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私の婚約者(王子)がお馬鹿すぎる。……でも好き、っていうこの羞恥に満ちた状況について
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これ見よがしにため息をついて、私は言う。
「仕方ありませんわね、今回だけは、婚約破棄はなかったことにしてあげますわ」
仮にも王子相手にどんなに上からなんだよ、とは自分で思う。
けれどエドワード王子はそれを聞いた途端、顔を輝かせて、私に抱き付いてきた。
「愛してるよ、エリザベス!婚約破棄なんて馬鹿なこと言って、ほんとうにごめん!」
「知っていますわよ、王子様。ただし、二度目はありませんわよ」
許された、と思ったんだろう。
王子が、ぎゅうぎゅう抱きしめてくるんだけど。
この人、さっきまで、床に膝をついていたよね!?
こっちのドレスまで汚れそうじゃん。
やめてほしい。
それにこんな騒ぎ、二度とごめんだわ。
こっちがどんな気持ちになったと思っているのよ。
まったく、ばかばかしい茶番だった。
エドワード王子の顔を見れば、王子が私のことを変わらず愛してるのなんて、一目瞭然だった。
そもそもエドワード王子が子供のころから私を溺愛しているのなんて、社交界ではみんなが知っていることだ。
だから年ごろの令嬢たちは誰も、エドワード王子をそういった相手としては見ていなかったのだ。
だけど、だからこそ。
私には、王子が他の女の子と一緒にいる姿に免疫がなかった。
カインズ男爵令嬢が王子に寄り添っている姿を見て、そして王子が婚約破棄なんて言い出した時は、本当に胸が痛かった。
エドワード王子が愛しているのは私だけだと自負していたけど、それでも、彼が私に婚約破棄なんて言って。
男の人の相手に慣れたカインズ男爵令嬢が、自信ありげに彼のそばにいて。
それで自分は王子に愛されているからだいじょうぶだと思い切れるほど、私は強くなんてない。
私は王に認められた彼の婚約者だし、王は双方の意思を重んじる方だ。
だけど、結局のところこの婚約は、馬鹿だけどかわいい末っ子に、侯爵家の後ろ盾がほしいという王の親心からの婚約だ。
例え王子が心変わりしたって、カインズ男爵令嬢との婚約なんてありえない。
だけど、それでも心は揺らぐし、痛くなる。
だって、認めたくないけど、私もこの馬鹿な王子が大好きなんだもの。
いいところなんて、顔と武人としての能力だけ。
私の前に出ると発生するお馬鹿っぷりを思えば、そんなの帳消しになるくらい駄目な王子なのに。
「あなたこそ、知るべきですわ。あなたが他の女を愛しているかもしれないと思ったとき、私がどんなに苦しかったかを」
二度と、あんな気持ちを味わいたくない。
ひとまわり大きなエドワード王子の体に包まれながら、そう言えば。
エドワード王子は跪いて、私の手を取る。
「エリザベス。あのような茶番をしくんだことは謝罪する。けれど、私が君以外の女を愛することなんて、永遠にありえないよ。だから、今すぐ結婚してくれ」
先走りすぎぃ……!
そんなことまで、私は望んでないよね?
またこの馬鹿王子は、斜め上のことを言い出すんだから。
頭がいたい。
「ですから、王子。あなたの結婚は、国家の重大ごとなのですよ?そんなふうに気軽に言葉になさるものではありません。もっと王族としての自覚をもってくださいと何度いえば……」
「エリザベス。君、顔が真っ赤だぞ」
「こ、これはパーティの熱気にあてられただけです!」
こんな時ばかり目ざとい王子が、いらない指摘をする。
私は王子をにらんでいい返し、けれど小声で付け加えた。
「……はやく王に結婚が認められるくらい、立派な王子になってください」
あぁ、もう。
好きって感情は、やっかいだ。
こんなお馬鹿な王子の、お馬鹿な所業を許してしまう。
自分でも、自分が恥ずかしい。
それでも。
このお馬鹿な王子が、好きなんだよね。
「私だって、あなたとはやく結婚したいんですから」
囁くと、エドワード王子は顔を真っ赤にして、何度もうなずいた。
「仕方ありませんわね、今回だけは、婚約破棄はなかったことにしてあげますわ」
仮にも王子相手にどんなに上からなんだよ、とは自分で思う。
けれどエドワード王子はそれを聞いた途端、顔を輝かせて、私に抱き付いてきた。
「愛してるよ、エリザベス!婚約破棄なんて馬鹿なこと言って、ほんとうにごめん!」
「知っていますわよ、王子様。ただし、二度目はありませんわよ」
許された、と思ったんだろう。
王子が、ぎゅうぎゅう抱きしめてくるんだけど。
この人、さっきまで、床に膝をついていたよね!?
