21 / 51
1-1 賢者と薬剤師
18 狭い世の中
しおりを挟む
「笑うなって言うからどんな話が出て来るのかって思ったっすけど、蓋開けてみれば滅茶苦茶立派じゃないっすか」
最後まで一通り話をして、その間アヤは相槌を打つ程度で静かに笑わず聞いてくれて。
最終的にそんな肯定的な言葉を向けてくれた。
「逆に聞くっすけど、レインさん的に笑われるかもしれない要素ってどこだったんすか」
「いや、目的と行動が全然噛み合ってねえって思われたらなって」
「そう思う人は思うかもって感想は出てくるっすね。薬剤師だとか、こう、言い方は悪いっすけど旧医療従事者の方々の行動を頭ごなしに否定する人って一杯いるっすから。だけどちゃんと耳を傾けようって思う人なら笑わねえっす。自信持ちましょうよ。立派な事やってんすから」
「……そうだな」
終わってみれば本当にあっさりと肯定されて、今まで変な心配をして何も話してこなかった事が馬鹿らしく感じてくる……実際馬鹿だったのだろう。
こういう反応を返してくれるのは分かっていた筈なのに。
(……自信、か)
やはりその辺が自分が思っている以上に欠落しているのだろうなと改めて思う。
現代における旧医療従事者の職業病とでも言うべきなのかもしれない。
あくまで自分一個人に限った話なのかもしれないけれど。
「とにかくそういう事ならアスカちゃんパーティに入れたのは正解っすね。ちなみにこの話ってアスカちゃんにしました?」
「……正直な事言うと、自然な流れでこの話をした訳で、結果的にアスカに話したのにお前に話さない訳にはいかないだろってなって、話すに至ってる」
「っていう事はレインさんの秘密を聞いたのは二番目……私二番目かぁ……いや、別に気にする話じゃないんすけど」
少々不機嫌そうにアヤはそう言う。
「これ訂正しなくてもいい事かもしれねえけどリカが一人目だからアヤは三番目って事に……」
「流石にご家族はノーカンっす」
と、そこで何かに気付いたようにハッとした表情を浮かべたアヤは、聞き取れないような小声で呟く。
「……アスカちゃんには話せて私には笑われたくなかったから話せなかったって事は、これ逆にポイント高いな」
本当に何言ってるのか聞き取れなかった。
聞き取れなかったけど、今度は少し上機嫌というような表情を浮かべている。
「えっと、なんて?」
「秘密っす」
「そっか」
気にはなるがこれまでガッツリ秘密を抱えてきた立場な以上、強く聞けるご身分ではない。
だから追及は止めようと思っていたところでアヤは言う。
「しっかし……レインさんが賢者の事を結構肯定していたのは意外でしたね。いくらレインさんでももうちょっと悪印象とか持ってるものと思ってたっす」
「結局医療ってのは手段だからさ……優れた物は肯定して行かねえと。あ、でも他の旧医療従事者の前でこんな話するなよ。喧嘩になるかもしれねえから」
「言わねえっすよ。レインさんの考え方が立派ってだけで、やっぱ賢者と旧医療従事者の間の溝は深いっすから」
そう言った後、またもや小声でアヤは言う。
「…………そっか、レインさんになら言っても」
またもや聞き取れない声量で呟いた後、覚悟を決めるように深呼吸をしてからアヤは言う。
「あの、レインさん」
「どうした?」
「実は私…………」
そこまで言って……そこから先の言葉は出てこなかった。
「えっと……アヤ?」
「え……いや、あの…………えっと、その……今の流れ無しって事でお願いっす」
「お、おう……そりゃ構わねえけど」
というより構わなくなくても、やはり色々と隠してきた立場上追求できるご身分では無い訳でスルーせざるを得ない。
それに、隠してきた立場だからこそ分かる。
言いにくい事を人に言う難しさが。
だからアヤの頼み通り、今の流れは無しだ。
そして誤魔化すように、仕切り直すようにアヤは言う。
「そ、そういえばレインさんに冒険者になる様に進めた薬剤師の人ってどんな人なんすか?」
アスカと同じ話をしたと言っても、それは別に一語一句同じだったという訳ではない。
流れという物がある。
だから結果的にアスカの時とは違いアスカのパーティに居て、おそらく亡くなった事も含め、シエスタの話はしていなかった。
……アヤはレインの考えを立派だと言ってくれた。
だとすればその元となったシエスタの話は、例え明るい方向に転ばないかもしれなくても話さない訳にはいかない。
彼女の事も肯定してもらいたいから。
そう思いながら、アヤにもシエスタの話を始める。
「シエスタ・キリロフっていう少し年上の女の人だよ。立派な薬剤師だ」
「……え?」
アヤはその名前を聞いて目を見開いた。
まるで先程のアスカのように……その名前の薬剤師の女性を知っているかのように。
最後まで一通り話をして、その間アヤは相槌を打つ程度で静かに笑わず聞いてくれて。
最終的にそんな肯定的な言葉を向けてくれた。
「逆に聞くっすけど、レインさん的に笑われるかもしれない要素ってどこだったんすか」
「いや、目的と行動が全然噛み合ってねえって思われたらなって」
「そう思う人は思うかもって感想は出てくるっすね。薬剤師だとか、こう、言い方は悪いっすけど旧医療従事者の方々の行動を頭ごなしに否定する人って一杯いるっすから。だけどちゃんと耳を傾けようって思う人なら笑わねえっす。自信持ちましょうよ。立派な事やってんすから」
「……そうだな」
終わってみれば本当にあっさりと肯定されて、今まで変な心配をして何も話してこなかった事が馬鹿らしく感じてくる……実際馬鹿だったのだろう。
こういう反応を返してくれるのは分かっていた筈なのに。
(……自信、か)
やはりその辺が自分が思っている以上に欠落しているのだろうなと改めて思う。
現代における旧医療従事者の職業病とでも言うべきなのかもしれない。
あくまで自分一個人に限った話なのかもしれないけれど。
「とにかくそういう事ならアスカちゃんパーティに入れたのは正解っすね。ちなみにこの話ってアスカちゃんにしました?」
「……正直な事言うと、自然な流れでこの話をした訳で、結果的にアスカに話したのにお前に話さない訳にはいかないだろってなって、話すに至ってる」
「っていう事はレインさんの秘密を聞いたのは二番目……私二番目かぁ……いや、別に気にする話じゃないんすけど」
少々不機嫌そうにアヤはそう言う。
「これ訂正しなくてもいい事かもしれねえけどリカが一人目だからアヤは三番目って事に……」
「流石にご家族はノーカンっす」
と、そこで何かに気付いたようにハッとした表情を浮かべたアヤは、聞き取れないような小声で呟く。
「……アスカちゃんには話せて私には笑われたくなかったから話せなかったって事は、これ逆にポイント高いな」
本当に何言ってるのか聞き取れなかった。
聞き取れなかったけど、今度は少し上機嫌というような表情を浮かべている。
「えっと、なんて?」
「秘密っす」
「そっか」
気にはなるがこれまでガッツリ秘密を抱えてきた立場な以上、強く聞けるご身分ではない。
だから追及は止めようと思っていたところでアヤは言う。
「しっかし……レインさんが賢者の事を結構肯定していたのは意外でしたね。いくらレインさんでももうちょっと悪印象とか持ってるものと思ってたっす」
「結局医療ってのは手段だからさ……優れた物は肯定して行かねえと。あ、でも他の旧医療従事者の前でこんな話するなよ。喧嘩になるかもしれねえから」
「言わねえっすよ。レインさんの考え方が立派ってだけで、やっぱ賢者と旧医療従事者の間の溝は深いっすから」
そう言った後、またもや小声でアヤは言う。
「…………そっか、レインさんになら言っても」
またもや聞き取れない声量で呟いた後、覚悟を決めるように深呼吸をしてからアヤは言う。
「あの、レインさん」
「どうした?」
「実は私…………」
そこまで言って……そこから先の言葉は出てこなかった。
「えっと……アヤ?」
「え……いや、あの…………えっと、その……今の流れ無しって事でお願いっす」
「お、おう……そりゃ構わねえけど」
というより構わなくなくても、やはり色々と隠してきた立場上追求できるご身分では無い訳でスルーせざるを得ない。
それに、隠してきた立場だからこそ分かる。
言いにくい事を人に言う難しさが。
だからアヤの頼み通り、今の流れは無しだ。
そして誤魔化すように、仕切り直すようにアヤは言う。
「そ、そういえばレインさんに冒険者になる様に進めた薬剤師の人ってどんな人なんすか?」
アスカと同じ話をしたと言っても、それは別に一語一句同じだったという訳ではない。
流れという物がある。
だから結果的にアスカの時とは違いアスカのパーティに居て、おそらく亡くなった事も含め、シエスタの話はしていなかった。
……アヤはレインの考えを立派だと言ってくれた。
だとすればその元となったシエスタの話は、例え明るい方向に転ばないかもしれなくても話さない訳にはいかない。
彼女の事も肯定してもらいたいから。
そう思いながら、アヤにもシエスタの話を始める。
「シエスタ・キリロフっていう少し年上の女の人だよ。立派な薬剤師だ」
「……え?」
アヤはその名前を聞いて目を見開いた。
まるで先程のアスカのように……その名前の薬剤師の女性を知っているかのように。
89
あなたにおすすめの小説
帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!
雪奈 水無月
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。
ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。
観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中…
ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。
それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。
帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく…
さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした
新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。
「ヨシュア……てめえはクビだ」
ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。
「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。
危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。
一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。
彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。
迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。
追放されたお荷物記録係、地味スキル《記録》を極めて最強へ――気づけば勇者より強くなってました
KABU.
ファンタジー
「記録係なんてお荷物はいらない」
勇者パーティを支えてきた青年・ライトは、ダンジョンの最深部に置き去りにされる。
彼のスキル《記録》は、一度通った道を覚えるだけの地味スキル。
戦闘では役立たず、勇者たちからは“足手まとい”扱いだった。
だが死の淵で、スキルは進化する。
《超記録》――受けた魔法や技を記録し、自分も使える力。
そして努力の果てに得たスキル《成長》《進化》が、
《記録》を究極の力《アカシックレコード》へと昇華させる。
仲間を守り、街を救い、ドラゴンと共に飛翔する。
努力の記録が奇跡を生み、やがて――
勇者も、魔王も凌駕する“最強”へ。
神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します
すもも太郎
ファンタジー
伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。
その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。
出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。
そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。
大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。
今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。
※ハッピーエンドです
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる