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七章 白と黒の追跡者
10 孤立無援では無かったという話
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そうやって簡単な再開の言葉を送り会う俺達だったが、その先の言葉は互いに続かない。
結局俺も彼女達にどんな言葉を掛けていいのかが分からなくて、それは彼女達もまた同じ事なのかも知れない。
だけどそれは即ち、本来精霊が人間に反射的に向けてもおかしくない罵詈雑言という選択肢が彼女達の中に存在しなくなっているという事だ。
やがて中々誰も話を切り出せないでいると、間を取り持つ様にエルがハスカに言う。
「ハスカさんが言ってた絶界の楽園じゃない場所って此処の事だったんですね」
かつての会話を掘り起こす様にエルがそう言うと、ハスカがそれに頷く。
「そうね。此処が私達の目指していた場所って事になる。……実際に絶界の楽園の真相を聞いてから思い返せば、あの時の私達が選べた選択肢では1番の正解だったのかな」
「そうだな。お前たちの選択が結果的に最善だったよ」
俺はハスカの言葉に頷く。
「信じてくれるかは分からないけど、あの後俺達は無事絶界の楽園に辿り着いて……後はレベッカが言っていた通りだ。絶界の楽園は精霊が生きられる環境じゃなかった。俺はそんな所にみんなを連れていっちまったんだ」
正直、不安だった。
レベッカからは大丈夫だと言われた。向けられている視線も以前と比べればずっと優しくて、彼女達の中で瀬戸栄治という人間の存在のあり方が変わってくれている事は明白で。
それでも信じてもらえるかは分からなくて。
そして例え信じてもらえたとしても。俺達が絶界の楽園にたどり着いたのだと信じてもらえたとしても、それでもそんな所に連れていった人間に対して、碌な視線を向けてくれる気がしなくて。
少しでもいい方に変わってくれた感情が脆く壊れてしまうんじゃないかと。精霊加工工場の地下で向けられた様な視線に逆戻りするんじゃないかと。
……だけど
「……信じるよ。少なくとも今アンタの周りに集まっている私達は」
実際に口にしてみればあっさりと信じてもらえて、そしてその視線が変わる事は無い。
「……」
「……皆程度は違う。私はそうじゃないけどやっぱりアンタの事は怖いと思う子もいるし、人間だから嫌悪感を抱く子だっている。だけど……アンタがそういう事をする人じゃないって程度には皆思ってるよ。実際皆アンタが何の見返りもなく私達を助けてくれたって事実は、否定したくても否定できなかったわけだしさ」
「……ッ」
「まあそんな訳だから」
そしてハスカは一拍明けてから言う。
「こんな事がアンタ達への恩返しになるのかは分からないけれど、少なくともこの場所では私達はアンタの味方でいてあげる」
そしてハスカのそんな発言に同調するように、周囲の精霊達が頷いた。
「ね? 言ったでしょ? 皆信用してくれるって」
「……ああ」
レベッカの言葉に頷く。
……異世界での戦いは孤立無援だってずっと思っていたのに、まさかこんな事になるなんてな。
嘘みてえな話だけど。都合が良いにも程があるかもしれないけれど。
それでも、これが今目の前に広がっている現実だ。
「エルも無事でよかった」
ハスカは次にエルにそう告げる。
「私達はアンタ達が絶界の楽園にたどり着いていたら、皆死んじゃってるんじゃないかって思ってたからさ」
「……どうも人間と契約を結んでいる精霊にはあの世界での暴走に耐性が付くみたいで。後は色々危なかったんですけど、エイジさんが必死になって助けてくれましたから」
「へぇ……良かったらアンタ達の話、色々聞かせてよ」
ハスカがそんな事を言い始める。
「よく考えたら私達はアンタ達の事をろくに知らないし……知っておきたい事だって色々あるから」
