医魔のアスクレピオス ~不遇職【薬剤師】はS級パーティを追放されても薬の力で成り上がります~

山外大河

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1-2 治癒魔術と旧医学

6 旅の道中

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 クーライトまでの道中は特に大きな問題は起きずに進む事ができた。
 いくつかの町を経由し、その一つの街で一泊してその翌日に到着。
 トラブルの無い旅路。

 一応は戦う力を持つ冒険者としても、旧医療従事者としても、何も出番が無かった事は本当に良かったと思う。
 ただ一拍はしている訳で、その道中で問題以外の事が何も起きなかった訳ではない。

「あ、これめっちゃうまいっすよレインさん! あ、そっちのもうまそうっすね。半分ずつシェアしないっすか!? するっすよね!?」

「ん? あれ何かな兄さん。ちょっとあっち見に行こうよ」

「レインさん、あれとかお土産で買って帰ったらどうです? ボク的に診療所に置いとくとなんかいい感じだと思うんですけど」

 出発前は青春なんて言葉で片付けられる旅ではないとは行ったものの、道中はどの口が言っているのかと苦笑いを浮かべたくなるぐらいには、一泊した街での様子は普通に旅行だった。

 ……流石にクーライトに付けばこのノリを意地できないというか、それは明確に不謹慎なのではないかと思ったけれど、それでもその手前となる道中は結果的にこうなった。

 これが自分達の今回の旅のスタンスとして良いのか悪いのかは分からないけれど、皆楽しそうなので……例え悪くても許してほしいと思う。

(……なんか楽しくて結構金使ったな。余裕ないのに)

 滅茶苦茶悪い事というか、頭の悪い事をしているような気がする。
 ちょっと許されない。

「思うにレインさん、節約してるつもりで全然節約できていないタイプの人間だと思うんすよね。そういうのに向いてないというか……」

「旅先での行動はノーカウントにしてくれねえかな」

「とはいえお土産で謎の置物買うのは果たしてノーカウントにしても良いんすかね……」

「多分それは無駄使いだと思うよ兄さん」

「ぐ……お、おいアスカ、弁護してくれ。これ勧めたのお前だよな?」

「いや……改めて考えると、診療所の雰囲気と合わない気がしてきましたね…………だとしたらやっぱり無駄遣いじゃないですかね? うん、無駄ですよ。無駄遣いです」

「とんでもねえハシゴの外し方されてんだけど……えぇ……」

 ……とにかくそんなイベントがいくつかあり、無事到着だ。

 これからは先月の諸々の一件とは違うベクトルで大変な事が多いだろうから、精神的な体力を温存できたのは良い事だったのではないだろうか?

 ……自分の事より、クーライトに辿り着いた時のアヤの表情を見てそう思う。

 なんとなくその表情は墓参りだとか、そういう理由で明るくないのではなく、緊張感を感じさせるような重さが感じ取れた。

(……なんだ?)

 なんとなくあまり良くない感じがした。
 それを感じていたところでリカが言う。

「それで、どうするの兄さん」

「どうするというと?」

「宿はシエスタさんのご両親に抑えて貰ってるんだよね。まず一旦そこに荷物を置きに行く?」

「まあそうした方が良いかな」

「レインさんの場合謎の置物も持ってますからね」

「いやお前だけは謎って言うなよ……アヤもそれでいいか?」

「…………」

「アヤ?」

「…………」

「おい、アヤ、聞いてるか? おーい」

「あ、はい! なんすか!? 道案内っすか!?」

「いやそれもそうだけど、一旦宿に行くって感じで良いかって確認」

「というか今に至るまで全く気にしてませんでしたけど、アヤさんも宿に泊まる感じで良かったんですか? 久しぶりに地元に帰って来たならアヤさんだけでも実家に泊まった方が良いんじゃないですかね? ご家族とゆっくりって感じで」

「あ、あはは……いや、良いんすよそれは。私も皆と同じところに泊まるっす。仲間外れはな無しっすよ」

 そう言ってアヤはぎこちない笑みを浮かべる。

「「「……」」」 

 そんな様子を見てレインは……そしておそらくアスカとリカも察した。

 ……アヤと家族の仲はお世辞にも良いとは言えないのだと。

 よく此処に墓参りに来ようと思ったり案内役をになったりしてくれたなと思うくらいには、ほぼ間違いなくアヤは自分達とは別の形で、この村に来ることに重い感情を抱えているのだと。
 そう思わざるを得なかった。
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