431 / 431
七章 白と黒の追跡者
ex 醜悪の塊
しおりを挟む
(……ボクの勝ちだ、ルミア)
今の一撃でルミアを殺害できたかどうかは分からない。
だけどまず間違いなく、決定的な一撃は入れる事ができた。
仮に生きていても、もはや戦闘を続行できる状態ではない筈。
そして結論。
「……こんな、大怪我負うの……多分初めて……だなぁ」
視界の先、ルミア・マルティネスはまだ立っていた。
シオンの一撃を辛うじて防ぎ切ったのだ……そう、辛うじて。
(殺しきれなかったか……でも戦闘能力は大幅に削った)
ルミアは五体満足なものの全身血塗れで、なんとか気合で立っていると言っても過言ではないという状態だった。
……少なくともある程度怪我の治療を行わなければ、元の様には動けない。
そしてそれを待つ義理も無く、元より終わらせるつもりだったのだから新たに言葉を紡ぐつもりも無い。
追撃。
次の攻撃でトドメを刺す。
そう考えてシオンが精霊術と魔術を構築し始めた次の瞬間だった。
突然天井付近から轟音が鳴り響く。
(……なんだ?)
意識のいくらかをその音と衝撃の方に割く。
次の瞬間、天井の一部が砕かれ何かが降ってきた。
そして視界の先、これからトドメを刺そうとしていたルミアは静かに笑みを浮かべる。
「……いや、なんかいい手は無いかって思ったけど、そうだこれが有ったよ。こんなゴミは今の私達の足元にも及ばないけど……シオン君には効果抜群だよね」
そんな言葉と共に、落下してきた何かは床に着地する。
「……ッ!」
その何かは人の形をしていた。
否、精霊の形をしていた。
ただその姿は、一目見ただけで嫌悪感で吐きそうになるような物だった。
「ああ、冷静に考えたらシオン君を殺すのが今で良かった。これはシオン君に見てもらわないとね」
「ルミア……お前……!」
その精霊は、酷く歪だった。
繋がった四肢それぞれが、明らかに一個人の物ではない。
それどころか全身、少なくとも目視できるだけでも別の何かが組み合わせられているように思えた。
そしてそんな存在が一体何なのかを、シオン・クロウリーは知っている。
「お前自分が何をやったのか分かっているのか!」
「ん? 分かってるよ。精霊のキメラを作ったんだ」
そんな事を……そんな吐き気を催す程不快な事を、ルミアは平然と笑って言って。
それから……どうしようもない程に至極真っ当な言葉をシオンに投げかける。
「で、シオン君はなんで第三者みたいな反応をしているのかな? それは通らないでしょ、キミは加害者側だよ」
そして楽しそうに、本当に楽しそうにルミアは言う。
「この私でも頭おかしいって思うような研究を99パーセント。完成間近まで進めていたのはキミだよね……シオン・クロウリー君」
今の一撃でルミアを殺害できたかどうかは分からない。
だけどまず間違いなく、決定的な一撃は入れる事ができた。
仮に生きていても、もはや戦闘を続行できる状態ではない筈。
そして結論。
「……こんな、大怪我負うの……多分初めて……だなぁ」
視界の先、ルミア・マルティネスはまだ立っていた。
シオンの一撃を辛うじて防ぎ切ったのだ……そう、辛うじて。
(殺しきれなかったか……でも戦闘能力は大幅に削った)
ルミアは五体満足なものの全身血塗れで、なんとか気合で立っていると言っても過言ではないという状態だった。
……少なくともある程度怪我の治療を行わなければ、元の様には動けない。
そしてそれを待つ義理も無く、元より終わらせるつもりだったのだから新たに言葉を紡ぐつもりも無い。
追撃。
次の攻撃でトドメを刺す。
そう考えてシオンが精霊術と魔術を構築し始めた次の瞬間だった。
突然天井付近から轟音が鳴り響く。
(……なんだ?)