「知っておきたい事?」
「例えば絶界の楽園の話」
「……そんなもん聞いてどうすんだよ」
「アンタがレベッカが言ってた人間なら、それは即ち絶界の楽園はアンタの故郷って事になるでしょ」
「ちょっと待ってください!」
エルが何かに気付いた様に話を止めに入る。
「別にエイジさんはあの世界で精霊が暴走するって知っていて皆を連れていった訳じゃありませんから!」
……エルはフォローを入れるようにそう言う。
……そうだ。俺が絶界の楽園に皆を連れていった。
そこに悪意は無かった。
そう思っていてもだ。
レベッカの口から先の説明で、俺が絶界の楽園で出会った人間だと紹介されている。それは即ち自分の出身地、精霊が暴走する地球に精霊を誘ったと言っても過言ではない。
だから今のハスカの言葉の先に続くのが、単なる好奇心の話で俺に対する敵意の様な物では無いとしても、今の発言で誤解を抱いて俺に嫌悪感を向ける精霊がいてもおかしくない。
エルがすかさずフォローを入れてくれた事も頷ける。
俺は自然とレベッカの方に視線を向けた。散々大丈夫だと言っておいて、なんというかレベッカ自身が凄い墓穴を掘っている形になってるんだけど、それでもレベッカが涼しい顔をしていればそれも計算の内だと思えるのだけれど……嘘だろ? なんか墓穴掘ったぁって表情浮かべてるんだけど。
……だけど俺やエルの心配は杞憂だったのかもしれない。
エルのフォローに精霊達から特に反応は無く、場が少し静まり返っただけだった。
そして代表するようにハスカが言う。
「……確かにアンタは絶界の楽園出身で、他ならぬ暴走した精霊にこの世界に飛ばされて来た。だけど……所詮絶界の楽園なんて私達がそう読んでいるだけで、その辿りつく場所がアンタの世界かどうかなんてわからない。向こうにいる精霊がどうかは分からないけど、今更私達はそんな上げ足取り見たいな真似はしない」
「……ハスカ」
「いやぁ、よかったね」
「墓穴掘った人が感慨深そうな事言わないでくださいよ。さっき色々言っちゃったんですから、いつ向こうの精霊に変な事思われるか分からないじゃないですか」
「ハハハ。こりゃ私達だけでも味方にできて良かったかもしれないね。フォロー一つにしても色々と手伝える」
エルとレベッカのやり取りに笑ってそう言ったハスカは、話の軌道を戻すように言う。
「さて、まあ別に私はアンタを責める為にこんな話を振ったわけじゃないんだ。純粋にアンタ達のこれまでの事も知りたかったのもあるし、それに……絶界の楽園について気になる事があってさ」
「気になる事?」
「……アンタは明らかに他の人間とは違う。そんなアンタは絶界の楽園の住人だった訳でしょ」
「そうだけど……それがどうかしたか?」
「ただアンタみたいなおかしな人間がいる世界ってさ、つまりはみんなそんな風なんじゃないかって。明らかにこの世界で浮いてるアンタが溶け込める様な世界なんじゃないかって」
そしてハスカは意図していなかっただろうが、確信を口にする。
「だから……何かの因果で精霊が暴走するようになっていたけど、本当にアンタの世界は精霊にとっての楽園なんじゃないかって。だからこそ絶界の楽園なんて噂が広まったんじゃないかって。そんな馬鹿みたいな事、少し真面目に考えてるんだ」
「……」
……その通りだ。
元々人間と精霊は手を取りあっていて、精霊が暴走するようになっているのも苦渋の選択で。
……今本当にそんな楽園にする為に。俺が無事エルを連れて帰れるように必死になって戦ってくれている人間が、親友たちがいて。
だからきっとこの酷く醜い世界と比べれば、地球は精霊にとっての楽園だ。
「馬鹿みたいな話じゃないです」
そう言ったのは、実際にその世界で一か月生活してきたエルだ。
「向こうの世界の人間はこの世界の人間とはまるで違いますよ。本当にいい人ばかりで……精霊の私が人間の親友を作っちゃう位には」
