3 / 68
➂
しおりを挟む
それから適当にお酒を注文すると、クロウと一緒に話をしながら飲んだ。
話って言っても、あたしは話す事ないからクロウの事ばっかり聞いてただけだけど。
その間ランクの下のヘルプホストたちは、こまめにボトルのお酒をついだり、チリ1つ入った灰皿をすぐに取り替えたりしていた。
スゴい気配り。
ご苦労さま。
でもそれだけね。
そうやって適当に時間が過ぎていってると、誰か他のホストがクロウのもとへとやってきて何か耳元に囁いていた。
あぁ、そうか。
案の定クロウはそれを聞いて、急に眉を下げながらあたしに言った。
「ゴメン、呼ばれちゃった。
すぐ戻るから」
クロウが立ち上がったと同時に、今来たホストが代わりにあたしの隣に座った。
「よかったら、今度は俺と飲まない?」
クロウが去って次に現れたのは、金色に染めた長髪の男。
やはりネクタイは締めてなくて、シャツの襟を立てて胸元を大きく開いている。
「見ない顔だね。
ここは初めて?
名前、何て言うの?」
「愛よ」
「愛ちゃんね。俺は水輝
じゃあ愛ちゃんと俺の出会いに乾杯」
そう言って、ほぼ無理やりあたしの持つグラスとカチンと合わせた。
…そうやって他のお客に呼ばれたのを良い事に、きっとクロウは今のうちにあたしの注文したお酒を吐き戻し、何食わぬ顔で次のお客の所に行っているんだろう。
それからあたしには、代わりに来たホストによってまたお酒を注文させる。
これがこのホストクラブの採算のカラクリなのね。
「愛ちゃん大丈夫?
こんな所に来て、彼氏に怒られない?」
「え?彼氏なんていないから、全然大丈夫よ」
「ウソ!彼氏いないの?
信じられない、もったいないなぁ~」
オーバーに驚いた風に言う、水輝ってホスト。
あたしがこんな仕事してるって知ったら、誰だって彼女になんかしたがらないだろうけどね。
…なんて、もちろん言わないけど。
幸い水輝は、あたしの仕事については訊いて来なかった。
…ふぅ。
遊べるかと思って来たホストクラブ。
確かに、イケメン揃いのホストに囲まれてお酒を飲んだり話をするのも悪くはないけれど。
でもやっぱり、これと言って刺激を感じたわけでもないし、通いたいと思うような所じゃなかった。
「さて、そろそろ…」
お酒のボトルも空いたキリの良い所で、その腰を上げようとした。
__その時だ。
急に店の奥から、ホストたちの声が大きく聞こえてきたのだ。
「お疲れ様です!」
「お疲れ様です、紫苑さん!」
ナンバーワンのようなランクの高いホストは、開店から遅れて来るものだというのは知っている。
さっきナンバーワンであるクロウが来たのに、お疲れ様だなんて言われるホストがまだ他にいるのだろうかと、つい興味本位で声のした方を見てみた。
するとその人物は店内をグルリと歩いて回ってくるようで、まずは早速一番近くにいるあたしの席の前まで来ていた。
あたしの隣に座る水輝や側にいるヘルプホストたちは急に立ち上がり、その人物に会釈をしながらあいさつをした。
「お疲れ様です、紫苑さん!」
「うん、お疲れ様」
そうあいさつを返した紫苑と呼ばれた人を見上げてみた。
やっぱりこんな世界では上下関係は厳しいもの。
さて、クロウ以外の上ランクのホスト、どんな男なのかし……
「______っ!!」
その紫苑と呼ばれた人物を見た途端に、思わず胸が高鳴った。
髪は金に近い、明るい茶髪。
長髪と言う程ではないけど少しオシャレに伸ばしていて、まるで少女マンガに出てくるような王子様みたい。
顔だって王子様の如く整っていて、イケメン…というより美形と言った方がしっくり来る感じだ。
ポーッとそんな彼の方に見とれていると、あたしはとうとう彼と視線が合ってしまった。
話って言っても、あたしは話す事ないからクロウの事ばっかり聞いてただけだけど。
その間ランクの下のヘルプホストたちは、こまめにボトルのお酒をついだり、チリ1つ入った灰皿をすぐに取り替えたりしていた。
スゴい気配り。
ご苦労さま。
でもそれだけね。
そうやって適当に時間が過ぎていってると、誰か他のホストがクロウのもとへとやってきて何か耳元に囁いていた。
あぁ、そうか。
案の定クロウはそれを聞いて、急に眉を下げながらあたしに言った。
「ゴメン、呼ばれちゃった。
すぐ戻るから」
クロウが立ち上がったと同時に、今来たホストが代わりにあたしの隣に座った。
「よかったら、今度は俺と飲まない?」
クロウが去って次に現れたのは、金色に染めた長髪の男。
やはりネクタイは締めてなくて、シャツの襟を立てて胸元を大きく開いている。
「見ない顔だね。
ここは初めて?