こっちのドレスまで汚れそうじゃん。
やめてほしい。
それにこんな騒ぎ、二度とごめんだわ。
こっちがどんな気持ちになったと思っているのよ。
まったく、ばかばかしい茶番だった。
エドワード王子の顔を見れば、王子が私のことを変わらず愛してるのなんて、一目瞭然だった。
そもそもエドワード王子が子供のころから私を溺愛しているのなんて、社交界ではみんなが知っていることだ。
だから年ごろの令嬢たちは誰も、エドワード王子をそういった相手としては見ていなかったのだ。
だけど、だからこそ。
私には、王子が他の女の子と一緒にいる姿に免疫がなかった。
カインズ男爵令嬢が王子に寄り添っている姿を見て、そして王子が婚約破棄なんて言い出した時は、本当に胸が痛かった。
エドワード王子が愛しているのは私だけだと自負していたけど、それでも、彼が私に婚約破棄なんて言って。
男の人の相手に慣れたカインズ男爵令嬢が、自信ありげに彼のそばにいて。
それで自分は王子に愛されているからだいじょうぶだと思い切れるほど、私は強くなんてない。
私は王に認められた彼の婚約者だし、王は双方の意思を重んじる方だ。
だけど、結局のところこの婚約は、馬鹿だけどかわいい末っ子に、侯爵家の後ろ盾がほしいという王の親心からの婚約だ。
例え王子が心変わりしたって、カインズ男爵令嬢との婚約なんてありえない。
だけど、それでも心は揺らぐし、痛くなる。
だって、認めたくないけど、私もこの馬鹿な王子が大好きなんだもの。
いいところなんて、顔と武人としての能力だけ。
私の前に出ると発生するお馬鹿っぷりを思えば、そんなの帳消しになるくらい駄目な王子なのに。
「あなたこそ、知るべきですわ。あなたが他の女を愛しているかもしれないと思ったとき、私がどんなに苦しかったかを」
二度と、あんな気持ちを味わいたくない。
ひとまわり大きなエドワード王子の体に包まれながら、そう言えば。
エドワード王子は跪いて、私の手を取る。
「エリザベス。あのような茶番をしくんだことは謝罪する。けれど、私が君以外の女を愛することなんて、永遠にありえないよ。だから、今すぐ結婚してくれ」
先走りすぎぃ……!
そんなことまで、私は望んでないよね?
またこの馬鹿王子は、斜め上のことを言い出すんだから。
頭がいたい。
「ですから、王子。あなたの結婚は、国家の重大ごとなのですよ?そんなふうに気軽に言葉になさるものではありません。もっと王族としての自覚をもってくださいと何度いえば……」
「エリザベス。君、顔が真っ赤だぞ」
「こ、これはパーティの熱気にあてられただけです!」
こんな時ばかり目ざとい王子が、いらない指摘をする。
私は王子をにらんでいい返し、けれど小声で付け加えた。
「……はやく王に結婚が認められるくらい、立派な王子になってください」
あぁ、もう。
好きって感情は、やっかいだ。
こんなお馬鹿な王子の、お馬鹿な所業を許してしまう。
自分でも、自分が恥ずかしい。
それでも。
このお馬鹿な王子が、好きなんだよね。
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囁くと、エドワード王子は顔を真っ赤にして、何度もうなずいた。
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