意識のいくらかをその音と衝撃の方に割く。
次の瞬間、天井の一部が砕かれ何かが降ってきた。
そして視界の先、これからトドメを刺そうとしていたルミアは静かに笑みを浮かべる。
「……いや、なんかいい手は無いかって思ったけど、そうだこれが有ったよ。こんなゴミは今の私達の足元にも及ばないけど……シオン君には効果抜群だよね」
そんな言葉と共に、落下してきた何かは床に着地する。
「……ッ!」
その何かは人の形をしていた。
否、精霊の形をしていた。
ただその姿は、一目見ただけで嫌悪感で吐きそうになるような物だった。
「ああ、冷静に考えたらシオン君を殺すのが今で良かった。これはシオン君に見てもらわないとね」
「ルミア……お前……!」
その精霊は、酷く歪だった。
繋がった四肢それぞれが、明らかに一個人の物ではない。
それどころか全身、少なくとも目視できるだけでも別の何かが組み合わせられているように思えた。
そしてそんな存在が一体何なのかを、シオン・クロウリーは知っている。
「お前自分が何をやったのか分かっているのか!」
「ん? 分かってるよ。精霊のキメラを作ったんだ」
そんな事を……そんな吐き気を催す程不快な事を、ルミアは平然と笑って言って。
それから……どうしようもない程に至極真っ当な言葉をシオンに投げかける。
「で、シオン君はなんで第三者みたいな反応をしているのかな? それは通らないでしょ、キミは加害者側だよ」
そして楽しそうに、本当に楽しそうにルミアは言う。
「この私でも頭おかしいって思うような研究を99パーセント。完成間近まで進めていたのはキミだよね……シオン・クロウリー君」
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(4件)
あなたにおすすめの小説
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
自力で帰還した錬金術師の爛れた日常
ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」
帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。
さて。
「とりあえず──妹と家族は救わないと」
あと金持ちになって、ニート三昧だな。
こっちは地球と環境が違いすぎるし。
やりたい事が多いな。
「さ、お別れの時間だ」
これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。
※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。
※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。
ゆっくり投稿です。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる
家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。
召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。
多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。
しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。
何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
バタバタして少し置いていた間に、凄い更新されてる!?
一昨日、未読話を一気読みして更新まだかなと、楽しみにしています😆 なんか盛大なフラグを立てている気が(笑)
58万字かあ……Web小説だからしょうがないけど、ちょっと多いな。
10万字に区切りを入れて外部のコンテストに応募してみたらどう?荒削りな作品だけど、二か月ぐらい修正したら、良い作品になれるかもしれない(そこは本人の努力次第)
そして軽くアドバイスするのなら、一人称ばっかで進めずに神視点を入れるべき。——こういう感じで2か月はかかる……
ご意見ありがとうございました。
10万文字で区切りを入れてとのお話ですが、この作品は公募用ではなくweb小説という実質無制限の尺でやりたい事をやる為に書いてる作品なので、そういう形を取るつもりはないですね。多分完結は200万文字位になると思います。
神視点の件ですが、個人的に可能ならば視点は統一すべきだと考えてます。一人称なら一人称。三人称なら三人称で。三人称にするにしても客観視点か多元視点かのどちらかという風に混在させない方が良いという考えです。
それでも多元視点ならば1シーンに一人の視点、感情を書くという点が一人称と一致している為、混ぜてもなんとかなるとは思いますが、神視点はそれらとは完全に視点の位置が変わる為、統一感の欠落や読者の混乱を招くと自分は考えています。そうしなければならないギミックなどがあれば話は別ですし、それで成功している作品もあるのかもしれませんが、そもそも一人称メインで視点のブレを作るのもあまり好ましくない事を考えると、それは逆に入れてはならないのではないかと考えています。持論です。すみません。
ともあれ、こうして意見を頂けるのは貴重なので嬉しいです。ありがとうございます。
今後とも気になる点などございましたら、反映できるかどうかは分かりませんが、頂けるとうれしいです。
ありがとうございました。
久しぶりにファンタジーでそれなりの量が更新されているものを読みたくなってこちらにたどり着きました!!
少し様子見にきたのですが、好みのストーリーで一気に読んでしまいそうです笑
これからも応援してます!!
感想ありがとうございます!
長い作品ですが、これからも応援よろしくお願いします!