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第三章
隠された追及 〜長野へ〜
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その夜、署に戻った俺は一連の内容を刑事官に報告した。
「なるほど。やはり樋口も嵐山興業を探っていたのだな」
「ですが、彼は捜査途中で長野県警に移動しています。恐らく別の理由で帰郷したのかもしれません。そうなると樋口は嵐山興業の関係者が長野県にいたとしか考えられません」
一方、刑事官らは俺を尋ねた例の山田という弁護士について捜査していた。
山田こと山田範一。神奈川県の横浜で生まれ育ち中学、高校では常に成績優秀かつテニス部の部長を務めていた所謂文武両道的な存在だった。卒業後は県内の国立大学へ進学し卒業と同時に司法試験に合格。上京後は司法修習を経て目黒区内の法律事務所に勤務。ところがそれから僅か三か月後に事務所を辞め、嵐山興業の顧問弁護士として勤務するようになり、一斉摘発を受けるまで勤務していた。退職後、新宿区内の情報マーケティング会社に勤務し情報処理を担当していたという。だが、事件の一週間前から山田は無断欠勤しており、連絡が一切取れないという。刑事官らは山田が住む中野区内のマンションを訪れたが、案の定もぬけの殻で家財道具一式がすべて引き払われていた。そう、樋口が名乗っていた山田という男は実在していたのだ。おそらく樋口自身も山田を知っており、自身の名が知れ渡るのを恐れた為に山田の名を語ったのだ。
主な重要人物の所在が分からない以上、残る手段は樋口の故郷でもある長野県の伊那市へ向かい、出生から現在に至るまでの身辺調査を練り直すしかない。
「刑事官、私を伊那市へ向かわせてください。そこなら何かしらの手掛かりがあるはずです」
「確かに彼の故郷なら事件に関する情報をつかめるかもしれない。だが、前にも言った通り君は犯人から狙われているのだぞ。そこを十分に考えているのかね」
「分かっています。だからと言ってこのまま犯人を野放しにしておけばまた新たな事件が発生する危険性があります。それを防ぐ為にも一刻も早く犯人を逮捕しなければなりません。だから…」
「仕方がない。どうせ止めろと言っても無駄だろう。その代わり今度は私が同行する。いいな」
正直、納得いかなかったが仕方がない。俺は翌日、刑事官と共に立川へ向かい、そこから特急列車あずさで辰野へ。そこから飯田線に乗り換え、伊那市へと向かった。
樋口は昭和五十九年の七月二日、運送業の父利幸と看護婦の母美智恵、そして七歳年の離れた姉真波のもとで生まれた。しかし、彼が五歳の時に父親が交通事故で他界。更に追い打ちをかけるように彼が十歳の時に姉も他界。その失意から母親体調を崩すようになり、入退院を繰り返すようになった。その様子を見かねた叔父が当時中学生だった樋口を引き取り、伊那市から少し離れた飯田で過ごすようになった。高校も飯田市内の学校に進学し、上京するまで一度も伊那市には戻らなかった。
あまりにも不運な少年時代。家族愛に恵まれなかった彼が何故に警察への道を志していたのか。その答えを知るために唯一の肉親でもある母親の美智恵のもとへ向かった。美智恵は昨年から痴呆症を患うようになり、すんでいた家を引き払い、市内にある老人介護施設に入所していた。介護スタッフに連れられて美智恵の部屋を訪れた。だが、俺が思っていた以上に痴呆症が進んでおり、会話は全く成り立たず、樋口の写真や遺品等を提示したが結局無駄骨に終わり、意味不明な答えを受け返すばかりだった。これで唯一の手掛りを失い捜査は宙を舞った。だが、何かしらに物事には理由がある。まず、なぜ樋口は警察官を志したのか。その手掛りを探すために既に死亡している父の利幸、姉の真波について調べ始めた。
「なるほど。やはり樋口も嵐山興業を探っていたのだな」
「ですが、彼は捜査途中で長野県警に移動しています。恐らく別の理由で帰郷したのかもしれません。そうなると樋口は嵐山興業の関係者が長野県にいたとしか考えられません」
一方、刑事官らは俺を尋ねた例の山田という弁護士について捜査していた。
山田こと山田範一。神奈川県の横浜で生まれ育ち中学、高校では常に成績優秀かつテニス部の部長を務めていた所謂文武両道的な存在だった。卒業後は県内の国立大学へ進学し卒業と同時に司法試験に合格。上京後は司法修習を経て目黒区内の法律事務所に勤務。ところがそれから僅か三か月後に事務所を辞め、嵐山興業の顧問弁護士として勤務するようになり、一斉摘発を受けるまで勤務していた。退職後、新宿区内の情報マーケティング会社に勤務し情報処理を担当していたという。だが、事件の一週間前から山田は無断欠勤しており、連絡が一切取れないという。刑事官らは山田が住む中野区内のマンションを訪れたが、案の定もぬけの殻で家財道具一式がすべて引き払われていた。そう、樋口が名乗っていた山田という男は実在していたのだ。おそらく樋口自身も山田を知っており、自身の名が知れ渡るのを恐れた為に山田の名を語ったのだ。
主な重要人物の所在が分からない以上、残る手段は樋口の故郷でもある長野県の伊那市へ向かい、出生から現在に至るまでの身辺調査を練り直すしかない。
「刑事官、私を伊那市へ向かわせてください。そこなら何かしらの手掛かりがあるはずです」
「確かに彼の故郷なら事件に関する情報をつかめるかもしれない。だが、前にも言った通り君は犯人から狙われているのだぞ。そこを十分に考えているのかね」
「分かっています。だからと言ってこのまま犯人を野放しにしておけばまた新たな事件が発生する危険性があります。それを防ぐ為にも一刻も早く犯人を逮捕しなければなりません。だから…」
「仕方がない。どうせ止めろと言っても無駄だろう。その代わり今度は私が同行する。いいな」
正直、納得いかなかったが仕方がない。俺は翌日、刑事官と共に立川へ向かい、そこから特急列車あずさで辰野へ。そこから飯田線に乗り換え、伊那市へと向かった。
樋口は昭和五十九年の七月二日、運送業の父利幸と看護婦の母美智恵、そして七歳年の離れた姉真波のもとで生まれた。しかし、彼が五歳の時に父親が交通事故で他界。更に追い打ちをかけるように彼が十歳の時に姉も他界。その失意から母親体調を崩すようになり、入退院を繰り返すようになった。その様子を見かねた叔父が当時中学生だった樋口を引き取り、伊那市から少し離れた飯田で過ごすようになった。高校も飯田市内の学校に進学し、上京するまで一度も伊那市には戻らなかった。
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