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聖女の婚約破棄とその事情
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玉座の間には、国の有数の貴族たちが顔をそろえていた。
貴重なガラスで四方の壁をうめたこの広間は、建国以来スヴェルナ王国の重大な出来事を見守ってきた。
その広間はいま、重苦しい沈黙に満ちていた。
重い沈黙を破ったのは、玉座に座す王その人だった。
「聖女ホーリーよ、面をあげよ」
その言葉に、玉座の前で礼をとっていた少女が、顔をあげた。
すきとおるような白い顔は、この一か月の少女の苦しみを現すかのように痩せこけていた。
大きな紫の瞳だけが、痩せ衰えた顔の中でこぼれんばかりに目立っている。
もともと華奢だった体躯は、いまや折れんばかりに細い。
清楚な美貌の持ち主だった少女は、その凄惨なさまさえ美しいと言えなくはなかった。
だが、一月前まで陽だまりのような笑みをうかべていた少女を知る者にとって、彼女の今の様子はいたましいの一言につきる。
王も、広間に集まった貴族たちも、彼女の変わりように目を伏せた。
……なぜ、こんなことになってしまったのか。
王はこのような事態を防ぎきれなかった自分と、配下の者らへの怒りと嘆きで胸をつぶした。
あんなことさえなければ、と。
何事もなければ、今頃はきっと第一王子と聖女ホーリーとの結婚に向けて、忙しくも幸せな時を過ごしていただろうに。
ふたりが幼いころから、お互いへの愛情を育てるさまを、王たちも見守ってきた。
初々しくもかわいらしい二人の恋は、王城で働く人々にとって、美しい未来そのものだった。
もうすぐ、その恋が結実する日が来るはずだったのに。
王の胸のうちは、苦いものがわきあがる。
けれども、王として表情を取り繕い、言わねばならない言葉を口にする。
「そなたと、第一王子との婚約を解消する。これをもって、そなたと王族の縁は絶たれたと思いなさい」
集まった貴族たちの口から、重いため息が漏れた。
有力な貴族たちはこの決定を前もって知っていたし、そうでないものも察してはいた。
けれど、ほとんどのものは、こんな事態は望んでいなかった。
誰もが、ホーリーと王子の結婚を心待ちにしていたはずだったのだ。
けれど今の状況では、確かに王子との婚約破棄はいたしかたないかもしれなかった。
他ならぬホーリーのために。
嘆きであふれる玉座の間に、ただひとり悲しみの面の下で、ほくそ笑む女がいた。
宰相の娘サン・マリーだ。
彼女だけは、ホーリーのやつれた様に、内心では狂喜乱舞していた。
なぜなら、このホーリーの凋落を招いた惨事を呼び起こしたのは、他でもない彼女だったのだから。
貴重なガラスで四方の壁をうめたこの広間は、建国以来スヴェルナ王国の重大な出来事を見守ってきた。
その広間はいま、重苦しい沈黙に満ちていた。
重い沈黙を破ったのは、玉座に座す王その人だった。
「聖女ホーリーよ、面をあげよ」
その言葉に、玉座の前で礼をとっていた少女が、顔をあげた。
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大きな紫の瞳だけが、痩せ衰えた顔の中でこぼれんばかりに目立っている。
もともと華奢だった体躯は、いまや折れんばかりに細い。
清楚な美貌の持ち主だった少女は、その凄惨なさまさえ美しいと言えなくはなかった。
だが、一月前まで陽だまりのような笑みをうかべていた少女を知る者にとって、彼女の今の様子はいたましいの一言につきる。
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……なぜ、こんなことになってしまったのか。
王はこのような事態を防ぎきれなかった自分と、配下の者らへの怒りと嘆きで胸をつぶした。
あんなことさえなければ、と。
何事もなければ、今頃はきっと第一王子と聖女ホーリーとの結婚に向けて、忙しくも幸せな時を過ごしていただろうに。
ふたりが幼いころから、お互いへの愛情を育てるさまを、王たちも見守ってきた。
初々しくもかわいらしい二人の恋は、王城で働く人々にとって、美しい未来そのものだった。
もうすぐ、その恋が結実する日が来るはずだったのに。
王の胸のうちは、苦いものがわきあがる。
けれども、王として表情を取り繕い、言わねばならない言葉を口にする。
「そなたと、第一王子との婚約を解消する。これをもって、そなたと王族の縁は絶たれたと思いなさい」
集まった貴族たちの口から、重いため息が漏れた。
有力な貴族たちはこの決定を前もって知っていたし、そうでないものも察してはいた。
けれど、ほとんどのものは、こんな事態は望んでいなかった。
誰もが、ホーリーと王子の結婚を心待ちにしていたはずだったのだ。
けれど今の状況では、確かに王子との婚約破棄はいたしかたないかもしれなかった。
他ならぬホーリーのために。
嘆きであふれる玉座の間に、ただひとり悲しみの面の下で、ほくそ笑む女がいた。
宰相の娘サン・マリーだ。
彼女だけは、ホーリーのやつれた様に、内心では狂喜乱舞していた。
なぜなら、このホーリーの凋落を招いた惨事を呼び起こしたのは、他でもない彼女だったのだから。
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