1 / 1
僕の彼女
しおりを挟む僕の彼女は、苦しい。
そんな彼女を見ている僕も、苦しい。
僕と彼女はよくファミレスに行く。
彼女が頼むものはいつも同じなのに、何にするか迷っているような顔でゆっくりとメニューをめくる。
『季節のサラダで、ドレッシングはなしで。あと烏龍茶をお願いします。』
『ナポリタン一つと、コーラお願いします。』
大概、僕も毎回の同じものを頼む。
僕は彼女を不思議だとか変わってるだとか、そんな風には思わない。彼女がメニューをみる理由も、ドレッシングをかけない理由も、知っているから。
でもそんな彼女がどうしても好きだ。
彼女を変えたくないと思う。
『相談したい事がある。』
サラダにのっていたトマトを少し口に運んだ後、静かに置かれたフォークはしっかりと音を立てた。
そして静かな声で僕にそんな事を言った。
『どんな事でも聞くよ。』
とはいうものの、言われては困る。
彼女にはその悩みを抱えたままでいてもらわなければならないから。
『私を見てなにか気づくこととか思う事とかない?』
髪を手でとかしながら、不安そうに僕の答えに期待している。
『...見た目?ないかな。』
彼女の見た目で気になるところはない。手の甲の傷以外、特に変わったところもない。
『見た目じゃなくても、なんでも。』
見た目以外でもない。この前彼女のバックから落ちたたくさんのレシートがどれも長かったこと以外は特に何もない。
『わからない。とりあえず、出る?』
僕たちはファミレスを出て公園のベンチに腰を落とした。
『はい、アイス。さっきのコンビニで買ったから。』
彼女はアイスを受け取って、ぼーっと裏を見ている。
『開けてあげようか?』
『ううん。大丈夫。いただきます。』
冬の外の公園でアイスをあげるなんて僕は酷いのだろうか。それとも彼女を知りつつアイスをあげる事の方がもっと酷いのだろうか。
『美味しい。』
悲しそうな顔をして美味しいと言うから僕は何度でもその表情の理由を聞きたくなってしまう。
食べたいと食べたくないの間でどんな事が起こっているのだろうか。食べなくないものが美味しいとはどんな気持ちなのか。
そんな悩みをかかえてる彼女が、心底愛おしい。
『美味しかった、ありがとう。じゃあ、帰るね。夜電話しよう。』
彼女にサラダ以外のものを食べさせると彼女はすぐ家に帰ってしまう。
この後彼女は何をするか僕にはわかる。僕が彼女をそうさせた。僕が苦しい思いをさせてしまった。
だけどそんな彼女が好きで好きでたまらない。
苦しい思いをして、辛い思いをしてもっとその苦悩とか悲しさを言葉じゃなく声や表情、行動で僕にもっと見せてほしい。
『そういえばもう相談は大丈夫なの?』
『うん、もう大丈夫。』
『ならよかった。じゃあ明日はケーキでも食べに行こう』
きっと僕の彼女は歯が溶けるまで、長いレシートを受け取り続けるのだろう。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる