11 / 51
1-1 賢者と薬剤師
ex 誤算 下
しおりを挟む
時刻は僅かに遡る。
(あそこまでボロボロになるまで頑張ってたんだ。うまく行ってくれると良いが……)
仕事を終えた元理学療法士の運び屋マチスは、薬剤師の青年を背負い駈けていくアヤという少女の背を見送りながら心中でそう呟き、それから改めて考える。
(しかし……珍しい組み合わせの二人だったな)
薬剤師と弓使い……ではない。そんな組み合わせならありふれている。
『もしかしたらまた利用する事が有るかもしれないっすけど……その時は今見た事はレインさんには黙って置いて貰えると助かるっすよ』
去り際にそんな事を告げて行った彼女をただの弓使いと形容するのは絶対に違う。
そう考えていると、少し前の光景が脳裏にリフレインしてくる。
あの時、戻ってきた青年の意識は失われていた。
聞いたどころによると原因は身体能力を強化する類いの薬のオーバードーズとの事だ。
曰く意識を失う前に薬の効果を中和する薬は服用してあるらしく、だとすれば……否、例えそうでなくともこの場で自分にできる事は少しでも早く王都に戻る事だけとなる……自分には。
二人を乗せてすぐに飛び立った直後、アヤという弓使いの少女は言った。
「すみません……これからマチスさんのすぐ近くで嫌な事をやる事になるっすけど……すみません。今だけは許して欲しいっす」
「……?」
少女が意味深な発言をしたので後ろに控える二人の方に視線を向けて、思わず目を見開いた。
「アンタそれ……」
「治癒魔術っす……これで少しでも薬の副作用を抑えられれば……」
弓使いの少女は薬剤師の青年に治癒魔術を施していた。
それはまるでかつての自分の商売敵の賢者のように。
「アンタ……賢者だったのか?」
「志した事があるだけの弓使いっすよ。練度も精々三級ってところっすね」
「志しただけって……」
賢者になる事ができるのは才能のあるほんの僅かな人間だけだ。
……治癒魔術を習得できる人間は、本当にほんの僅かな人間だけなのだ。
それができるというだけで……大した実力が無い半端者でも食いっぱぐれる事が無い程に。
それなのに……発動できるところまで身に付けているのに。
「なんでそれを止めて弓使いなんか……」
賢者という職業を持ち上げている訳ではない。
弓使いという存在を卑下している訳でもない。
それでも一般論として賢者を志し最低限の結果を残しておきながらフェードアウトするのは、賢者に良いイメージを抱けていない自分のような旧医療従事者からしても大きな疑問となる。
そしてそんなマチスの問いに、苦笑いを浮かべて彼女は言った。
「実は私のお父さんが外科医なんすよ」
「……外科医」
「ほんと尊敬できる凄い人なんすよ私のお父さんは」
そして一拍空けてから言う。
「それを見て育って……賢者って仕事の事も知って。そしたら思ったんすよね……治癒魔術があればお父さんの仕事をサポートできるんじゃないかって」
「……」
「浅はかっすよね。正直私は医学のいの字も理解できないような馬鹿なんで、色々と頭回って無かった訳っす。誤算でした。大誤算っす。びっくりさせようと黙って勉強していたこの力で、本気でお父さんを助けられると思った。思ってた」
「……」
「お父さん見たいなお医者さんが築き上げてきた医学と、奇跡みたいな力を使う治癒魔術。この二つを組み合わせたら……もっと多くの人が助けられるんじゃないかって思った。だけど思慮が浅かったんすね。最終的に勘当されちゃいまして……それでフェードアウトっす」
「勘当って……」
「マチスさんならお父さんの気持ちも分かるんじゃないっすかね」
「……」
「マチスさんにお子さんが居るのかは分からないっすけど、自分の子供がそんな事言い始めて、実際に治癒魔術まで覚えていたら……嫌っすよね。なんで私は気付かなかったんだろう……そりゃ医学書を全く理解できない馬鹿っすよ私は」
言われて、考えて……分かってしまう。
多分此処まで真っすぐに……もしかしたら現代医学のあるべき姿を体現できていたかもしれない娘を拒絶してしまった父親の心証が。
……追い詰められていたであろう同業者の心証が。
と、そこで気付いた。
あるべき姿。
その志を聞いて、旧医学と治癒魔術が共存共栄するようなやり方があるべき姿だと、賢者にマイナス的な感情を向けている自分ですら思える事実に。
おそらく殆どの人間が到達できていないある種の高みに、目の前の少女が到達していたという事に。
そんな少女に問いかける。
「……ちなみに、そうやって懸命に治療している事をその男に隠す理由はなんだ?」
「そりゃ……自分の父親の考える事も分からない位の馬鹿っすから。レインさんの考える事もきっと読めない」
そして一拍空けてから少女は言う。
「レインさんも賢者の所為で追い込まれている人なのは同じっすから。そんなレインさんに治癒魔術が使えるなんてカミングアウトをするのは怖いっすよ……親しい人に嫌われるのは怖い」
「……そうか」
現状、自分がそんな事は無いと言っても何一つ信憑性を乗せられない。
言葉にそういう感情を乗せられるかどうかも分からない。
……なんとなく、そんな自分が本当にどうしようもない人間に思えてきた。
そしてそれから特に会話も無く、少女の治癒魔術による治療は続けられる。
そんな中で、ふと思い出したように少女は言った。
「あ、マチスさん」
「なんだ?」
「行きの時は言えなかったっすけど……私はマチスさんが偽物だなんて思ってないっすよ。ああ、これはお世辞とかではなく」
「……なんでそう思う?」
思わず感じた疑問をそのまま吐き出すと、少女は言った。
「同じような事を言うお父さんを間近で見てきて、それでも立派だなって私はずっと誇りに思ってたっすから。そんな事だけで偽物なんて事は……絶対に無いんすよ。あってたまるか」
