乙女ゲームの悪役令嬢に転生しましたが、この恋は諦められません

木村 真理

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とはいえ、たとえ現実ではなくゲームの情報としても、相手に酷似した人間の悩みや不利益を知ってしまえば、ある程度はそれを避けるよう行動してしまう。
エミリオへの態度を、ゲームの情報によって変えたように。

そのことを「ゲームシステム」に逆ハーレムを狙っているなんて勘違いされないように気を付けなくては、と思う。

幸いわたくしの記憶の中で、攻略対象たちはそれほどひどい目に合うことはない。

ゲームシステムに誤解されないようあまり関わりたくはないとはいえ、彼らや彼らの周囲の人が殺されたり、再生不可能なほど傷つけられたりするということであれば、放っておくわけにはいかない。

けれど、このゲームでの攻略対象は、人間なら誰しもが悩むようなことで悩んでいただけなので、わたくしが危険をおかして手をだすこともないと割り切れる。
転生した世界が、悲惨なできごとの少ない「ヌルゲー」でよかった。

そもそもお兄様やエミリオ以外の攻略対象とは、ほとんど面識もない。

第二王子ユリウス様や、第三王子コンラッド様はパーティなどでお会いしたことはあるけれど、あくまで臣下の娘と王族としてのお付き合いである。
ユリウス王子はわたくしが参内するころには留学されていたので接点はないし、コンラッド様も小翼見習いとしての勤めた時期が微妙にずれている上に現在の所属している部も異なるので、ほとんどお話したこともない。

貴族として看過できない事態が起こるなら、もちろん王族である彼らをまもるために我が身の安全を問うつもりはない。
けれど、ちょっとした悩み事や事件は青春のスパイスだ、というのが前世のわたくしの持論だった。
ささやかな出来事は気にしないでおこう。

他の攻略対象である豪商の息子や学院の教師については、まったく知らない人間なので、わざわざ相手のことを調べて「ゲームシステム」に勘違いされるようなことはしない。

……あと問題は、「ヒロイン」かしら。

「ヒロイン」は、ゲームに登場する人物の中で唯一、名前もわからない。
ゲームでは「ヒロイン」の名前は自由に変えられたのだ。
その上、ゲーム内での情報も極端に少ないし、現在はごく普通の庶民として暮らしているはずだ。
彼女のことを調べるのは、地位がある攻略対象たちと比べるとかなり難しい。

なぜ彼女が膨大な魔力を持つにもかかわらず庶民として暮らしているのかは謎だけれど、こちらもわざわざ調べるほうが危険を招く気がする。
そっとしておきたい。

それに「ヒロイン」に嫌がらせをしたりするのは、転生者がもっとも破滅しやすいパターンなのである。

お兄様に想いを寄せるライバルとして、悪役令嬢の立場にいるわたくしにとって、ヒロインに関係することは、どの攻略対象と親しくするよりも危険だ。
実際ゲームでも、お兄様やエミリオにつきまとっているとヒロインは怒っていたし……。

ただこの「プリンセス・ルールズ」のヒロインは、他の乙女ゲームのヒロインとはすこし違う少女だった。

ゲームのストーリー自体は、魔力量を多く持つかわいい庶民の女の子が、国の有力者となる青年の愛を獲得するという王道ストーリーだ。
けれど、このゲームのヒロインは、一般的な乙女ゲームのヒロインと違う行動をとっていた。

一般的な乙女ゲームのヒロインたちは、勉学に励んだり魅力を磨いたりという基本的な努力をする以外は、受動的な態度だった。
攻略対象との出会いや彼らと親しくなる出来事は、偶発的あるいは攻略対象側の働きかけで機会をつかむ。
ヒロインは、チャンスの訪れを待っているだけだ。

けれど、このゲームのヒロインは、かなり活発に行動をしていた。

攻略対象と出会うために、彼らの行く場所を配下のものに調べさせ先回りしたり、彼らの友人と親しくなったり、自分が嫌がらせを受けているようにみせかけて彼らを頼ったり、だ。

もちろん偶発的に起こる事件に攻略対象とともに巻き込まれたりもしていたけれども、……こうして改めて考えてみると、このゲームのヒロインは、前世のわたくしの分析では「悪役令嬢」の行動パターンに似た行動をとっているのよね。

前世のわたくしが最期に興味深く研究していたことを考えると、「プリンセス・ルールズ」は、新しいタイプの乙女ゲームの先駆けだったのかもしれないけれども。
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