それに、とエルは続ける。
「今私がこうして生きていられるのも、あの世界の人達が助けてくれたからなんです」
「へぇ……精霊のアンタがそこまで言うなら相当だね」
ハスカはその言葉を信じきってはいないだろうけど、それでも否定する事なくそう答え、俺はエルの言葉に付け足す様に言う。
「で、今向こうで俺達を助けてくれた連中が、精霊が暴走しないような世界にするために動いてくれている。それがうまくいけば……きっとお前らにとってはこの世界よりも良いところになる筈だ」
「それがうまくいったら迎えに来てもらうんです」
「迎え……それでその迎えが来るまで身を隠すためにこの森に来たって訳か。なるほどね」
そう言ったハスカは、一拍空けてから言う。
「なら頑張って生き残らないとね。さっきも言ったけど、協力できることは協力するよ。元々その迎えが来るまで生き残るのを難しくした原因は私達にあるんだからさ」
「気にすんなよ。別にお前らのせいじゃないから。誰が悪いかって言えばこの世界の人間だし、行動を決めたのだって俺だからな。あの件に精霊の落ち度なんてのは何もねえ」
そんなやり取りを交わした時だった。
「あの……」
精霊の一人が恐る恐るという風に手を上げて俺に声を描けてきた。
「どうした?」
「その……えーっと、迎えが来るんですよね」
「ああ。いつになるかはわかんねえけどな」
俺がその精霊にそう答えると、精霊はやはり恐る恐るという風に俺に問いかけてくる。
それはある意味精霊にとっては勇気ある選択だっった
「もしよければでいいんです……連れていってほしいんです。私も一緒に」
精霊にとって人間という存在が嫌悪すべき存在だという事は百も承知だ。
そして目の前の精霊が仮に俺に信頼を向けてくれていたとして、それでも俺の世界の他の人間にはいくらまともだという説明があっても近づきがたい存在の筈だ。
だけど目の前の精霊は選んだんだ。
絶界の楽園というその実情が不確定な世界では無く……少なくとも開示された情報では人間の世界である事が確定している世界に渡る事を。
結局俺も彼女達にどんな言葉を掛けていいのかが分からなくて、それは彼女達もまた同じ事なのかも知れない。
だけどそれは即ち、本来精霊が人間に反射的に向けてもおかしくない罵詈雑言という選択肢が彼女達の中に存在しなくなっているという事だ。
やがて中々誰も話を切り出せないでいると、間を取り持つ様にエルがハスカに言う。
「ハスカさんが言ってた絶界の楽園じゃない場所って此処の事だったんですね」
かつての会話を掘り起こす様にエルがそう言うと、ハスカがそれに頷く。
「そうね。此処が私達の目指していた場所って事になる。……実際に絶界の楽園の真相を聞いてから思い返せば、あの時の私達が選べた選択肢では1番の正解だったのかな」
「そうだな。お前たちの選択が結果的に最善だったよ」
俺はハスカの言葉に頷く。
「信じてくれるかは分からないけど、あの後俺達は無事絶界の楽園に辿り着いて……後はレベッカが言っていた通りだ。絶界の楽園は精霊が生きられる環境じゃなかった。俺はそんな所にみんなを連れていっちまったんだ」
正直、不安だった。
レベッカからは大丈夫だと言われた。向けられている視線も以前と比べればずっと優しくて、彼女達の中で瀬戸栄治という人間の存在のあり方が変わってくれている事は明白で。
それでも信じてもらえるかは分からなくて。
そして例え信じてもらえたとしても。俺達が絶界の楽園にたどり着いたのだと信じてもらえたとしても、それでもそんな所に連れていった人間に対して、碌な視線を向けてくれる気がしなくて。
少しでもいい方に変わってくれた感情が脆く壊れてしまうんじゃないかと。精霊加工工場の地下で向けられた様な視線に逆戻りするんじゃないかと。
……だけど
「……信じるよ。少なくとも今アンタの周りに集まっている私達は」
