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1-1 賢者と薬剤師
ex 大誤算
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レインとアヤが危険な戦いに臨んでいた頃、レインの代わりにジーンのパーティに加入した一級賢者リライタルは、目の前で展開される容共に困惑していた。
(なんだ……この人達は本当にS級だったのか?)
今彼の目の前では、先の戦闘で深手を負ったジーンとロイドが虫の息で倒れている。
戦ったのはS級と称される冒険者パーティなら難なく倒せる魔物だった筈なのに、明らかに押されて。
実力不足を露呈させて。
こちらの一級賢者という肩書を詐称だと暴言を吐きながら。
(違う……私は一級だ……この人達が……コイツらがあまりにも……ッ!)
意識を失っている二人に治癒魔術を施しながら、内心でそう吐き捨てる。
あまりにも弱い。
何故Sランクの冒険者パーティとして活動できていたのか不思議な位に。
比較対象がこの場に居るからこそ、それは強く感じられる。
「なぁ、リライタルさんよ。コイツは一体どう思う」
そう問いかけてくる三十代前後の男、ラグナは抜けたアヤという弓使いの少女の代わりにパーティに加わる事になった弓使いだ。
組んでいたSランクのパーティが比較的長期の休養期間に入ったらしく、紆余曲折有り今回の依頼に同行してもらう事になったのだ。
そんな彼はまさしくSランクパーティに相応しい実力者だった。
だからこそ、辛うじて魔物を撃退して窮地を切り抜け今に至る。
そして……そんな彼の存在が自身の一級という肩書に信頼性を持たせてくれる。
「アンタの強化魔術は確かに一級品だ。俺が本来組んでいる賢者とも遜色がねえ」
「……ですよね」
「ああ。だからアンタが経歴詐称をしているなんて事はまずない。それは俺が保証する。だが……彼らはどうだろうか。本当にS級パーティだったのか?」
「一応あなたの前に別の弓使いが居ましたが、会話を聞く限り特別彼らと実力差が有ったような雰囲気ではありませんでした。そして私は薬剤師の代わりに此処にいます……つまり抜けた二人が優秀でその二人のおかげでSランクだった、みたいな事は無いでしょう。我々の加入で確定的に戦力は底上げされている筈だ。つまり彼らは紛れもなくSランクの冒険者パーティだった。にも関わらず何故ってところですが」
リライタルの発言を聞き、ラグナは少し考えるように間を空けてから言う。
「……確かにこの二人と抜けた二人の四人でSランクのパーティだったんだろう。ただ……おそらく彼らをそこまで押し上げていたのはその薬剤師だ」
「……え?」
「まず勘違いしていそうだから一応訂正しておくと、今倒れている彼らはきっと、キミが思っている程弱くはない」
「……?」
「彼らは強い力に振り回されているようだった。肉体を薬の力で強化する事と、奇跡みたいな魔術で力を付与されるのとでは話が違うからな。あくまで内側から湧いて来る力と、外付けの力じゃ肉体の扱い方が違う……だから慣れればもう少し戦えるようにはなる筈だ。だがそれを踏まえても彼らは弱すぎる。キミに不満をぶつけたように、彼らが想定している実力まで一級賢者の強化魔術を使っても到達できていない。それはおそらくこれまでの到達点にも」
「……!?」
「特にロイドの戦いを見れば一目瞭然だ」
そう言ってラグナは魔術師……賢者の魔術よりも習得難易度が低い攻撃系の魔術を駆使して戦うロイドに視線を落として言う。
「ジーンの方は慣れていないからで説明が付くが、彼の魔術出力まで落ちているのならば確定だ。魔力を作り出す臓器の働きがこれまでよりも悪くなっている。つまりその薬剤師が調合した薬は、少なくともこういう場では賢者の魔術を上回る効力を持っていたんだろう」
まるで自分があの薬剤師より劣っていると取れる言葉を。
「……それにしてもなんだってそんな優秀な人材を追い出すような真似を。心が折れたりしてなければいいが……」
あの薬剤師の代わりに自分が加わるという選択が間違いだと取れる言葉を。
「……けるな」
「ん?」
「ふざけるな! 私は一級だぞ! 一級賢者だ! その私を罵っているのかアンタは! あの男より劣っていると! そう言いたいのですか!」
「おい落ち着けって、誰もアンタを責めてないだろ」
面倒くさそうに頭を掻きながらラグナは言う。
「アンタら賢者は凄い。一級なんていう一握りの存在のアンタなら尚更だ。その上で今回は薬剤師に軍配が上がったってだけだろ。たった一分野の話だ」
「……ッ」
言われてなんとか溢れ出る言葉を飲み込んだ。
……そう、一分野だけだ。負けてない。
総合的に考えればレインという薬剤師よりも、自分は遥かに格上な筈なのだ。
助けられる訳が無い人間を助けようと無駄なあがきをしている、医療という分野では遥かに格下でしかないあの男よりも総合的に考えれば格上なのだ。
そう必死に考える。
その分野でも敗北するかもしれないというありえない可能性をどうしても意識してしまう自分の思考を塗りつぶすように。
自尊心を守る為に。
(なんだ……この人達は本当にS級だったのか?)
