それ苦し紛れ過ぎないかグレン……だってほら、お前それ猟師じゃん。
 実質的に寸分狂いなく猟師じゃん。

「た、確かに……痛い所を突くっすね……」

 嘘だろ!? 痛くも痒くもねえだろ今の。
 ……だがこれはチャンスだ。リーナがそう思ったならリーナの中ではそれが答えだ。
 このまま押しきれ。押しきれグレンンンンンンンンンッ!

「あの、ボクもうジャンケンで決めたらいいんじゃないかなって思うんですけど」

 アリサァァァァァァァァッ!?
 なんかこのタイミングで議論もくそもねえとんでもない案ぶっこんできた!

「「それだ!」」

 それだじゃねえよ! お前今若干優勢な感じなんだからそこに異議唱えろや!

「ちょ、グレングレン」

 流石にグレンに耳打ちする。

「お前あのままうまく行けば押しきれたじゃん。なんでジャンケンにすんだよ」

「いや、あのままじゃ苦しかった」

 グレンは苦し気な表情で言う。

「分かってる。正論なのは向こうで俺の言ってる事は全て苦し紛れ。例えこの場を押しきれたとしても、絶対再燃する。そして再燃したら多分次は打つ手がねえ。何しろ間違いなく正論に異議唱えている訳だからな俺」

 だが、とグレンは言う。

「もしこの場でジャンケンで白黒付けられたら、どんな理由があろうとその勝敗だけは覆らねえ。これでこの不毛な戦いに後腐れなく終止符を打てる」

「でもお前、だからって運否天賦だぞこのやり方」

「馬鹿。ジャンケンは純粋な運否天賦じゃねえ。心理戦だぞアレは。やりようによっては勝率を二分の一から大幅に引き上げられる」

「大幅って……」

 なんか良く分からねえけど、グレンが言うならそんな気がしてきた。
 だけど……だけど頑張れ。
 守る為に……尊厳を……!

「なんかよく分かんないっすけど、作戦会議は終わったっすか? さっさと白黒付けるっすよ」

 そう言ってリーナは立ち上がり構えを取る。
 お前凄い楽しそうだな。

「行ってくる」

 そう言ってグレンも立ち上がって構えを取る。
 ……というか二人とも何で立つ必要があんの? そんな今から決闘でもするみたいにさ。
 食事中だぞ行儀わりぃ。座ったままジャンケンポンじゃ駄目なのか?

「これは……なんだか白熱した戦いになりそうですね」

「おーいアリサ。これただのジャンケンだぞ?」

 何はともあれ、空気だけは確かに白熱感あるけども。
 そしてリーナと向かい合ったグレンが静かに言う。

「よしリーナ。俺は最初にパーを出すぞ」

 なんか心理戦っぽい事を。
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