……そんなやり取りを思い返して、マチスは改めて思う。
結局今になっても賢者という存在にあまりいい印象を持っていない。
神の様な奇跡の力を扱うからか横柄な人間も多く、それらを持ち上げ旧医療従事者を下げる一般世論も含め、とにかく良い印象なんて持てる筈が無いのだ。
……少なくない賢者が真っ当に不特定多数の誰かを助ける為に活動しているのを知っていても……それでも。
どうしたって切り離して考えられない感情はある。
だとしても。
今日自分が運んだ少女は、あの薬剤師の青年共々うまくいって欲しいとは思う。
きっと紛れもなく、彼らは本物なのだろうから。
偽物ではないと言われても、それでも自分は偽物だと感じる程にあの二人の存在は眩しかったから。
報われて欲しいと、そう思った。
(あそこまでボロボロになるまで頑張ってたんだ。うまく行ってくれると良いが……)
仕事を終えた元理学療法士の運び屋マチスは、薬剤師の青年を背負い駈けていくアヤという少女の背を見送りながら心中でそう呟き、それから改めて考える。
(しかし……珍しい組み合わせの二人だったな)
薬剤師と弓使い……ではない。そんな組み合わせならありふれている。
『もしかしたらまた利用する事が有るかもしれないっすけど……その時は今見た事はレインさんには黙って置いて貰えると助かるっすよ』
去り際にそんな事を告げて行った彼女をただの弓使いと形容するのは絶対に違う。
そう考えていると、少し前の光景が脳裏にリフレインしてくる。
あの時、戻ってきた青年の意識は失われていた。
聞いたどころによると原因は身体能力を強化する類いの薬のオーバードーズとの事だ。
曰く意識を失う前に薬の効果を中和する薬は服用してあるらしく、だとすれば……否、例えそうでなくともこの場で自分にできる事は少しでも早く王都に戻る事だけとなる……自分には。
二人を乗せてすぐに飛び立った直後、アヤという弓使いの少女は言った。
「すみません……これからマチスさんのすぐ近くで嫌な事をやる事になるっすけど……すみません。今だけは許して欲しいっす」
「……?」
少女が意味深な発言をしたので後ろに控える二人の方に視線を向けて、思わず目を見開いた。
「アンタそれ……」
「治癒魔術っす……これで少しでも薬の副作用を抑えられれば……」
弓使いの少女は薬剤師の青年に治癒魔術を施していた。
それはまるでかつての自分の商売敵の賢者のように。
「アンタ……賢者だったのか?」
「志した事があるだけの弓使いっすよ。練度も精々三級ってところっすね」
「志しただけって……」
賢者になる事ができるのは才能のあるほんの僅かな人間だけだ。
……治癒魔術を習得できる人間は、本当にほんの僅かな人間だけなのだ。
それができるというだけで……大した実力が無い半端者でも食いっぱぐれる事が無い程に。
それなのに……発動できるところまで身に付けているのに。
「なんでそれを止めて弓使いなんか……」
賢者という職業を持ち上げている訳ではない。
弓使いという存在を卑下している訳でもない。
それでも一般論として賢者を志し最低限の結果を残しておきながらフェードアウトするのは、賢者に良いイメージを抱けていない自分のような旧医療従事者からしても大きな疑問となる。
そしてそんなマチスの問いに、苦笑いを浮かべて彼女は言った。
「実は私のお父さんが外科医なんすよ」
「……外科医」
「ほんと尊敬できる凄い人なんすよ私のお父さんは」
そして一拍空けてから言う。
「それを見て育って……賢者って仕事の事も知って。そしたら思ったんすよね……治癒魔術があればお父さんの仕事をサポートできるんじゃないかって」
「……」
「浅はかっすよね。正直私は医学のいの字も理解できないような馬鹿なんで、色々と頭回って無かった訳っす。誤算でした。大誤算っす。びっくりさせようと黙って勉強していたこの力で、本気でお父さんを助けられると思った。思ってた」
「……」
「お父さん見たいなお医者さんが築き上げてきた医学と、奇跡みたいな力を使う治癒魔術。この二つを組み合わせたら……もっと多くの人が助けられるんじゃないかって思った。だけど思慮が浅かったんすね。最終的に勘当されちゃいまして……それでフェードアウトっす」
「勘当って……」
「マチスさんならお父さんの気持ちも分かるんじゃないっすかね」
「……」
「マチスさんにお子さんが居るのかは分からないっすけど、自分の子供がそんな事言い始めて、実際に治癒魔術まで覚えていたら……嫌っすよね。なんで私は気付かなかったんだろう……そりゃ医学書を全く理解できない馬鹿っすよ私は」
言われて、考えて……分かってしまう。
多分此処まで真っすぐに……もしかしたら現代医学のあるべき姿を体現できていたかもしれない娘を拒絶してしまった父親の心証が。
……追い詰められていたであろう同業者の心証が。
と、そこで気付いた。
あるべき姿。
その志を聞いて、旧医学と治癒魔術が共存共栄するようなやり方があるべき姿だと、賢者にマイナス的な感情を向けている自分ですら思える事実に。
おそらく殆どの人間が到達できていないある種の高みに、目の前の少女が到達していたという事に。
そんな少女に問いかける。
「……ちなみに、そうやって懸命に治療している事をその男に隠す理由はなんだ?」
「そりゃ……自分の父親の考える事も分からない位の馬鹿っすから。レインさんの考える事もきっと読めない」
そして一拍空けてから少女は言う。
「レインさんも賢者の所為で追い込まれている人なのは同じっすから。そんなレインさんに治癒魔術が使えるなんてカミングアウトをするのは怖いっすよ……親しい人に嫌われるのは怖い」
