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六章 君ガ為のカタストロフィ
38 答えを知る者
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エルを助ける方法を……知っている?
「知ってるってアンタ――」
「教えろ!」
思わず誠一の言葉を遮って立ち上がり、男に詰め寄る。
「頼む、教えてくれ! 一体どうやったらエルを救える! 一体どうすればいい!」
「これはこれは……相当切羽詰まってるようだね」
「いいから頼む! 教えてくれ!」
とにかく。とにかくその答えが知りたかった。
あまりにも唐突に訪れたその男が一体誰でなんの目的で出てきたのかも分からない。
だけどもうそんな事は言っていられなくて。藁にもすがる思いだった。
「待て栄治。ちょっと落ち着け」
「落ち着いていられるかよ!」
「落ち着かなきゃ話が進まねえだろ」
「……ッ……悪い」
「とりあえずこの場に俺らがいてよかったわマジで」
……俺もそう思う。多分一人だと感情の制御が効かない。
そして一拍空けてから誠一は男に問う。
「改めて聞くが少なくともアンタは対策局本部の人間じゃないな。だからと言って支部の人間……ってわけでも無さそうだ。だとすりゃ警察や自衛隊か。一体どこ所属の人間だ」
「キミ達が情報を引きだしたいのは分かる。キミ達の置かれた状況に加え、キミ達からすればあまりに唐突な邂逅だ。私が逆の立場でも聞きだそうとするさ。だがさっきも言ったがその話も後だ。私は此処にキミ達を迎えに来たんだ」
「迎え?」
「そう、迎えだ。どうやらキミ達はこの場に結界を張っているようだが、それでも此処はそういう話をするにはあまりに向かない。我々の事も含めて、話すのはこの場所を移動してからの方がいいと思うが」
……まあ確かにその通りかも知れない。
いくら聞かれなくて下手な動きをしても注目されない様な細工をしていても、それでも向かない事は確かだった。
「とりあえず場所は既に用意してある。とても難しい事だとは思うが、今はこちらがキミ達の味方であると信じてもらえると助か――」
そこまで口にして、完全に自分のペースで喋っていた男の言葉が止まった。否、止められた。
宮村を中心に淡い光が放たれたかと思うと、通路を含めた俺達のテーブル周辺に一瞬で青白い結界が展開される。
それは中にいる人間を閉じ込めるように。結界の外と内側を隔離するように。
そういう結界を展開した宮村が、呪符を刀に変えてテーブルに飛び乗り、男の首筋に刀身を添えていた。
「宮村……?」
一体何をやっているのだろうと思った。
目の前の男の素性は知れない。だけどそれでも目の前の男は俺達が欲している情報を知っていると言っている。
とにかく、話を聞かなければならない相手なのだ。それなのに宮村は一体何をやってるんだ。
「おい茜! お前なにやって――」
だがそんな誠一の言葉を掻き消す様に、宮村は男に刀身を向けながら言う。
「……この場に私達が使った物とは違う魔術が張られている。それも……私が今まで相手にしてたのに似た意味の分からない形式の奴」
「なに!?」
誠一が驚愕の声を上げ、俺も思わず頭が真っ白になりかけた。
だって……それはつまりだ。
「まさか本当に躍り出て来るとは思わなかったよ」
その瞬間だった。
今まで藁にも縋る思いで、目の前に現れた謎の男に寄せていた期待は掻き消えた。
目の前の男が諸悪の根源だと脳が理解した瞬間。一瞬思考が消し飛んだ。
気が付けば男の顔面目がけて拳を放っていた……だが。
「手荒な真似は止めて欲しいな。事情を察すれば仕方のない事は分かるが」
「……ッ!?」
衝撃音。
俺が思わず放った拳は男の掌に止められ、男はその手で俺の拳を握り、何かしらの魔術を発動してくる。
そして拳を中心に右腕全体に激痛が走り、拳を解放された俺は思わずその場で膝を付いた。
「ぐあ……ッ!」
「栄治!」
そして男は自身に刃が向けられているにも関わらず、涼しい顔をして言う。
「しかしまったく、予定が狂った。私はキミ達を味方する素性不明の謎の男として立ち回ろうと思ったのに。こうなってしまっては折角考えたプランはもう使えないな」
男はそんな風に自分が一連の犯人である事を明言するような事を口にする。
「何が目的なのかな? 私達の所に来た理由も、なんで精霊を暴走させるような真似をしているのかも……解決策も。全部吐いてもらう」
「私はそうした情報をキミ達に伝えるために此処に来た。だからそれを話す為の場も用意しているよ。此処で争う気はない。武器を下ろして私に付いて来てくれると助かる」
「なんでそっちが主導権を握ろうとしてるのかな?」
そして俺も右腕を抑えながら俺は立ち上がり、構えを取る。
「……てめぇが元凶か」
右腕の激痛で一拍空けて、少し冷静さを取り戻して。
取り戻したうえで目の前の男に対する殺意が沸いてきた。
何の目的でコイツが動いているのかは知らない。俺達に接触してきた理由も、そもそも精霊を暴走させている理由も。何も知らない……だけどだ。
コイツが原因だ。
エルを苦しめている元凶だ。
ナタリア達を死なせた元凶だ。
「まあ握れるものなら握って連れ帰り拷問でもしてみるがいい。そちらの戦力や状況を把握して態々キミ達の前に立つ人間から主導権を奪えるようならな」
そしてそんな事を言った後、付け加えるように男は言う。
「もっとも……約一名ノリ気ではないようだが」
その言葉に思わず反応して誠一の方に一瞬視線を向ける。
確かに誠一は呪符を手に構えてはいるものの、あろうことかそこに戦意が見えてこない。
そして誠一は言う。
「茜、刀を下げろ。エイジ、お前もだ」
その言葉はまるで目の前の男の言葉に素直に従おうとする様な、そんな言葉だった。
「知ってるってアンタ――」
「教えろ!」
思わず誠一の言葉を遮って立ち上がり、男に詰め寄る。
「頼む、教えてくれ! 一体どうやったらエルを救える! 一体どうすればいい!」
「これはこれは……相当切羽詰まってるようだね」
「いいから頼む! 教えてくれ!」
とにかく。とにかくその答えが知りたかった。
あまりにも唐突に訪れたその男が一体誰でなんの目的で出てきたのかも分からない。
だけどもうそんな事は言っていられなくて。藁にもすがる思いだった。
「待て栄治。ちょっと落ち着け」
「落ち着いていられるかよ!」
「落ち着かなきゃ話が進まねえだろ」
「……ッ……悪い」
「とりあえずこの場に俺らがいてよかったわマジで」
……俺もそう思う。多分一人だと感情の制御が効かない。
そして一拍空けてから誠一は男に問う。
「改めて聞くが少なくともアンタは対策局本部の人間じゃないな。だからと言って支部の人間……ってわけでも無さそうだ。だとすりゃ警察や自衛隊か。一体どこ所属の人間だ」
「キミ達が情報を引きだしたいのは分かる。キミ達の置かれた状況に加え、キミ達からすればあまりに唐突な邂逅だ。私が逆の立場でも聞きだそうとするさ。だがさっきも言ったがその話も後だ。私は此処にキミ達を迎えに来たんだ」
「迎え?」
「そう、迎えだ。どうやらキミ達はこの場に結界を張っているようだが、それでも此処はそういう話をするにはあまりに向かない。我々の事も含めて、話すのはこの場所を移動してからの方がいいと思うが」
……まあ確かにその通りかも知れない。
いくら聞かれなくて下手な動きをしても注目されない様な細工をしていても、それでも向かない事は確かだった。
「とりあえず場所は既に用意してある。とても難しい事だとは思うが、今はこちらがキミ達の味方であると信じてもらえると助か――」
そこまで口にして、完全に自分のペースで喋っていた男の言葉が止まった。否、止められた。
宮村を中心に淡い光が放たれたかと思うと、通路を含めた俺達のテーブル周辺に一瞬で青白い結界が展開される。
それは中にいる人間を閉じ込めるように。結界の外と内側を隔離するように。
そういう結界を展開した宮村が、呪符を刀に変えてテーブルに飛び乗り、男の首筋に刀身を添えていた。
「宮村……?」
一体何をやっているのだろうと思った。
目の前の男の素性は知れない。だけどそれでも目の前の男は俺達が欲している情報を知っていると言っている。
とにかく、話を聞かなければならない相手なのだ。それなのに宮村は一体何をやってるんだ。
「おい茜! お前なにやって――」
だがそんな誠一の言葉を掻き消す様に、宮村は男に刀身を向けながら言う。
「……この場に私達が使った物とは違う魔術が張られている。それも……私が今まで相手にしてたのに似た意味の分からない形式の奴」
「なに!?」
誠一が驚愕の声を上げ、俺も思わず頭が真っ白になりかけた。
だって……それはつまりだ。
「まさか本当に躍り出て来るとは思わなかったよ」
その瞬間だった。
今まで藁にも縋る思いで、目の前に現れた謎の男に寄せていた期待は掻き消えた。
目の前の男が諸悪の根源だと脳が理解した瞬間。一瞬思考が消し飛んだ。
気が付けば男の顔面目がけて拳を放っていた……だが。
「手荒な真似は止めて欲しいな。事情を察すれば仕方のない事は分かるが」
「……ッ!?」
衝撃音。
俺が思わず放った拳は男の掌に止められ、男はその手で俺の拳を握り、何かしらの魔術を発動してくる。
そして拳を中心に右腕全体に激痛が走り、拳を解放された俺は思わずその場で膝を付いた。
「ぐあ……ッ!」
「栄治!」
そして男は自身に刃が向けられているにも関わらず、涼しい顔をして言う。
「しかしまったく、予定が狂った。私はキミ達を味方する素性不明の謎の男として立ち回ろうと思ったのに。こうなってしまっては折角考えたプランはもう使えないな」
男はそんな風に自分が一連の犯人である事を明言するような事を口にする。
「何が目的なのかな? 私達の所に来た理由も、なんで精霊を暴走させるような真似をしているのかも……解決策も。全部吐いてもらう」
「私はそうした情報をキミ達に伝えるために此処に来た。だからそれを話す為の場も用意しているよ。此処で争う気はない。武器を下ろして私に付いて来てくれると助かる」
「なんでそっちが主導権を握ろうとしてるのかな?」
そして俺も右腕を抑えながら俺は立ち上がり、構えを取る。
「……てめぇが元凶か」
右腕の激痛で一拍空けて、少し冷静さを取り戻して。
取り戻したうえで目の前の男に対する殺意が沸いてきた。
何の目的でコイツが動いているのかは知らない。俺達に接触してきた理由も、そもそも精霊を暴走させている理由も。何も知らない……だけどだ。
コイツが原因だ。
エルを苦しめている元凶だ。
ナタリア達を死なせた元凶だ。
「まあ握れるものなら握って連れ帰り拷問でもしてみるがいい。そちらの戦力や状況を把握して態々キミ達の前に立つ人間から主導権を奪えるようならな」
そしてそんな事を言った後、付け加えるように男は言う。
「もっとも……約一名ノリ気ではないようだが」
その言葉に思わず反応して誠一の方に一瞬視線を向ける。
確かに誠一は呪符を手に構えてはいるものの、あろうことかそこに戦意が見えてこない。
そして誠一は言う。
「茜、刀を下げろ。エイジ、お前もだ」
その言葉はまるで目の前の男の言葉に素直に従おうとする様な、そんな言葉だった。
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