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六章 君ガ為のカタストロフィ
ex ただ純粋に友達の為に
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宮村茜は精霊を助けるために戦ってきた。
その助けるという行為が自分のエゴでしかないとしても、確かに精霊を助けようという志は確かに本物だった筈だ。
そんな、心が折れて遠く離れていた精霊の為の戦い。
それが今、形を変えてこうしてこの場で展開されている。
今度は。今度こそは本当の意味で精霊を助ける為に。
そして天野に向かって再び走り出した茜は、天野に切りかかる瞬間に魔術を発動する。
魔術は大きく分けて四種類存在する。
一、体内で術式を形成して発動させる最もオーソドックスなタイプの魔術。
二、呪符等を媒体として発動させる類いの魔術。
三、詠唱に魔力を乗せて発動させる類いの魔術。
四、外部描いた魔方陣に魔力を流して発動させる類いの魔術。
茜が発動させたのは一つ目。体内で術式を構築する魔術。
発動する効果のあり様で言えば精霊術に程近い力。
次の瞬間、天野を囲むように茜の分身が六体出現する。
幻覚では無い。確かにそこに存在する質量の無い分身。
そしてそれが出現すると同時に切りかかった刀を天野の手の甲に受け止められる。
だがその刀が確かな衝突音と衝撃の後にすり抜けた。
もう既に宮村茜はそこにいない。分身へとその身を移した。
質量を持たない分身へのテレポート。
対策局の魔術師が扱う魔術の中でも実践レベルで使える者が殆どいない上位クラスの高度な魔術。
そして次の瞬間には実態を含めた全ての茜が天野にそれぞれ攻撃を仕掛ける。
呪符を使用した魔術による攻撃を。直接的な近接攻撃を。瞬時にアスファルトに魔法陣を描いて発動させる攻撃を。地を走る斬撃を。魔術を発動させる簡易的な詠唱を。
その内のどれかが本物。
「……ッ!?」
それを正確に見破られた。
接近して振り払った刀。その刀身を他の全ての攻撃を無視した上で掌で握られて受け止められる。
(……駄目か)
次の手を考える為に思考回路を酷使しながらも、とにかくテレポートを使って分身と入れ替わろうとする。
が、次の瞬間天野の軽い震脚と共に茜の意図しない形で全ての分身が消滅した。
原因は分かっている。天野が何かしらの魔術を使用したのだろう。
だがそれが一体どういう魔術をどういう風に使ってそれを成しえたのかは分からない。それがまるで分からない事でより一層目の前の相手との実力差が浮き彫りになってしまう。
「……宮村」
茜の刃をその手で押さえ込みながら茜に言う。
「俺はお前がああいう無茶をするのを止めてくれたと聞いて安心していたんだ」
「……」
天野の口調に込められているのは敵意ではない。
ただ普通に相手を心配するような雰囲気。
宮村茜にとって天野宗谷は魔術の師であり、かつての。誠一と出会う前の直属の上司だった。
何度も。何度も何度も何度も。茜が自身の部下から外れるその日まで。無茶をして死にかける茜を助け、諭し。外れてしまったその後も気にかけて貰っていた、恩人の様な相手だ。
「なのにお前はまたこういう事を始めるのか」
こういう事。精霊を助けるという事。
多くの人に迷惑を掛けて、自分自身も傷付いて。そして土御門誠一に精霊を殺させた。そういう事。
「違う……そうじゃないよ、天野さん」
だけど今それを引き合いに出されるのはお門違いだ。
そういう事はもうできなくて。やろうと思ってもきっと体は動かなくて。
だから根本的に違うのだ。
「エルちゃんは私の友達だから。精霊だとかなんだとか、そういう事はどうだっていいんだ」
つまりはそういう事だ。
エルが精霊であるかどうかなど、この場においてはどうだっていいのだ。
エルと茜が出会えたのは、まともに自我を保てる精霊と、精霊を助ける為に戦っていた人間という条件が揃ったからこそと言ってもいい。
他の対策局の人間を含めた中でも一番エルと親交が深いのも、そういう入り口があったからだと言ってもいい。
仮に人間と人間同士で。精霊と精霊同士で巡りあっていたら、今の様な関係は気付かれていないかもしれない。
だけど……いま此処にある関係に。辿り着いた現状にはもはや精霊や人間という概念など関係はない。
ただの親友。普通の親友。特別な事情などに干渉されない、どこにでもいるような気の合う親友同士。
ただ、それだけだ。
だからこれは別だ。自分が折れた。折れてしまった事とは何も関係ない。
ただ単純に。難しい事など何も無い事。
シンプルに、友達を守る戦い。
「だから今ここで天野さんを止めてみせる!」
言いながら茜は刀を動かす事を諦め手を離し、バックステップで後退。その間に取りだした呪符を天野に向けて放り投げる。
そして次の瞬間だ。
上空から天野を取り囲むように魔術の雨が降る。
そしてアスファルトに着弾。そして発光。
天野を取り囲むようにして箱状の結界が出現する。
その内部に茜の呪符を招き入れて。
「やれ、茜!」
その結界を発動させた主である土御門誠一の言葉を引き金に茜は柏手を打つ。
次の瞬間だ。
天野を取り囲んだ結界。
その中で轟音が鳴り響き、発動する。
茜が放った呪符による、魔術の力の大爆発。
その助けるという行為が自分のエゴでしかないとしても、確かに精霊を助けようという志は確かに本物だった筈だ。
そんな、心が折れて遠く離れていた精霊の為の戦い。
それが今、形を変えてこうしてこの場で展開されている。
今度は。今度こそは本当の意味で精霊を助ける為に。
そして天野に向かって再び走り出した茜は、天野に切りかかる瞬間に魔術を発動する。
魔術は大きく分けて四種類存在する。
一、体内で術式を形成して発動させる最もオーソドックスなタイプの魔術。
二、呪符等を媒体として発動させる類いの魔術。
三、詠唱に魔力を乗せて発動させる類いの魔術。
四、外部描いた魔方陣に魔力を流して発動させる類いの魔術。
茜が発動させたのは一つ目。体内で術式を構築する魔術。
発動する効果のあり様で言えば精霊術に程近い力。
次の瞬間、天野を囲むように茜の分身が六体出現する。
幻覚では無い。確かにそこに存在する質量の無い分身。
そしてそれが出現すると同時に切りかかった刀を天野の手の甲に受け止められる。
だがその刀が確かな衝突音と衝撃の後にすり抜けた。
もう既に宮村茜はそこにいない。分身へとその身を移した。
質量を持たない分身へのテレポート。
対策局の魔術師が扱う魔術の中でも実践レベルで使える者が殆どいない上位クラスの高度な魔術。
そして次の瞬間には実態を含めた全ての茜が天野にそれぞれ攻撃を仕掛ける。
呪符を使用した魔術による攻撃を。直接的な近接攻撃を。瞬時にアスファルトに魔法陣を描いて発動させる攻撃を。地を走る斬撃を。魔術を発動させる簡易的な詠唱を。
その内のどれかが本物。
「……ッ!?」
それを正確に見破られた。
接近して振り払った刀。その刀身を他の全ての攻撃を無視した上で掌で握られて受け止められる。
(……駄目か)
次の手を考える為に思考回路を酷使しながらも、とにかくテレポートを使って分身と入れ替わろうとする。
が、次の瞬間天野の軽い震脚と共に茜の意図しない形で全ての分身が消滅した。
原因は分かっている。天野が何かしらの魔術を使用したのだろう。
だがそれが一体どういう魔術をどういう風に使ってそれを成しえたのかは分からない。それがまるで分からない事でより一層目の前の相手との実力差が浮き彫りになってしまう。
「……宮村」
茜の刃をその手で押さえ込みながら茜に言う。
「俺はお前がああいう無茶をするのを止めてくれたと聞いて安心していたんだ」
「……」
天野の口調に込められているのは敵意ではない。
ただ普通に相手を心配するような雰囲気。
宮村茜にとって天野宗谷は魔術の師であり、かつての。誠一と出会う前の直属の上司だった。
何度も。何度も何度も何度も。茜が自身の部下から外れるその日まで。無茶をして死にかける茜を助け、諭し。外れてしまったその後も気にかけて貰っていた、恩人の様な相手だ。
「なのにお前はまたこういう事を始めるのか」
こういう事。精霊を助けるという事。
多くの人に迷惑を掛けて、自分自身も傷付いて。そして土御門誠一に精霊を殺させた。そういう事。
「違う……そうじゃないよ、天野さん」
だけど今それを引き合いに出されるのはお門違いだ。
そういう事はもうできなくて。やろうと思ってもきっと体は動かなくて。
だから根本的に違うのだ。
「エルちゃんは私の友達だから。精霊だとかなんだとか、そういう事はどうだっていいんだ」
つまりはそういう事だ。
エルが精霊であるかどうかなど、この場においてはどうだっていいのだ。
エルと茜が出会えたのは、まともに自我を保てる精霊と、精霊を助ける為に戦っていた人間という条件が揃ったからこそと言ってもいい。
他の対策局の人間を含めた中でも一番エルと親交が深いのも、そういう入り口があったからだと言ってもいい。
仮に人間と人間同士で。精霊と精霊同士で巡りあっていたら、今の様な関係は気付かれていないかもしれない。
だけど……いま此処にある関係に。辿り着いた現状にはもはや精霊や人間という概念など関係はない。
ただの親友。普通の親友。特別な事情などに干渉されない、どこにでもいるような気の合う親友同士。
ただ、それだけだ。
だからこれは別だ。自分が折れた。折れてしまった事とは何も関係ない。
ただ単純に。難しい事など何も無い事。
シンプルに、友達を守る戦い。
「だから今ここで天野さんを止めてみせる!」
言いながら茜は刀を動かす事を諦め手を離し、バックステップで後退。その間に取りだした呪符を天野に向けて放り投げる。
そして次の瞬間だ。
上空から天野を取り囲むように魔術の雨が降る。
そしてアスファルトに着弾。そして発光。
天野を取り囲むようにして箱状の結界が出現する。
その内部に茜の呪符を招き入れて。
「やれ、茜!」
その結界を発動させた主である土御門誠一の言葉を引き金に茜は柏手を打つ。
次の瞬間だ。
天野を取り囲んだ結界。
その中で轟音が鳴り響き、発動する。
茜が放った呪符による、魔術の力の大爆発。
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