ただキミを幸せにする為の物語 SSランクの幸運スキルを持つ俺は、パーティーを追放されたのでSSランクの不幸少女と最強のパーティーを組みます

山外大河

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四章 冒険者達の休日

10 レッツゴー危険地帯

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「そういやグレン。お前、ギルドの方の手続きって終わらせたのか? なんかこの辺りの話あんまり聞いてねえんだけど」

 病院を後にして、ひとまず目的地も決まらないまま歩き出した所で、ふと気になって聞いてみた。

「ああ、まだやってねえな。ほら、俺も怪我で通院してた訳だし」

「あーなるほど」

 確かにテストとかやった記憶あるし、怪我完治してからじゃねえとやれねえよな。

「そういう事なら、今はもう手続きしに行っても大丈夫なんじゃないっすか?」

「そうだな。それにクルージも退院したし、さっさと終わらせとかねえとな」

「あ、でもグレンさんの手続きが終わっても、まだクルージさんは依頼を受けちゃ駄目ですからね。まだ自宅療養しないといけない期間なんですから」

「分かってるよ」

「特訓とかトレーニングも控えてくださいよ」

「……え、いやー……それはよくね?」

「駄目です」

「……駄目?」

「駄目です」

「……はい」

 駄目かぁ……でもアリサにそこまで言われちゃしかたねえか。
 怪我に関しては一番経験があるだろうし……心配もかけたくないし。
 それにシドさんに話を通してもらったアスカさんとの特訓は双方の都合が合えばいつでもいいらしく、今の所長期の依頼を受ける予定も無いそうだから。
 ……まあ焦らず地道に行こう。
 とりあえずルークから教えてもらった事の反復練習だな。

 しかしアイツ俺よりも若干早く退院してるから、暇してたりしねえかな。まだ色々と教えてもらわねえといけない事あるし。
 ……今度ギルドで会ったら住所聞いて、それからタイミング合うとき菓子折り持って頼みに行こう。良い奴買っていこう高い奴。
 ……ってなるとアスカさんにもそういうの用意した方が良いよな。
 うん、何か用意しよう。

 ……っとまあ俺個人の話は置いておいて。

「……で、どうする? 折角こうして話題に上がった事だし、もう今日の内に済ませておくか? ほら、予定も夜まで無い訳だし」

「そうだな……一応夜まで予定もねえ訳だし、ここらでサクッと終わらせとくか」

「というか今日やって貰わないとアレっすよ。今日の夜の奴がなんかしっくり来なくなるっす」

「そうですよ。今日の夜はクルージさんの退院祝い兼、今のパーティーの結成記念みたいな感じなんですから。ちゃんと冒険者になっておきましょう」

「決まりだな。じゃあ俺達も付き添うし、サクっと良い感じに終わらせてこようぜ」

「おう!」

 そんな訳で、夜以外が何も埋まっていなかった予定が埋まる事に。

「あ、でもそうなってくるとハンマー取ってこねえと」

「どこに置いてあるんだ? 自宅?」

「自宅……って言っても良いのか。いいよな、多分」

「なんか歯切れが悪いですけど、何かありました?」

「いや、実は今工房でそのまま寝泊りしててな」

「え? そうなんすか?」

「いや、こう……なんというか、改めて中見たら最低限度の生活送れんなぁって思ってよ。アパートとか借りるより安上がりだなーって」

「「「……」」」

 グレンの話に三人して黙り込んだ。
 二人共、多分俺と言いたい事は同じだと思う。
 当然工房で寝泊りなんて事がおかしいのかと言われたら、別におかしくは無い。そこにおかしい事など別に無いんだ。
 でもグレンの借りた工房って……アレじゃん。

 事故物件じゃん。

「どうした、三人して黙って」

「「「いや、別に……」」」

「……?」

 グレンは首を傾げる。
 傾げてないで察してくれ。いや、察せないという事は何も起きていないのか?
 だとすればいいんだけれど。

「あ、そうだ。折角ハンマー取りに行かねえと駄目な訳だし、中見学してみるか?」

「あ、うん」

「そ、そうですね……」

「ちょ、ちょっとお邪魔するっす」

 誰一人としてお断りできない。
 だって……そんなの、拒否できないじゃん。
 どうでもいい奴の誘いならともかく、仲間のグレンからの誘いなんだから。

「じゃあ案内するから付いてきてくれ。結構近いからすぐ着くと思うぜ」

 そう言って先導するグレンの後を歩きながら、アリサがグレンに聞こえないような小さな声で俺達に言う。

「……事故物件……最悪お化け屋敷です。心して掛かりましょう」

「ま、まあ夏手前でちょっとシーズン早いっすけど、どんと来い肝試し」

「お前ら結構人の家に辛辣な評価してるけど、全面的に同意だわ……頑張ろうな」

「ん? なんか言ったか?」

「あ、いや、何も」

「なんでもないっす!」

「そうですよ。ハハハ……」

「……? なら良いけど」

 ……なんだろう。
 気を引き締めないと、また病院に逆戻りのような……そんな気がしてきた。

 そんな嫌な予感を胸に抱きながら、俺達はグレンの工房に向けての歩みを進めた。
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