2 / 36
悪役令嬢兼魔王だけど、王太子に婚約破棄されたので、正体をバラしてみた
1
しおりを挟む
「マリアンヌ・オットー・ウルシェンヌ公爵令嬢。君との婚約は破棄する!」
壇上から、そう宣言したのはこの国の王太子アークドィだった。
国の貴族の子女たちが集まる魔法学院の卒業パーティの最中、王太子として開会の挨拶をする予定だった彼は、とつぜんの婚約破棄を宣言した。
会場は驚きにどよめき、壇上にたつ王太子とその友人たち、そして婚約破棄を告げられた少女を注視する。
その視線はおおむね、卒業パーティという公の場で、婚約破棄という繊細な問題を突然宣言した王太子への非難だった。
だが、王太子はまったく意に介していなかった。
むしろ周囲の人々の視線に力を得たように、彼は美しい緑の目に怒りを込め、一人の少女を睨み付ける。
鍛えられれた体に整った顔。
まとう雰囲気は王太子らしく気品があり、なおかつ野性的。
国中の女性を虜にしてやまない王太子が激怒する様は、迫力に満ちていた。
けれどにらまれた少女マリアンヌは、その年齢にふさわしくない落ち着きでもって、それを受け止める。
「まぁ、怖い」
くすりと笑って、マリアンヌは囁く。
赤い唇が弧を描き、蠱惑的に壇上の王太子を見上げれる。
王子は反射的に顔を赤く染め、そしてそんな自分を恥じるようにますます声を荒立てる。
「なにが、怖いだ!君がリリスにしたことのほうがよほど恐ろしい!」
王太子はそう怒鳴りながら、彼の隣に寄り添ってたつ少女の肩に手をおいた。
王太子にすがるように立っている栗色の髪の小柄な少女の名は、リリス。
平民育ちだったが、その魔力の大きさに目をとめられ、男爵家の養女となった少女だ。
「お、王太子さまぁ。わたし、怖かった…。怖かったんです…っ」
リリスが甘えをふくんだかわいらしい声を震わせ、王太子に抱き付いた。
王太子は彼女をなだめるようにその胸に強く抱いた。
「ああ、リリス。もう恐れることなんて、なにもないよ。マリアンヌとの婚約は解消した。君との婚約もすぐに整うさ。君の魔力量は国でも有数だ。父王たちも、認めてくれるだろう。君はもう、マリアンヌなど恐れずにいられる立場と守りを得られるんだよ」
すると王太子たちをとりまいていた少年たちも、口々にマリアンヌを罵りはじめた。
「そうですよ、リリス。私たちがあなたを守ります! ……ウルシェンヌ公爵令嬢。君はこのリリス男爵令嬢につらくあたったそうですね」
「とぼけても無駄だよ? 君がリリス令嬢を階段から突き落としたこと、下校時に暴漢に襲わせたこと、机に毒虫をしこんだこと、すべて証拠はあがっているんだからな!」
「こんなかわいいリリスちゃんに、よくそんなひどいことができたね!お前なんて、悪魔だよ!」
男たちは、それぞれこの国の宰相の息子、騎士団長の息子、大商人の息子と身分・財力に優れていた若者だ。
しかもそれぞれタイプの異なる美形だった。
彼らに弾劾されたマリアンヌは、よくここまでタイプの違う美形を揃えたものだなと、改めて感慨にふける。
そして性格的に難はあるにしろ、それなりに有能だった彼らをここまで自分に惑わせたリリスの手腕に感心した。
(まぁ、それはさておき)
マリアンヌは、いい加減この茶番に飽き始めていた。
せっかく楽しめるゲームかと思ったのに、こんなにあっさり終わってしまうとは残念だった。
けれど、王太子にすがりついて泣いているリリスを見て、仕方ないと終幕の言葉を告げる。
「ふふっ、わたくしが悪魔、ですか」
「そうだよ!こんな可憐な女の子を殺そうなんて、悪魔の所業としかいいようがないね!」
「対象が可憐な少女じゃなくとも、人が人を殺害しようとしていれば咎めるべきかと思いますけれど。まぁ、それはさておき、わたくしが悪魔だというのは認めましょう」
豊満な胸に手をおき、マリアンヌは嫣然と笑う。
そのあふれ出る色気にあてられつつも、王太子は胸に抱いたリリスのぬくもりに力を得たように、マリアンヌを睨み付けた。
「どういう意味だ」
マリアンヌは、幼いころから王太子の婚約者として、傍にいた。
彼女がくだらない冗談を口にしないことなど、わかっている。
マリアンヌはくすくすと笑って、小首をかしげる。
「いやですわね、アークドィ様。その通りの意味ですわ」
壇上から、そう宣言したのはこの国の王太子アークドィだった。
国の貴族の子女たちが集まる魔法学院の卒業パーティの最中、王太子として開会の挨拶をする予定だった彼は、とつぜんの婚約破棄を宣言した。
会場は驚きにどよめき、壇上にたつ王太子とその友人たち、そして婚約破棄を告げられた少女を注視する。
その視線はおおむね、卒業パーティという公の場で、婚約破棄という繊細な問題を突然宣言した王太子への非難だった。
だが、王太子はまったく意に介していなかった。
むしろ周囲の人々の視線に力を得たように、彼は美しい緑の目に怒りを込め、一人の少女を睨み付ける。
鍛えられれた体に整った顔。
まとう雰囲気は王太子らしく気品があり、なおかつ野性的。
国中の女性を虜にしてやまない王太子が激怒する様は、迫力に満ちていた。
けれどにらまれた少女マリアンヌは、その年齢にふさわしくない落ち着きでもって、それを受け止める。
「まぁ、怖い」
くすりと笑って、マリアンヌは囁く。
赤い唇が弧を描き、蠱惑的に壇上の王太子を見上げれる。
王子は反射的に顔を赤く染め、そしてそんな自分を恥じるようにますます声を荒立てる。
「なにが、怖いだ!君がリリスにしたことのほうがよほど恐ろしい!」
王太子はそう怒鳴りながら、彼の隣に寄り添ってたつ少女の肩に手をおいた。
王太子にすがるように立っている栗色の髪の小柄な少女の名は、リリス。
平民育ちだったが、その魔力の大きさに目をとめられ、男爵家の養女となった少女だ。
「お、王太子さまぁ。わたし、怖かった…。怖かったんです…っ」
リリスが甘えをふくんだかわいらしい声を震わせ、王太子に抱き付いた。
王太子は彼女をなだめるようにその胸に強く抱いた。
