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③
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「何勝手に入ろうとしてんだよ。
生徒会長さまの許可なく生徒会室には入れねーの」
ドアから手を離し振り向いた先には、幾つかのファイルと一緒に2つのカギを持った桐生珪が立っていた。
「生徒会長!」
「何だ、忘れてたわけじゃなかったのね」
メンバーたちの間をくぐり抜けて、桐生珪はドアの前に立つわたしを遮った。
「桐生っ…君。
勝手にって、桐生君が来るの遅いからじゃないの!」
エラそうな言い方に、つい地が出そうになったのを必死に堪えた。
生徒会長さまだなんて、早くも王様気取りなんだから。ほんっとムカつく!
「しょーがないだろ。
前の生徒会長に引き継ぎ受けてたんだから。
ほら、これは榊さんの」
そう言って桐生珪はわたしに、手に持っていたカギを1つよこした。
「生徒会室のカギは会長と副会長だけで管理するものなんだってさ」
そうして持っていたもう1つのカギで、桐生珪は生徒会室のカギを解除しドアを開けた。
カチッと錠が外れた後、ガラガラと開いた生徒会室のドア。
そのまま先に進む桐生珪に続いて入った、禁断の生徒会室。
初めて見るその中は…
「…思ったより普通って感じですね」
同じく続いて入った他の3人も、初めて見る生徒会室の中にそんな感想を述べた。
教室とそんなに変わらない大きさの室内。
中央には長机が2つ向かい合わせに並べられていて、壁には幾つかのファイルが収納された棚が設置してあっただけ。
…まぁ、校長室とかじゃあないんだから、ソファとか期待したわけじゃないんだけどさ。
ホント、正にこの少人数で話し合いする為だけの空間って感じだった。
「ほら、最初だからやる事いっぱいあるよ。
榊さんはこっち、他の3人はそっちのイスに」
桐生珪がドサッとファイルを置いた机に、わたしは言われた通り一緒に着く。
それにしても…何のファイルだろ。
生徒会の仕事なんてロクに知らない。これからどんな事をしていくのか、今のわたしにはまだわからなかった。
1つの長机にはわたしと桐生珪。もう1つの長机には残りの3人が着いた。
多分この座り方が定番になるんだと思う。
だけど…まさか桐生珪と同じ机に着く日が来るとは思わなかった。隣に座って見る整った横顔とか、やっぱり…サマにはなってる。
これから恋愛禁止が解除されれば、これはきっと女子生徒からのターゲットになる事は間違いないわね。
ま、わたしには関係ない話なわけなんだけど。
「じゃ、まずは簡単にみんな挨拶していこうか。
オレは1年C組の桐生珪。
これから1年、生徒会長として頑張るのでどーぞ宜しく」
一旦イスから立ち上がって挨拶すると、それに続いてメンバーたちが拍手を返す。
…仕方ないからわたしも拍手をした。
これから1年も、わたしはコイツと付き合う事になるのか…。
こんな筈じゃなかったなぁ。
一通りみんな挨拶を終えると、桐生珪は持ってきたファイルをメンバーたちそれぞれに配った。
「執行部の活動内容なんかは全部それに書いてあるから、各自目を通すように。
だいたい前年度とそんなに変わらないだろうから、参考にして」
配られたファイルの中には、過去の活動内容の記録がズッシリ挟んであった。年度毎に筆跡が違うから、その年の書記が記録したものなんだろう。
それにしても…行事の度にする企画や手配…
これは予想以上に面倒くさそうだった。
やっぱり立候補なんてしなきゃ良かったかも。
「とりあえず一番先にやる事は2週間後の生徒総会の為に、新しい校則の明確化だ」
「新しい校則の…明確化?」
「演説の時に言った事を執行部でもう一度話し合い、総会の時に生徒から賛成をもらって初めて校則化出来るんだよ。
あれ?榊さん、立候補した割にはよく知らないの?」
「…っ
し 知ってたわよ!」
ニヤリといつもの意地悪そうな笑みでわたしを見る桐生珪に、半分地がでそうになった。
もぉ、いちいちムカつく!
「ま、今日の所はまだ初日だから、とりあえずその資料を持って帰ってじっくり読んでおいて。
2学期はナニゲに一番忙しいから、しばらく毎日は放課後集まるよーに。
じゃあ今日はひとまず解散!」
桐生珪の一声で、向かいの長机に座る3人はファイルを持って席を立った。
帰ってこれだけの資料を読まなきゃいけないわけ?
しばらく毎日来なきゃいけないって言うし…。
はぁ…、やっぱり面倒くさいだけだった。
メンバーの3人が次々部屋から出て行く中、わたしもそれに続こうとしたのだが急に腕をグイッと引っ張られた。
…桐生珪だ。
「なに?」
「榊さんは、もう少しここに残れる?
基本的な運営はオレたち2人が主だろうから、もっと話したいなと思って」
帰ってこの資料を読まなきゃいけないってのに、まだ話す事があるっての?
腕を掴んだまま、わたしをジッと見る桐生珪。
そうか。わたしが選挙で負けた事を、他の3人が帰った今になってエラそうに見下すつもりなんだわ!
さっきだってわたしをバカにしたような顔だったしっ
「悪いけど、今日はわたし忙しいから。
生徒会の話なら明日でもいい?」
そう言って、わたしは桐生珪の手を払うと生徒会室を後にした。
桐生珪のイヤミから逃げる為ってのもあるけど、今日からいきなり生徒会で帰りが遅くなる羽目になる事をママに言ってないから早く帰らなきゃならない。
帰りがいつもより遅いから寄り道したなんて思われたら、こっぴどく叱られちゃうんだからねっ!
