タイムスリップ チョコレート

むらさ樹

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ッレ

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「ただいま」



玄関から聞こえてきた愛しい人の声に、あたしはお鍋の火を止めて出迎えた。


今夜はシチュー。

にんじんをハート型にカットしたのは、あたし特有のバレンタイン仕様。



「お帰りなさい。お仕事お疲れさま。
はい、荷物預か…………あら?」



あたしは旦那さまの仕事鞄と脱いだ上着を預かると、その上着ポケットに何か入っている事に気が付いた。


今日はバレンタインだし、もしかしなくてもチョコレートだろうな。

でも職場からの義理チョコは、全部断ってるって言ってたのになぁ。



「────────っ」



「…あぁ、ごめん!
それはちょっと…っ」



何だか慌てた様子の旦那さまだったけど、でもあたしはポケットから取り出して見たその包みに、違う意味で手が止まってしまっていた。



「や、違うんだ! それは会社の同僚からとかじゃないよ。
帰り際に身投げしようとしていた学生の女の子がいて、助けたらそのお礼にって……いや、身投げじゃなかったんだけどっ」



必死にあたしの顔色を伺いながら弁明してくれる旦那さまだけど、残念ながらその言葉はほとんどあたしの耳には入らなかった。


ポケットから取り出した不器用なラッピングのチョコレートを、ただただ信じられないと言わんばかりの目で見ていたの。


だって、これはあたしが────



「だから、本当にごめん!
何て言うか、その女の子もバレンタインにチョコレートを渡せなかったみたいで、仕方なくついでにもらったって言うか……っ」


「これ、あの大きな河の橋の上でもらったんでしょう!?」



「え あ……あー、そうだけど。
え、どうしてそれを……?」



あぁ、やっぱり!

自分の作ったものなんだから、見間違えるなんてハズないんだもんね。

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