名前、何て言うの?」
「愛よ」
「愛ちゃんね。俺は水輝
じゃあ愛ちゃんと俺の出会いに乾杯」
そう言って、ほぼ無理やりあたしの持つグラスとカチンと合わせた。
…そうやって他のお客に呼ばれたのを良い事に、きっとクロウは今のうちにあたしの注文したお酒を吐き戻し、何食わぬ顔で次のお客の所に行っているんだろう。
それからあたしには、代わりに来たホストによってまたお酒を注文させる。
これがこのホストクラブの採算のカラクリなのね。
「愛ちゃん大丈夫?
こんな所に来て、彼氏に怒られない?」
「え?彼氏なんていないから、全然大丈夫よ」
「ウソ!彼氏いないの?
信じられない、もったいないなぁ~」
オーバーに驚いた風に言う、水輝ってホスト。
あたしがこんな仕事してるって知ったら、誰だって彼女になんかしたがらないだろうけどね。
…なんて、もちろん言わないけど。
幸い水輝は、あたしの仕事については訊いて来なかった。
…ふぅ。
遊べるかと思って来たホストクラブ。
確かに、イケメン揃いのホストに囲まれてお酒を飲んだり話をするのも悪くはないけれど。
でもやっぱり、これと言って刺激を感じたわけでもないし、通いたいと思うような所じゃなかった。
「さて、そろそろ…」
お酒のボトルも空いたキリの良い所で、その腰を上げようとした。
__その時だ。
急に店の奥から、ホストたちの声が大きく聞こえてきたのだ。
「お疲れ様です!」
「お疲れ様です、紫苑さん!」
ナンバーワンのようなランクの高いホストは、開店から遅れて来るものだというのは知っている。
さっきナンバーワンであるクロウが来たのに、お疲れ様だなんて言われるホストがまだ他にいるのだろうかと、つい興味本位で声のした方を見てみた。
するとその人物は店内をグルリと歩いて回ってくるようで、まずは早速一番近くにいるあたしの席の前まで来ていた。
あたしの隣に座る水輝や側にいるヘルプホストたちは急に立ち上がり、その人物に会釈をしながらあいさつをした。
「お疲れ様です、紫苑さん!」
「うん、お疲れ様」
そうあいさつを返した紫苑と呼ばれた人を見上げてみた。
やっぱりこんな世界では上下関係は厳しいもの。
さて、クロウ以外の上ランクのホスト、どんな男なのかし……
「______っ!!」
その紫苑と呼ばれた人物を見た途端に、思わず胸が高鳴った。
髪は金に近い、明るい茶髪。
長髪と言う程ではないけど少しオシャレに伸ばしていて、まるで少女マンガに出てくるような王子様みたい。
顔だって王子様の如く整っていて、イケメン…というより美形と言った方がしっくり来る感じだ。
ポーッとそんな彼の方に見とれていると、あたしはとうとう彼と視線が合ってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
今さらやり直しは出来ません
mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。
落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。
そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
君に何度でも恋をする
明日葉
恋愛
いろいろ訳ありの花音は、大好きな彼から別れを告げられる。別れを告げられた後でわかった現実に、花音は非常識とは思いつつ、かつて一度だけあったことのある翔に依頼をした。
「仕事の依頼です。個人的な依頼を受けるのかは分かりませんが、婚約者を演じてくれませんか」
「ふりなんて言わず、本当に婚約してもいいけど?」
そう答えた翔の真意が分からないまま、婚約者の演技が始まる。騙す相手は、花音の家族。期間は、残り少ない時間を生きている花音の祖父が生きている間。
すべてはあなたの為だった~狂愛~
矢野りと
恋愛
膨大な魔力を有する魔術師アレクサンダーは政略結婚で娶った妻をいつしか愛するようになっていた。だが三年経っても子に恵まれない夫妻に周りは離縁するようにと圧力を掛けてくる。
愛しているのは君だけ…。
大切なのも君だけ…。
『何があってもどんなことをしても君だけは離さない』
※設定はゆるいです。
※お話が合わないときは、そっと閉じてくださいませ。
これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。
でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。
もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……?
表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。
全年齢作品です。
ベリーズカフェ公開日 2022/09/21
アルファポリス公開日 2025/06/19
作品の無断転載はご遠慮ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる