混沌と呪われし閃光

ザンガー

文字の大きさ
6 / 11
第四章

新たな銃弾 〜第二の事件〜

しおりを挟む
 その夜、俺たちは伊那市内のホテルで夜を明かした。刑事官は明日にでも達夫が引き取られた親戚の元を訪れようと考えた。そしてこれ以上新たな犠牲者が出ないことを祈りながらそのまま寝付いた。だが、翌日その願いはもろくもうち砕かれてしまう。翌朝、俺と刑事官は一回のレストランで朝食を食べている時だった。ふと目の前に朝刊が置いてあった。いつものようにスポーツ記事を読もうとするとその新聞の表紙には目を疑うような内容が書かれていた。
「天竜川中流付近で男性の水死体を発見」
本来ならばスポーツ欄まで飛ばす俺だったがその記事に目が留まり、詳しい内容まで読んだ。さらにそこに書かれていた名前に啞然とした。安藤博。例の嵐山興業の役員で、今まで行方が分からなかったがやはり殺されていた。俺は、その記事を刑事官にも見せ、実状を把握した刑事官は直ちにホテルを後にし、そのままタクシーに乗り込み飯田警察署へと向かった。その足でまず刑事課へ向かい課長の井上警部補に一連の事件の内容を報告した。
「やはり安藤は嵐山興業の仕組んだサクラだったのでしょうか。」
「可能性は十分あります。現に安藤は暴力団の九童と内通していたことも判明していますし、その情報を漏洩されることを恐れた嵐山興業と黒真連合会らの手により抹殺されたのだと考えられますね。」
「実は我々防犯カメラで三日前に安藤が飯田駅に降りる姿を目撃しているんです。でも、その日の内に今度は辰野方面へと向かっていったんです。」
「その二日の間に死体となったのか」
そして鑑識の宮園が安藤の解剖記録を見せてくれた。
 死体発見場所は飯田駅から約二キロ離れた弁天橋付近の川瀬で発見。死亡推定時刻は一昨日の夜九時から十二時で死因は腹部と心臓への銃弾二発によるショック死。体内の水分量からみて殺害現場は弁天橋ではなく天竜川の上流付近の可能性が考えられる。
「体内の水分量と皮膚のふやけ具合から殺害場所は辰野町から箕輪町の間だと考えられます。」
「因みに安藤に撃ち込まれた弾丸は?」
「現在、県警の科捜研で鑑定中です。ただ、弾丸の大きさは約32口径です。でもなんでそんな事を。」
「いや、ちょっと心当たりがあってね。鑑定が終わったら銃弾のデータベースをお願いします。」
32口径。俺と樋口を撃った銃と同じだ。もしかすると安藤を殺したのも同一人物の可能性が高い。ただ、あくまでも現段階では可能性にしか過ぎないが。
 昼過ぎ、飯田署に合同特別捜査本部が設置され、緊急会議が開かれた。無論、俺と刑事官も同席だ。署長の門倉は一連の事件で死亡した樋口、安藤の足取りと身辺調査を洗い出し、新たな犠牲者を防ぐためにもその関係者を全て調べ上げ、用心するよう命じられた。
そして、警視庁と県警本部からも応援を要請し嵐山興業の東京本部と信州支社の調査、そして黒真連合会とその傘下における現状を調査するようになった。だが、俺にはまだ確かめなければならない事が残っている。樋口のアパートを訪れていたあの女だ。彼女はいったい何の目的で彼の元を訪れていたのだろうか。婚約者か妹。あるいは嵐山興業の手先なのか。いずれにしろ事件は深まる一方へ進み続けている。

 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...