「ああ、リリス。もう恐れることなんて、なにもないよ。マリアンヌとの婚約は解消した。君との婚約もすぐに整うさ。君の魔力量は国でも有数だ。父王たちも、認めてくれるだろう。君はもう、マリアンヌなど恐れずにいられる立場と守りを得られるんだよ」
すると王太子たちをとりまいていた少年たちも、口々にマリアンヌを罵りはじめた。
「そうですよ、リリス。私たちがあなたを守ります! ……ウルシェンヌ公爵令嬢。君はこのリリス男爵令嬢につらくあたったそうですね」
「とぼけても無駄だよ? 君がリリス令嬢を階段から突き落としたこと、下校時に暴漢に襲わせたこと、机に毒虫をしこんだこと、すべて証拠はあがっているんだからな!」
「こんなかわいいリリスちゃんに、よくそんなひどいことができたね!お前なんて、悪魔だよ!」
男たちは、それぞれこの国の宰相の息子、騎士団長の息子、大商人の息子と身分・財力に優れていた若者だ。
しかもそれぞれタイプの異なる美形だった。
彼らに弾劾されたマリアンヌは、よくここまでタイプの違う美形を揃えたものだなと、改めて感慨にふける。
そして性格的に難はあるにしろ、それなりに有能だった彼らをここまで自分に惑わせたリリスの手腕に感心した。
(まぁ、それはさておき)
マリアンヌは、いい加減この茶番に飽き始めていた。
せっかく楽しめるゲームかと思ったのに、こんなにあっさり終わってしまうとは残念だった。
けれど、王太子にすがりついて泣いているリリスを見て、仕方ないと終幕の言葉を告げる。
「ふふっ、わたくしが悪魔、ですか」
「そうだよ!こんな可憐な女の子を殺そうなんて、悪魔の所業としかいいようがないね!」
「対象が可憐な少女じゃなくとも、人が人を殺害しようとしていれば咎めるべきかと思いますけれど。まぁ、それはさておき、わたくしが悪魔だというのは認めましょう」
豊満な胸に手をおき、マリアンヌは嫣然と笑う。
そのあふれ出る色気にあてられつつも、王太子は胸に抱いたリリスのぬくもりに力を得たように、マリアンヌを睨み付けた。
「どういう意味だ」
マリアンヌは、幼いころから王太子の婚約者として、傍にいた。
彼女がくだらない冗談を口にしないことなど、わかっている。
マリアンヌはくすくすと笑って、小首をかしげる。
「いやですわね、アークドィ様。その通りの意味ですわ」
0
あなたにおすすめの小説
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
田舎娘をバカにした令嬢の末路
冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。
それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。
――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。
田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。
弟が悪役令嬢に怪我をさせられたのに、こっちが罰金を払うだなんて、そんなおかしな話があるの? このまま泣き寝入りなんてしないから……!
冬吹せいら
恋愛
キリア・モルバレスが、令嬢のセレノー・ブレッザに、顔面をナイフで切り付けられ、傷を負った。
しかし、セレノーは謝るどころか、自分も怪我をしたので、モルバレス家に罰金を科すと言い始める。
話を聞いた、キリアの姉のスズカは、この件を、親友のネイトルに相談した。
スズカとネイトルは、お互いの身分を知らず、会話する仲だったが、この件を聞いたネイトルが、ついに自分の身分を明かすことに。
そこから、話しは急展開を迎える……。
悪役令嬢として断罪? 残念、全員が私を庇うので処刑されませんでした
ゆっこ
恋愛
豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。
玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。
そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。
そう、これは断罪劇。
「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」
殿下が声を張り上げた。
「――処刑とする!」
広間がざわめいた。
けれど私は、ただ静かに微笑んだ。
(あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について
夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。
ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。
しかし、断罪劇は予想外の展開へ。
実家に帰ったら平民の子供に家を乗っ取られていた!両親も言いなりで欲しい物を何でも買い与える。
佐藤 美奈
恋愛
リディア・ウィナードは上品で気高い公爵令嬢。現在16歳で学園で寮生活している。
そんな中、学園が夏休みに入り、久しぶりに生まれ育った故郷に帰ることに。リディアは尊敬する大好きな両親に会うのを楽しみにしていた。
しかし実家に帰ると家の様子がおかしい……?いつものように使用人達の出迎えがない。家に入ると正面に飾ってあったはずの大切な家族の肖像画がなくなっている。
不安な顔でリビングに入って行くと、知らない少女が高級なお菓子を行儀悪くガツガツ食べていた。
「私が好んで食べているスイーツをあんなに下品に……」
リディアの大好物でよく召し上がっているケーキにシュークリームにチョコレート。
幼く見えるので、おそらく年齢はリディアよりも少し年下だろう。驚いて思わず目を丸くしているとメイドに名前を呼ばれる。
平民に好き放題に家を引っかき回されて、遂にはリディアが変わり果てた姿で花と散る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる