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”親愛なるメンタム伯爵アーチボルド・カッソニア様
我々、100騎隊がネッサ領に足を踏み入れ、早くも1年が経とうとしています。
御領主であられる、ネッサ伯爵ハミルトン・シューリス様の御指示の元、着々と開拓も進み、今年の夏野菜は昨年の何倍もの収穫を見込めます。
豊かな自然と暖かな人々に囲まれ、充実した日々を過ごしており、多忙ゆえになかなかご連絡を差し上げることができなかったこと、深く謝罪申し上げます。
この度はお兄様の方から書信を頂き、大変痛み入ります。
そこで、今回の帰還命令についてなのですが、故郷を想う隊員たちは1年ぶりの帰郷に胸を弾ませております。しかしながら、全員が全員ではありません。
ネッサはこの1年で著しい改善を遂げましたが、まだまだ発展途上、領主様の目標水準には届いておりません。
よって、誠に勝手ながら、希望者数名はネッサ領に残り、その他の隊員を帰還させることと致します。
領主様にはすでに滞在許可を頂いておりますので、シューリス家へご迷惑をかけるご心配は不要です。
また、私の社交活動への参加を望んでおいでのようですが、私は望んではおりません。
有力家門との婚姻が、カッソニア家の女として最大の義務であることは重々承知しておりますが、私は私の道を歩もうと思っております。
手の届かぬ存在と理解しながら、ハミルトン・シューリス様に心を寄せてしまいました。今後は彼の騎士として、一生を捧げたいと考えております。
その為、私自身も、この度の帰還命令に背いてしまう事をどうかお許しください。
お母様、これまで血の繋がりもない私を優しく受け入れてくださり、誠にありがとうございました。至らぬ娘で申し訳ございません。
そして、アーチボルドお兄様、若くして爵位を継いだお兄様がお忙しいのは重々承知ですが、どうぞお体をご自愛ください。
敬意を込めて クリスタル・カッソニア”
我々、100騎隊がネッサ領に足を踏み入れ、早くも1年が経とうとしています。
御領主であられる、ネッサ伯爵ハミルトン・シューリス様の御指示の元、着々と開拓も進み、今年の夏野菜は昨年の何倍もの収穫を見込めます。
豊かな自然と暖かな人々に囲まれ、充実した日々を過ごしており、多忙ゆえになかなかご連絡を差し上げることができなかったこと、深く謝罪申し上げます。
この度はお兄様の方から書信を頂き、大変痛み入ります。
そこで、今回の帰還命令についてなのですが、故郷を想う隊員たちは1年ぶりの帰郷に胸を弾ませております。しかしながら、全員が全員ではありません。
ネッサはこの1年で著しい改善を遂げましたが、まだまだ発展途上、領主様の目標水準には届いておりません。
よって、誠に勝手ながら、希望者数名はネッサ領に残り、その他の隊員を帰還させることと致します。
領主様にはすでに滞在許可を頂いておりますので、シューリス家へご迷惑をかけるご心配は不要です。
また、私の社交活動への参加を望んでおいでのようですが、私は望んではおりません。
有力家門との婚姻が、カッソニア家の女として最大の義務であることは重々承知しておりますが、私は私の道を歩もうと思っております。
手の届かぬ存在と理解しながら、ハミルトン・シューリス様に心を寄せてしまいました。今後は彼の騎士として、一生を捧げたいと考えております。
その為、私自身も、この度の帰還命令に背いてしまう事をどうかお許しください。
お母様、これまで血の繋がりもない私を優しく受け入れてくださり、誠にありがとうございました。至らぬ娘で申し訳ございません。
そして、アーチボルドお兄様、若くして爵位を継いだお兄様がお忙しいのは重々承知ですが、どうぞお体をご自愛ください。
敬意を込めて クリスタル・カッソニア”
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