「…………………」
…寄り道か。
そういうの、した事もないけどな…。
生徒会長さまの許可なく生徒会室には入れねーの」
ドアから手を離し振り向いた先には、幾つかのファイルと一緒に2つのカギを持った桐生珪が立っていた。
「生徒会長!」
「何だ、忘れてたわけじゃなかったのね」
メンバーたちの間をくぐり抜けて、桐生珪はドアの前に立つわたしを遮った。
「桐生っ…君。
勝手にって、桐生君が来るの遅いからじゃないの!」
エラそうな言い方に、つい地が出そうになったのを必死に堪えた。
生徒会長さまだなんて、早くも王様気取りなんだから。ほんっとムカつく!
「しょーがないだろ。
前の生徒会長に引き継ぎ受けてたんだから。
ほら、これは榊さんの」
そう言って桐生珪はわたしに、手に持っていたカギを1つよこした。
「生徒会室のカギは会長と副会長だけで管理するものなんだってさ」
そうして持っていたもう1つのカギで、桐生珪は生徒会室のカギを解除しドアを開けた。
カチッと錠が外れた後、ガラガラと開いた生徒会室のドア。
そのまま先に進む桐生珪に続いて入った、禁断の生徒会室。
初めて見るその中は…
「…思ったより普通って感じですね」
同じく続いて入った他の3人も、初めて見る生徒会室の中にそんな感想を述べた。
教室とそんなに変わらない大きさの室内。
中央には長机が2つ向かい合わせに並べられていて、壁には幾つかのファイルが収納された棚が設置してあっただけ。
…まぁ、校長室とかじゃあないんだから、ソファとか期待したわけじゃないんだけどさ。
ホント、正にこの少人数で話し合いする為だけの空間って感じだった。
「ほら、最初だからやる事いっぱいあるよ。
榊さんはこっち、他の3人はそっちのイスに」
桐生珪がドサッとファイルを置いた机に、わたしは言われた通り一緒に着く。
それにしても…何のファイルだろ。
生徒会の仕事なんてロクに知らない。これからどんな事をしていくのか、今のわたしにはまだわからなかった。
1つの長机にはわたしと桐生珪。もう1つの長机には残りの3人が着いた。
多分この座り方が定番になるんだと思う。
だけど…まさか桐生珪と同じ机に着く日が来るとは思わなかった。隣に座って見る整った横顔とか、やっぱり…サマにはなってる。
これから恋愛禁止が解除されれば、これはきっと女子生徒からのターゲットになる事は間違いないわね。
ま、わたしには関係ない話なわけなんだけど。
「じゃ、まずは簡単にみんな挨拶していこうか。
オレは1年C組の桐生珪。
これから1年、生徒会長として頑張るのでどーぞ宜しく」
一旦イスから立ち上がって挨拶すると、それに続いてメンバーたちが拍手を返す。
…仕方ないからわたしも拍手をした。
これから1年も、わたしはコイツと付き合う事になるのか…。
こんな筈じゃなかったなぁ。
一通りみんな挨拶を終えると、桐生珪は持ってきたファイルをメンバーたちそれぞれに配った。
「執行部の活動内容なんかは全部それに書いてあるから、各自目を通すように。
だいたい前年度とそんなに変わらないだろうから、参考にして」
配られたファイルの中には、過去の活動内容の記録がズッシリ挟んであった。年度毎に筆跡が違うから、その年の書記が記録したものなんだろう。
それにしても…行事の度にする企画や手配…
これは予想以上に面倒くさそうだった。
やっぱり立候補なんてしなきゃ良かったかも。
「とりあえず一番先にやる事は2週間後の生徒総会の為に、新しい校則の明確化だ」
「新しい校則の…明確化?」
「演説の時に言った事を執行部でもう一度話し合い、総会の時に生徒から賛成をもらって初めて校則化出来るんだよ。
あれ?榊さん、立候補した割にはよく知らないの?」
「…っ
し 知ってたわよ!」
ニヤリといつもの意地悪そうな笑みでわたしを見る桐生珪に、半分地がでそうになった。
もぉ、いちいちムカつく!
「ま、今日の所はまだ初日だから、とりあえずその資料を持って帰ってじっくり読んでおいて。
2学期はナニゲに一番忙しいから、しばらく毎日は放課後集まるよーに。
じゃあ今日はひとまず解散!」
桐生珪の一声で、向かいの長机に座る3人はファイルを持って席を立った。
帰ってこれだけの資料を読まなきゃいけないわけ?
しばらく毎日来なきゃいけないって言うし…。
はぁ…、やっぱり面倒くさいだけだった。
メンバーの3人が次々部屋から出て行く中、わたしもそれに続こうとしたのだが急に腕をグイッと引っ張られた。
…桐生珪だ。
「なに?」
「榊さんは、もう少しここに残れる?
基本的な運営はオレたち2人が主だろうから、もっと話したいなと思って」
帰ってこの資料を読まなきゃいけないってのに、まだ話す事があるっての?
腕を掴んだまま、わたしをジッと見る桐生珪。
そうか。わたしが選挙で負けた事を、他の3人が帰った今になってエラそうに見下すつもりなんだわ!
さっきだってわたしをバカにしたような顔だったしっ
「悪いけど、今日はわたし忙しいから。
生徒会の話なら明日でもいい?」
そう言って、わたしは桐生珪の手を払うと生徒会室を後にした。
桐生珪のイヤミから逃げる為ってのもあるけど、今日からいきなり生徒会で帰りが遅くなる羽目になる事をママに言ってないから早く帰らなきゃならない。
帰りがいつもより遅いから寄り道したなんて思われたら、こっぴどく叱られちゃうんだからねっ!
「…………………」
…寄り道か。
そういうの、した事もないけどな…。
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