「……そうか」
現状、自分がそんな事は無いと言っても何一つ信憑性を乗せられない。
言葉にそういう感情を乗せられるかどうかも分からない。
……なんとなく、そんな自分が本当にどうしようもない人間に思えてきた。
そしてそれから特に会話も無く、少女の治癒魔術による治療は続けられる。
そんな中で、ふと思い出したように少女は言った。
「あ、マチスさん」
「なんだ?」
「行きの時は言えなかったっすけど……私はマチスさんが偽物だなんて思ってないっすよ。ああ、これはお世辞とかではなく」
「……なんでそう思う?」
思わず感じた疑問をそのまま吐き出すと、少女は言った。
「同じような事を言うお父さんを間近で見てきて、それでも立派だなって私はずっと誇りに思ってたっすから。そんな事だけで偽物なんて事は……絶対に無いんすよ。あってたまるか」
……そんなやり取りを思い返して、マチスは改めて思う。
結局今になっても賢者という存在にあまりいい印象を持っていない。
神の様な奇跡の力を扱うからか横柄な人間も多く、それらを持ち上げ旧医療従事者を下げる一般世論も含め、とにかく良い印象なんて持てる筈が無いのだ。
……少なくない賢者が真っ当に不特定多数の誰かを助ける為に活動しているのを知っていても……それでも。
どうしたって切り離して考えられない感情はある。
だとしても。
今日自分が運んだ少女は、あの薬剤師の青年共々うまくいって欲しいとは思う。
きっと紛れもなく、彼らは本物なのだろうから。
偽物ではないと言われても、それでも自分は偽物だと感じる程にあの二人の存在は眩しかったから。
報われて欲しいと、そう思った。
98
あなたにおすすめの小説
帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!
雪奈 水無月
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。
ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。
観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中…
ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。
それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。
帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく…
さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした
新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。
「ヨシュア……てめえはクビだ」
ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。
「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。
危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。
一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。
彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。
迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。
追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました
KABU.
ファンタジー
「記録係なんてお荷物はいらない」
勇者パーティを支えてきた青年・ライトは、ダンジョンの最深部に置き去りにされる。
彼のスキル《記録》は、一度通った道を覚えるだけの地味スキル。
戦闘では役立たず、勇者たちからは“足手まとい”扱いだった。
だが死の淵で、スキルは進化する。
《超記録》――受けた魔法や技を記録し、自分も使える力。
そして努力の果てに得たスキル《成長》《進化》が、
《記録》を究極の力《アカシックレコード》へと昇華させる。
仲間を守り、街を救い、ドラゴンと共に飛翔する。
努力の記録が奇跡を生み、やがて――
勇者も、魔王も凌駕する“最強”へ。
神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します
すもも太郎
ファンタジー
伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。
その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。
出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。
そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。
大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。
今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。
※ハッピーエンドです
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる