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本命の好きな子にはとことんヘタれな俺が衝動的に告白した結果、彼女がかわいすぎて死にそうです

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「それで、お詣り?」

「うん。いきなり神頼みなんて笑っちゃうけど、気合を入れる、みたいな感じで」

 胸中はめちゃくちゃ焦っているのに、三澄の話を聞き流すなんてできなくて、ふんふんと熱心に聞いてしまう。

 つかさ。
こんなに好きなのに、俺はもう4年も三澄のこと好きなのに。
このまま告白もせずに、ほかの男にとられるとかありえなくないか?

 だったら、告白すべきか?
すべきなのか?

 でもフラれたら、もう顔を見に店に行くこともできなくなるんだぞ?
けど、このまま誰かにかっさわれるのは、ぜったいに絶対に嫌だし。

「本腰いれて仕事するなら、いろいろ試してみたいこともあって」

「好きだ」

 三澄がいうのと、俺の口からずっと隠してきた言葉がこぼれるのは同時だった。

「え……?」

 三澄が、大きな目をくるりと瞬く。

 ……なにぽろっと言っちゃってんだよ、俺は!
告白するにしても、もっとシチュエーションとかいろいろあるだろ! 

 ありえない失態に、心臓がばくばく大きな音をたてる。
へんな汗が出てくる。

 どうする?
ごまかすか?

 けど、ここまできたら、ぜんぶ言うしかないだろ。
それに、このまま黙って知らない男に三澄をとられるとか、ぜったい駄目だ。

「大学の時からずっと、三澄が好きだった。よかったら、お試しでもいいから。俺と、つきあってください」

 行列に並んでいる寒空の下。
さっきまで食べていたのは肉まんとピザまん。
 三澄は今日も完璧にかわいいけど、俺は徹夜飲み明けの小汚い恰好で。

 告白するには、最悪のシチュエーション。
けど、最大の誠意と、4年間たまりにたまった「好き」って気持ちをこめて、三澄に言う。

 三澄は、じっと俺を見つめる。
そんで、ぱぁっと赤くなった。

「……うん。お試しじゃなく、本気なら、こちらこそ。つきあってください」

「マジで!?」

「うん、マジで」

 真っ赤になって、三澄がいう。
俺は、情けなくもその場にずるずるしゃがみこんでしまった。

「ちょっ、鹿島くんっ」

「ごめ、ちょ、幸せすぎて泣ける……」

 冗談めかして言うけど、マジで目から涙がぼろぼろ。
おい、俺ってこんなキャラじゃねーだろって自分に突っ込みいれるけど、だめだ。

「やだ、ちょっと。立ってよっ!」

 慌てた三澄が俺のコートをひっぱる。
いや、ほんと、幸せすぎるから。

「ごめん……」

 しばらくうずくまっていたかったけど、これで三澄に嫌われたらシャレにならねーから、よろよろと立ち上がる。

「もぉおおおおっ、びっくりしたぁっ」

 進んでしまった行列の分を歩きながら、三澄がぷりぷり怒ったように言う。
けど、本気で怒っているわけではないようで。

 くるっと振り返って、俺のコートをちょこんとひっぱり、いう。

「あのねっ。ゼミでほかの子にからかわれてるとこ助けてくれたり。家の都合で就職できなくて、他の子と比較して落ち込んでいるとこ、”お前、すげーよな”ってほめてくれたり。私のほうが、いっぱい鹿島くんのこと、好きなんだからねっ」

 マジか。
知らなかったけど、俺たちって、両想いだったのか。

「だから、ね」

 長年の思い人が、かわいくかわいく笑って言う。

「今年も、……ううん、これからもずっと。よろしく、ね」

 神様。
俺の彼女がかわいすぎて死にそうですが、彼女とずっと一緒にいたいので、長生きさせてください。
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