実際に口にしてみればあっさりと信じてもらえて、そしてその視線が変わる事は無い。
「……」
「……皆程度は違う。私はそうじゃないけどやっぱりアンタの事は怖いと思う子もいるし、人間だから嫌悪感を抱く子だっている。だけど……アンタがそういう事をする人じゃないって程度には皆思ってるよ。実際皆アンタが何の見返りもなく私達を助けてくれたって事実は、否定したくても否定できなかったわけだしさ」
「……ッ」
「まあそんな訳だから」
そしてハスカは一拍明けてから言う。
「こんな事がアンタ達への恩返しになるのかは分からないけれど、少なくともこの場所では私達はアンタの味方でいてあげる」
そしてハスカのそんな発言に同調するように、周囲の精霊達が頷いた。
「ね? 言ったでしょ? 皆信用してくれるって」
「……ああ」
レベッカの言葉に頷く。
……異世界での戦いは孤立無援だってずっと思っていたのに、まさかこんな事になるなんてな。
嘘みてえな話だけど。都合が良いにも程があるかもしれないけれど。
それでも、これが今目の前に広がっている現実だ。
「エルも無事でよかった」
ハスカは次にエルにそう告げる。
「私達はアンタ達が絶界の楽園にたどり着いていたら、皆死んじゃってるんじゃないかって思ってたからさ」
「……どうも人間と契約を結んでいる精霊にはあの世界での暴走に耐性が付くみたいで。後は色々危なかったんですけど、エイジさんが必死になって助けてくれましたから」
「へぇ……良かったらアンタ達の話、色々聞かせてよ」
ハスカがそんな事を言い始める。
「よく考えたら私達はアンタ達の事をろくに知らないし……知っておきたい事だって色々あるから」
「知っておきたい事?」
「例えば絶界の楽園の話」
「……そんなもん聞いてどうすんだよ」
「アンタがレベッカが言ってた人間なら、それは即ち絶界の楽園はアンタの故郷って事になるでしょ」
「ちょっと待ってください!」
エルが何かに気付いた様に話を止めに入る。
「別にエイジさんはあの世界で精霊が暴走するって知っていて皆を連れていった訳じゃありませんから!」
……エルはフォローを入れるようにそう言う。
……そうだ。俺が絶界の楽園に皆を連れていった。
そこに悪意は無かった。
そう思っていてもだ。
レベッカの口から先の説明で、俺が絶界の楽園で出会った人間だと紹介されている。それは即ち自分の出身地、精霊が暴走する地球に精霊を誘ったと言っても過言ではない。
だから今のハスカの言葉の先に続くのが、単なる好奇心の話で俺に対する敵意の様な物では無いとしても、今の発言で誤解を抱いて俺に嫌悪感を向ける精霊がいてもおかしくない。
エルがすかさずフォローを入れてくれた事も頷ける。
俺は自然とレベッカの方に視線を向けた。散々大丈夫だと言っておいて、なんというかレベッカ自身が凄い墓穴を掘っている形になってるんだけど、それでもレベッカが涼しい顔をしていればそれも計算の内だと思えるのだけれど……嘘だろ? なんか墓穴掘ったぁって表情浮かべてるんだけど。
……だけど俺やエルの心配は杞憂だったのかもしれない。
エルのフォローに精霊達から特に反応は無く、場が少し静まり返っただけだった。
そして代表するようにハスカが言う。
「……確かにアンタは絶界の楽園出身で、他ならぬ暴走した精霊にこの世界に飛ばされて来た。だけど……所詮絶界の楽園なんて私達がそう読んでいるだけで、その辿りつく場所がアンタの世界かどうかなんてわからない。向こうにいる精霊がどうかは分からないけど、今更私達はそんな上げ足取り見たいな真似はしない」
「……ハスカ」
「いやぁ、よかったね」
「墓穴掘った人が感慨深そうな事言わないでくださいよ。さっき色々言っちゃったんですから、いつ向こうの精霊に変な事思われるか分からないじゃないですか」
「ハハハ。こりゃ私達だけでも味方にできて良かったかもしれないね。フォロー一つにしても色々と手伝える」
