タイムスリップ チョコレート

むらさ樹

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「はあぁ…
せっかく作ったチョコ、渡せなかったよぉ」



放課後の、学校の帰り道。

トボトボと夕陽を背中に浴びながら、あたしはため息をついた。


手には、不器用ながらも一生懸命にラッピングした手作りチョコレート。
この日は家族の誰よりも早起きして、バレンタインのチョコを作ったのにね……。





あたしは家に着く前の、大きな河の橋の真ん中で立ち止まった。


両腕を柵に預けると、身体を橋にもたらせながら河の方を見た。



「きれーなオレンジ色……」



夕陽に反射した河の水が、キラキラ輝きながら流れ続けている。


毎日この橋を渡って学校に通っているわけだけど、時々こうやって河の流れを眺める事があるの。



あたしが生まれるずっと前からある、この大きな河。



「来月には先輩も、卒業しちゃう。
今年が最後のチャンスだったのになぁ…」



この2年間、先輩に憧れ続けてドキドキしたりハラハラしたりする毎日を送ってきたあたしを、この河はずっと見ていたよね。


だけどそれも、今日でおしまい。



今年のバレンタインに、いよいよ告白しようと思ってたのに。

結局勇気が出なくて、渡せないままになったんだもん!



「だからこのチョコも、もういらない……っ」



あたしはチョコを持っている手を振り上げると、橋の上からオレンジ色の河に目掛けて投げようとした。



絶えず流れ続けているこの河なら、チョコと一緒にあたしのこの気持ちも流してくれるかもしれない。

そう思ったの。




「…さよならっ」






──だけど

身を乗り出して、振り上げた手からチョコを離そうとした時だった。




「あぶない!」



「えっ!?」



すぐ側から聞こえた声に、あたしは投げかけたチョコの手を止めて振り向いた。



ていうか。
さっきまで近くにはあたし1人で、人の気配なんてしなかったのに。

いつの間に、誰がそこにいたんだろう。


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