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40.ピレブという大臣
しおりを挟む成瀬:リーナ姫の部屋
ピレプが城に戻ってきて、数時間が経過した。あの電話以降、あいつから返事はこないけど、また何かしらの行動は起こすだろう。
「ねぇ姫様、ピレプっておっさんについて教えてくれない?」
ティーアがリーナ姫にこう言った。リーナ姫は分かりましたと言い、ピレプについて話し始めた。
ピレプは選挙で大臣になった男である。法律で大臣を決める時は、国民の選挙で行われる。
まぁ一部分は日本とちょっと似ている。ピレプは大臣になる前はどこかの会社の会長であり、経済面に関しての知識……まぁ簡単に言うとお金関係については知識がある。
しかし、会長時代から権力に対してかなり貪欲な姿勢を見せており、王の死後に彼が何らかの動きを見せるのではないかと皆が思っていた。
選挙だって、金で動かしたに違いないという。まぁそんな人が選挙で選ばれるなんて、きっと裏があるに決まっている。
「この前、父上が私に跡を頼むと言った直後、ピレプがそれに対して猛反対したのです。姫様はまだ若い、王という重荷を背負おうのは早すぎると」
「そして、自分を推薦したのですか?」
ヴァリエーレさんがこう聞くと、リーナ姫は頷いて返事をした。
「はい。私なら人生の経験がある。政治面でも知識がある。姫様より優れていると」
「自分で自分を褒める奴はバカしかいないですよ。何言っているのですかね? ピレプっておっさんは」
と、ティーアは笑いながらこう言った。
「はい。他の大臣も笑いながらこう言いました。ですが、これでピレプが王の座を狙っていることが分かりました」
「じゃあピレプがこの騒動の黒幕であることが確定しましたね」
「ですが、問題があります。ピレプが裏ギルド、クァレバと接触した証拠がありません。それがなければピレプを問い詰めることは難しいでしょう」
その後、皆は黙って考え始めた。その時、ドアからノック音が聞こえた。私とヴァリエーレさんは急いでリーナ姫の近くまで移動し、ティーアがドアに近付いてこう言った。
「誰ですか?」
「大臣のピレプです。リーナ姫に大事なお話があるので直接きました。今、部屋に入っても大丈夫でしょうか?」
「護衛がいますが大丈夫でしょうか?」
「構いません」
ティーアがリーナ姫に判断を任せると、リーナ姫はこう言った。
「どうぞ、お入りになってください」
「分かりました。失礼します」
その後、ドアが開き、肥満体系の中年男性が部屋に入ってきた。こいつがピレプだろう。
「すみません。急用がありますので直接参りました」
「急用ですか。一体どのようなご用件ですか?」
「実は、マサイモ魔力研究所が変な動きをしていると噂を耳にしました。もしかしたらと思い、ここへ参りました」
「マサイモ魔力研究所ですか。あそこはたまにおかしなものを作っていると噂ですが、変な動きは見せていないと思います」
「それはあなた様の偏見でございます。ああいう輩は裏で何かをしているに違いありません。父上……国王様はそれを見抜いていました。やはり、あなたは王には向いていません」
「ピレプ」
リーナ姫のこの一言で、周囲の空気が変わった。なんか、ピリッと張り詰めたような空気になった。
「確かに私は若い。ですが、必ず父上のような立派な王になります」
「これは忠告です。あなたのような若者が粋がっては王の仕事はできませんぞ」
「私のやり方でやりぬいて見せる。話は以上ですか?」
「は……はい。では失礼します」
リーナ姫の雰囲気に負けてか、ピレプはしょぼくれて部屋から去って行った。
「あんなおっさんよりも、リーナ姫が跡を継いだ方がいい国になると思うよ」
話を聞いていたティーアが、リーナ姫に近付いてこう言った。
ピレプは自室に戻り、金の用意をしていた。だが、リーナ姫に言われた言葉を思い出し、苦虫を噛んでいた。
「クソッ! どいつもこいつも私を見下しおって!」
苛立ちが頂点に達し、ピレプは手にした箱を地面に叩きつけた。だが、それでも彼の気持ちは収まらなかった。そんな時、携帯電話が鳴り響いた。相手は非通知だった。