エルとレベッカのやり取りに笑ってそう言ったハスカは、話の軌道を戻すように言う。
「さて、まあ別に私はアンタを責める為にこんな話を振ったわけじゃないんだ。純粋にアンタ達のこれまでの事も知りたかったのもあるし、それに……絶界の楽園について気になる事があってさ」
「気になる事?」
「……アンタは明らかに他の人間とは違う。そんなアンタは絶界の楽園の住人だった訳でしょ」
「そうだけど……それがどうかしたか?」
「ただアンタみたいなおかしな人間がいる世界ってさ、つまりはみんなそんな風なんじゃないかって。明らかにこの世界で浮いてるアンタが溶け込める様な世界なんじゃないかって」
そしてハスカは意図していなかっただろうが、確信を口にする。
「だから……何かの因果で精霊が暴走するようになっていたけど、本当にアンタの世界は精霊にとっての楽園なんじゃないかって。だからこそ絶界の楽園なんて噂が広まったんじゃないかって。そんな馬鹿みたいな事、少し真面目に考えてるんだ」
「……」
……その通りだ。
元々人間と精霊は手を取りあっていて、精霊が暴走するようになっているのも苦渋の選択で。
……今本当にそんな楽園にする為に。俺が無事エルを連れて帰れるように必死になって戦ってくれている人間が、親友たちがいて。
だからきっとこの酷く醜い世界と比べれば、地球は精霊にとっての楽園だ。
「馬鹿みたいな話じゃないです」
そう言ったのは、実際にその世界で一か月生活してきたエルだ。
「向こうの世界の人間はこの世界の人間とはまるで違いますよ。本当にいい人ばかりで……精霊の私が人間の親友を作っちゃう位には」
それに、とエルは続ける。
「今私がこうして生きていられるのも、あの世界の人達が助けてくれたからなんです」
「へぇ……精霊のアンタがそこまで言うなら相当だね」
ハスカはその言葉を信じきってはいないだろうけど、それでも否定する事なくそう答え、俺はエルの言葉に付け足す様に言う。
「で、今向こうで俺達を助けてくれた連中が、精霊が暴走しないような世界にするために動いてくれている。それがうまくいけば……きっとお前らにとってはこの世界よりも良いところになる筈だ」
「それがうまくいったら迎えに来てもらうんです」
「迎え……それでその迎えが来るまで身を隠すためにこの森に来たって訳か。なるほどね」
そう言ったハスカは、一拍空けてから言う。
「なら頑張って生き残らないとね。さっきも言ったけど、協力できることは協力するよ。元々その迎えが来るまで生き残るのを難しくした原因は私達にあるんだからさ」
「気にすんなよ。別にお前らのせいじゃないから。誰が悪いかって言えばこの世界の人間だし、行動を決めたのだって俺だからな。あの件に精霊の落ち度なんてのは何もねえ」
そんなやり取りを交わした時だった。
「あの……」
精霊の一人が恐る恐るという風に手を上げて俺に声を描けてきた。
「どうした?」
「その……えーっと、迎えが来るんですよね」
「ああ。いつになるかはわかんねえけどな」
俺がその精霊にそう答えると、精霊はやはり恐る恐るという風に俺に問いかけてくる。
それはある意味精霊にとっては勇気ある選択だっった
「もしよければでいいんです……連れていってほしいんです。私も一緒に」
精霊にとって人間という存在が嫌悪すべき存在だという事は百も承知だ。
そして目の前の精霊が仮に俺に信頼を向けてくれていたとして、それでも俺の世界の他の人間にはいくらまともだという説明があっても近づきがたい存在の筈だ。
だけど目の前の精霊は選んだんだ。
絶界の楽園というその実情が不確定な世界では無く……少なくとも開示された情報では人間の世界である事が確定している世界に渡る事を。
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