異世界で(口の悪い)騎士様に拾われたのですが

木村 真理

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活気のある街ですが

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「ああ、まぁなー。そうありたいって思ってる。…なんつーかその。ありがとうな」

 てれてれと言うレイに、首をかしげる。

「へ?なんでレイがお礼を言うんですか?」

「お? あー、そっか。そうだよな、お前、異世界の人間だもんな」

 街の設備を誉めたら、照れられた。
意味がわからない。
 私が尋ねると、レイはますます頬を緩めて、頷く。

 むー。なんですか。私が異世界から来たって話は、いちおう信じてくれたはずなのにさ。
 さっきまでだって、だから門兵さんたちに手続してくれたはずなのに、そんなこと忘れてたみたいな反応。
 ふつう、そんな重大なこと忘れる?

「怒るなよ。お前が、俺が誰だか知らないで、この街を褒めてくれたこと、すっげぇ嬉しいんだからよー」

 不服な気分が顔にでていたみたい。
レイは私の頭を撫でながら、言う。
 微妙に子ども扱いされている気がするんだけど、気のせいだよね?

「どういうことですか?」

 うすうす感づくものがある。
けど、あえて聞いてみる。

 レイは「えっとな」と照れながら爆弾宣言した。

「この街、俺の家の領なんだよ。ブロッケンシュタイン領ファーガス。ブロッケンシュタイン領の中心地だな。で、さっきの緊急連絡用の街灯は、まだこの国ではここにしかない。まだ新しい試みなんだよ」

「うわ」

 予想は的中。
思わず、うめき声をもらしてしまった。

 だってこの街、そうとう大きいよ。
しかもパッと見ても、豊かで治安もいいんだろうなって感じ。

 道を歩いていると、建物のほとんどの窓から、明るい明かりが漏れている。
 そこここにある飲食店からは、賑やかで楽しげな声が漏れてきている。
 街のいたるところに多くの人が生活している痕跡がみられる。

 それでいて、街はすみずみまで整えられていて、この街がきちんと管理されていることがわかる。
 あたりは暗いからよく見えないけど、道にゴミもほとんど落ちていないし、建物にも落書きもない。
 昔のヨーロッパといえば…と危惧していたような、部屋からポイ捨てされたと思わしき排泄物が道にごろごろしている……なんてこともない。

 そのうえさっきの緊急用の連絡機の話だ。

 この領を治めているのは、人格的にも手腕としてもそうとうデキる人だろうなって思う。
 レイは、そんな人が一家の長をつとめる家の人間なんだ……。
 ただ貴族というたけでなくて、将来はこの領を担う一族の人間として、レイも教育されているのだろう。
 なんか、ますます心理的な距離を感じる。

 うわーと思っていると、レイはさらに追い打ちをかけた。

「緊急用の連絡機はよー、俺が前にブロッケンシュタインの当主だった時、領内の改革として薦めた計画だったんだぜー」

「はいいいいいい?」

 ちょ、まって……!

 有能篤実っぽいブロッケンシュタイン家の人間だってことだけでレイに距離感じてたら、有能そうと評価したご当主さまがご本人だと!?

 慄くわ。
レイは、私の様子に気づかず、てれてれと続けてるけどな。

「予算とか利害関係でよー、いろいろ批判もあった案だったんだ。今では、街の奴らには認められていると思ってる。……けどよ、それだって俺の前では喜んでみせているだけかもって不安はあるんだ」

 そう言って、レイはくしゃっとした笑顔を私に向けた。
ラベンダーみたいな紫の目が、優しく優しく、私を見つめている。

「だからよ、異世界からきたっていうお前が、俺がこの街の改革に力を入れてたって知らないまま賞賛してくれたのは嬉しいんだ」

 ありがとうなと笑うレイの顔に、私はどんな表情を返していいのかわからなくなる。

 うん。まぁ、とりあえず。
喜んでくれているなら、いいってことなのかな。
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