「チッ、誰だ? こんな時に」
ピレプは舌打ちをし、電話を取った。
「もしもし?」
「俺だ、レッジだ」
電話の相手がレッジだと知り、ピレプは慌てて扉に鍵を付けた。
「どうかしましたか?」
「予定変更です。少しばかり姫の暗殺は遅れそうです」
「どうしてそんな……」
「野暮用が入りましてね。とりあえず金の支払いはいいです。しかし……」
「しかし……何です?」
「あんたに頼みごとがある。嫌とは言わせない」
「何ですかそれは?」
「今後の姫の予定を教えてくれ」
「姫の予定を?」
「そうだ。もしどこかへ出かけるとすれば、暗殺のチャンスができる可能性がある。もし分からない場合は早急に調べろ。三時間後にまた電話を入れる。もし出なかった場合は依頼放棄とみなす」
「分かった! 今から調べてくる!」
「そうだ。いいか? 三時間後にまた電話を入れるからな。ではまた会おう」
その後、電話は切れた。
「こうしちゃいられん……」
ピレプは急いで部屋を片付け、予定を聞きに部屋から出て行った。
成瀬:王の部屋
私たちはリーナ姫と共に、王様の様子を見に部屋へ向かった。大きくて広い部屋の中央には、具合の悪そうなおじいさんがベッドの上で眠っていた。
「父上……」
「おお……リーナか……」
王様は咳をしながら、リーナ姫に腕を伸ばした。その腕は弱弱しく震えていて、しわが多い。
「暗殺……されていないようだな……」
「はい。ナルセ様たちの護衛のおかげです」
王様は私たちの方を見ると、ゆっくりと頭を下げた。
「娘のために……申し訳ない……」
「いえいえ、もったいないお言葉です」
私は慌てながら笑顔でこう言った。ヴァリエーレさんもティーアも慌てていた。流石に大きな王国の王様に褒められると緊張するな~。
「すまない……リーナが王の跡を継ぐまで……娘を……見守ってくれ……」
「はい。必ず守ります」
「うむ」
その後、私たちは王様の部屋を出て、リーナ姫の部屋に戻ろうとした。その時、ピレプが慌てながら走っていたのを見かけた。ピレプは私たちに気付かず、そのままどこかへ行ってしまった。
「何かあったのかな、あのおっさん?」
ティーアは少し、ピレプのことが気になったようだ。少し考えた様子を見せた後、ティーアは私とヴァリエーレさんにこう言った。
「私、様子を見てくる。先に行って」
そう言うと、ティーアはピレプの後を追って行った。
剣地:城から離れた平原
城から出て数時間は経過しただろうな。端末に映っている地図を見て移動しているが、アジトまでまだ距離がある。
「うわー、まだ歩くねー」
ルハラが俺の横に立ち、端末を覗いた。
「城から二日かかるって言っていたな」
「なぁケンジ、お前……あれのことを忘れてないか?」
と、ヴィルソルが言った。俺にはそのことが何なのか分からなかった。
「忘れたのか? シリヨク王国での革命後、バイクを貰っただろうが」
「あ! そうだった! あれがあったか!」
バイクの存在を思い出した俺は、インフィニティポーチにしまったバイクを出し、エンジンをかけた。よし、絶好調のようだ。
「我は空を飛んで移動する。ルハラを乗せて走るがいい」
「オッケー! ルハラ、準備はいいか?」
「いつでもいいよ、ダーリン」
ルハラが俺の後ろに乗り、しがみついた。俺はエンジンをふかし、ヴィルソルにこう言った。
「行くぜ! さっさとアジトを潰して皆の所に戻ろう!」
「そうじゃな!」
「レッツゴー」
その後、俺たち三人は、クァレバのアジトへ向かって走り出した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あとがき
お久しぶりです。卯ノ花です
私事になるのですが、文字数10万以上越えと第40話でキリがいいので少し書きだめして更新をストップしたいと思います。
皆さんが楽しめる作品にしていきますので頃からもご愛読の程よろしくお願いします_(._.)_
※次の更新では、初回の4日間は三本投稿出来ればと考えていますので、今後ともどうぞよろしくです。
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