今彼の目の前では、先の戦闘で深手を負ったジーンとロイドが虫の息で倒れている。
戦ったのはS級と称される冒険者パーティなら難なく倒せる魔物だった筈なのに、明らかに押されて。
実力不足を露呈させて。
こちらの一級賢者という肩書を詐称だと暴言を吐きながら。
(違う……私は一級だ……この人達が……コイツらがあまりにも……ッ!)
意識を失っている二人に治癒魔術を施しながら、内心でそう吐き捨てる。
あまりにも弱い。
何故Sランクの冒険者パーティとして活動できていたのか不思議な位に。
比較対象がこの場に居るからこそ、それは強く感じられる。
「なぁ、リライタルさんよ。コイツは一体どう思う」
そう問いかけてくる三十代前後の男、ラグナは抜けたアヤという弓使いの少女の代わりにパーティに加わる事になった弓使いだ。
組んでいたSランクのパーティが比較的長期の休養期間に入ったらしく、紆余曲折有り今回の依頼に同行してもらう事になったのだ。
そんな彼はまさしくSランクパーティに相応しい実力者だった。
だからこそ、辛うじて魔物を撃退して窮地を切り抜け今に至る。
そして……そんな彼の存在が自身の一級という肩書に信頼性を持たせてくれる。
「アンタの強化魔術は確かに一級品だ。俺が本来組んでいる賢者とも遜色がねえ」
「……ですよね」
「ああ。だからアンタが経歴詐称をしているなんて事はまずない。それは俺が保証する。だが……彼らはどうだろうか。本当にS級パーティだったのか?」
「一応あなたの前に別の弓使いが居ましたが、会話を聞く限り特別彼らと実力差が有ったような雰囲気ではありませんでした。そして私は薬剤師の代わりに此処にいます……つまり抜けた二人が優秀でその二人のおかげでSランクだった、みたいな事は無いでしょう。我々の加入で確定的に戦力は底上げされている筈だ。つまり彼らは紛れもなくSランクの冒険者パーティだった。にも関わらず何故ってところですが」
リライタルの発言を聞き、ラグナは少し考えるように間を空けてから言う。
「……確かにこの二人と抜けた二人の四人でSランクのパーティだったんだろう。ただ……おそらく彼らをそこまで押し上げていたのはその薬剤師だ」
「……え?」
「まず勘違いしていそうだから一応訂正しておくと、今倒れている彼らはきっと、キミが思っている程弱くはない」
「……?」
「彼らは強い力に振り回されているようだった。肉体を薬の力で強化する事と、奇跡みたいな魔術で力を付与されるのとでは話が違うからな。あくまで内側から湧いて来る力と、外付けの力じゃ肉体の扱い方が違う……だから慣れればもう少し戦えるようにはなる筈だ。だがそれを踏まえても彼らは弱すぎる。キミに不満をぶつけたように、彼らが想定している実力まで一級賢者の強化魔術を使っても到達できていない。それはおそらくこれまでの到達点にも」
「……!?」
「特にロイドの戦いを見れば一目瞭然だ」
そう言ってラグナは魔術師……賢者の魔術よりも習得難易度が低い攻撃系の魔術を駆使して戦うロイドに視線を落として言う。
「ジーンの方は慣れていないからで説明が付くが、彼の魔術出力まで落ちているのならば確定だ。魔力を作り出す臓器の働きがこれまでよりも悪くなっている。つまりその薬剤師が調合した薬は、少なくともこういう場では賢者の魔術を上回る効力を持っていたんだろう」
まるで自分があの薬剤師より劣っていると取れる言葉を。
「……それにしてもなんだってそんな優秀な人材を追い出すような真似を。心が折れたりしてなければいいが……」
あの薬剤師の代わりに自分が加わるという選択が間違いだと取れる言葉を。
「……けるな」
「ん?」
「ふざけるな! 私は一級だぞ! 一級賢者だ! その私を罵っているのかアンタは! あの男より劣っていると! そう言いたいのですか!」
「おい落ち着けって、誰もアンタを責めてないだろ」
面倒くさそうに頭を掻きながらラグナは言う。
「アンタら賢者は凄い。一級なんていう一握りの存在のアンタなら尚更だ。その上で今回は薬剤師に軍配が上がったってだけだろ。たった一分野の話だ」
「……ッ」
言われてなんとか溢れ出る言葉を飲み込んだ。
……そう、一分野だけだ。負けてない。
総合的に考えればレインという薬剤師よりも、自分は遥かに格上な筈なのだ。
助けられる訳が無い人間を助けようと無駄なあがきをしている、医療という分野では遥かに格下でしかないあの男よりも総合的に考えれば格上なのだ。
そう必死に考える。
その分野でも敗北するかもしれないというありえない可能性をどうしても意識してしまう自分の思考を塗りつぶすように。
自尊心を守る為に。
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