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ロリアース邸では、叔父さん、つまりヒューゴの父ヴィクトル・ウェップからの頼みということもあり、クラリッサの両親であり大叔父と大叔母にあたる男爵夫妻が快く歓迎してくれた。
祖父の弟だった大叔父は婚期が遅く、大叔母は僕の父に近いくらいの歳だった。
とはいえ夫婦仲は良好なようで、クラリッサの脳内がお花畑なのも納得いった。
クラリッサを避けるために、パーティーなどで顔を合わせても簡単に挨拶を交わす程度の関係だったが、絶えず満面の笑みを向けてくれる人たちだった。
「しかし偉いなセオドア卿もヒューゴ卿も。こうやって慈善活動に力を入れて自ら動くなんて。お父さんたちも鼻高々だろう。」
男爵がはっはっはっと笑えば、歩きながら揺れていた膨らんだ下腹がさらに大きく揺れた。
物置となっているらしい空き部屋に向かう途中で、腹の重みで倒れるのではないかと心配になる。
「いえ、こうして団体を運営できているのも、皆さんのご協力あってこそです。大叔父さんにもこうして不用品を譲ってもらえて、とても感謝しています。」
「ほっほっほっ!こちらこそ部屋が片付いてありがたいよ。」
そう言いながら、辿り着いた部屋の鍵穴に鍵を差し込んでがちゃりと回した。そして戸を開く。
「がらくたばかりだが大丈夫かい?」
幽霊のように布を被った家具や調度品が並んでいる。
ヒューゴが近くのテーブルの布をひらりとめくり、「全然がらくたじゃないですよ。」と歯を見せた。
埃っぽいが、物自体の状態は悪くなさそうだ。
立派な大物は孤児院に送り、修繕できそうな物は修繕、ぼろぼろの物は分解して部品を売る。
貧民層の者たちを雇って行ってもらう仕事になるので、僕達としてはどんな物でも大歓迎だった。
「助かります。ところで、少し人手をお借りしてもいいですか?」
「ほっほっほっ、かまわんよ。ずいぶん少人数だなと思っていたんだ。」
それもそのはず。物を運び出すというのに、大きい荷馬車はあるものの、それを運ぶ者は見知らぬ給仕を見たという4人の使用人しか連れてきていない。
そうしてロリアース家の使用人たちを見せてもらう計画なのだ。
「すみません。ご存知の通りうちが大変な時なので、僕の手伝いよりも母を優先して欲しくて、ほとんど置いてきたんです。」
「侯爵夫人か。心配だな。クラリッサも邪魔になっていないと良いが。」
表情を曇らせる大叔父に、少しかまをかけてみる。
「気心の知れたクラリッサが来てくれて、父も喜んでいました。ありがとうございます。」
気心もなにも、恋心すら気づいてもらえていなかったが。
さて、親密そうな雰囲気を聞いて、はたして大叔父は喜ぶのか否か。
「それならいいが、あの子は少し甘やかしてしまったところがあるから。こうやっていつまでも心配してしまうから、あの子もいつまでも子供から抜け出せないのかもしれないな。」
苦笑を浮かべる大叔父に、他意はなさそうだった。
というか、この人もクラリッサが父を好きなことに気がついていないのではないだろうか。
少し呆れたが、マリアのことを考えると、娘というのは父親に恋心を隠すものなのかもしれない。
マリアを思い出し、小さなため息が零れた。
ロリアース家は、少なくとも大叔父は白かもしれないと、なんだか肩の力が抜けた。
大叔父に呼ばれた使用人たちと、僕が連れて来た使用人たちで、不用品を運び出す作業が始まった。
僕とヒューゴは時々気になった家具や調度品の説明を大叔父に聞きながら、その様子を見守った。
大叔父が気を利かせてくれて、割とたくさんの使用人を集めてくれたが、僕が連れて来た4人からは、いないというアイコンタクトしか送られてこなかった。
無駄足だったか。そう思い、僕とヒューゴは目を見合わせて肩を竦めた。
作業が終盤にさしかかると、大叔母が登場し、サロンに誘われた。
お茶とお菓子を用意したから休憩していってくれとのことで、僕とヒューゴは遠慮なくいただくことにした。
祖父の弟だった大叔父は婚期が遅く、大叔母は僕の父に近いくらいの歳だった。
とはいえ夫婦仲は良好なようで、クラリッサの脳内がお花畑なのも納得いった。
クラリッサを避けるために、パーティーなどで顔を合わせても簡単に挨拶を交わす程度の関係だったが、絶えず満面の笑みを向けてくれる人たちだった。
「しかし偉いなセオドア卿もヒューゴ卿も。こうやって慈善活動に力を入れて自ら動くなんて。お父さんたちも鼻高々だろう。」
男爵がはっはっはっと笑えば、歩きながら揺れていた膨らんだ下腹がさらに大きく揺れた。
物置となっているらしい空き部屋に向かう途中で、腹の重みで倒れるのではないかと心配になる。
「いえ、こうして団体を運営できているのも、皆さんのご協力あってこそです。大叔父さんにもこうして不用品を譲ってもらえて、とても感謝しています。」
「ほっほっほっ!こちらこそ部屋が片付いてありがたいよ。」
そう言いながら、辿り着いた部屋の鍵穴に鍵を差し込んでがちゃりと回した。そして戸を開く。
「がらくたばかりだが大丈夫かい?」
幽霊のように布を被った家具や調度品が並んでいる。
ヒューゴが近くのテーブルの布をひらりとめくり、「全然がらくたじゃないですよ。」と歯を見せた。
埃っぽいが、物自体の状態は悪くなさそうだ。
立派な大物は孤児院に送り、修繕できそうな物は修繕、ぼろぼろの物は分解して部品を売る。
貧民層の者たちを雇って行ってもらう仕事になるので、僕達としてはどんな物でも大歓迎だった。
「助かります。ところで、少し人手をお借りしてもいいですか?」
「ほっほっほっ、かまわんよ。ずいぶん少人数だなと思っていたんだ。」
それもそのはず。物を運び出すというのに、大きい荷馬車はあるものの、それを運ぶ者は見知らぬ給仕を見たという4人の使用人しか連れてきていない。
そうしてロリアース家の使用人たちを見せてもらう計画なのだ。
「すみません。ご存知の通りうちが大変な時なので、僕の手伝いよりも母を優先して欲しくて、ほとんど置いてきたんです。」
「侯爵夫人か。心配だな。クラリッサも邪魔になっていないと良いが。」
表情を曇らせる大叔父に、少しかまをかけてみる。
「気心の知れたクラリッサが来てくれて、父も喜んでいました。ありがとうございます。」
気心もなにも、恋心すら気づいてもらえていなかったが。
さて、親密そうな雰囲気を聞いて、はたして大叔父は喜ぶのか否か。
「それならいいが、あの子は少し甘やかしてしまったところがあるから。こうやっていつまでも心配してしまうから、あの子もいつまでも子供から抜け出せないのかもしれないな。」
苦笑を浮かべる大叔父に、他意はなさそうだった。
というか、この人もクラリッサが父を好きなことに気がついていないのではないだろうか。
少し呆れたが、マリアのことを考えると、娘というのは父親に恋心を隠すものなのかもしれない。
マリアを思い出し、小さなため息が零れた。
ロリアース家は、少なくとも大叔父は白かもしれないと、なんだか肩の力が抜けた。
大叔父に呼ばれた使用人たちと、僕が連れて来た使用人たちで、不用品を運び出す作業が始まった。
僕とヒューゴは時々気になった家具や調度品の説明を大叔父に聞きながら、その様子を見守った。
大叔父が気を利かせてくれて、割とたくさんの使用人を集めてくれたが、僕が連れて来た4人からは、いないというアイコンタクトしか送られてこなかった。
無駄足だったか。そう思い、僕とヒューゴは目を見合わせて肩を竦めた。
作業が終盤にさしかかると、大叔母が登場し、サロンに誘われた。
お茶とお菓子を用意したから休憩していってくれとのことで、僕とヒューゴは遠慮なくいただくことにした。
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