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たっぷり2時間半を費やして行った仕事の後、あたしはお店を出て行く徹を手を振って見送った。
「また絶対に来てね。
待ってるわぁ」
「絶対行くよ!
愛してる、愛ちゃん!」
気持ちの悪い投げキスをかます徹に、あたしは吐き気を堪えながら笑顔を見せる。
仕事はツラいけど、ここでたくさんお金を稼いで、また今度紫苑に会った時には良いお酒をご馳走するの。
美味しく楽しく、気持ちよく。
そう言ってくれた紫苑だけど、でもやっぱり高いお酒で貢献するから得意客になれるんだ。
支払いの良いお客の事は太客って呼ばれる。
あたしも絶対、いつか紫苑の太客エースになってやるんだからね!
だから…その為に、いっぱい仕事してたくさんお金を稼がなきゃいけないのよ!
徹を見送ってから、後ろからまた誰か別のお客の見送りに出入り口まで来た。
「今日はとても満足した時間が過ごせたよ。
ありがとう、凛」
「アタシもだよぉ。
また次来てくれるの待ってるね」
接待が終わってお店を出て行くお客を見送りに出て来たのは、凛だった。
「ありがとーっ」
ちょっぴり童顔でツインテールの似合う凛は真っ白なドレスを着て、帰って行くお客に手を振って見送った。
「……………ふぅ。
あ、愛さんも今終わったんですね」
「お疲れ。
て言うか、今のお客ってスゴい紳士そうじゃなかった?」
凛の見送った男、中年ってより老年に近そうなくらいの感じだったんだけれど、こんなお店に来るような下品な男には見えなかった。
スーツもパリッと着こなしてたみたいだし、不潔そうな感じが一切しない。
まさに、紳士って奴だ。
「あー、あのお客ね、悪くはないよ?
優しいし、お金持ってるし」
そんな風に言う凛だけど、「悪くない」だなんて。
あたしはつい自分の得意客である徹と比べてしまう。
「でももうちょっと若かったらイイのに、あのオジサンもうすぐ70なんだって」
「えぇー…」
「ま、オプションいっぱい付けてくれる割にはプレイもソフトだし。
楽に稼げるから良い客なんだけどね~」
あたしなんか、気持ち悪いエロオヤジにこんなに媚びて頑張ってんのに。
どんなに仕事が苦でも楽でも、もらえるお金はマニュアル通り。
こんなの、不公平…
「……………っ」
…なんて、言ってられない。
あたしらは、お客を選ぶ事なんてできない。
お客に選ばれてナンボの仕事をしているだけなんだからっ!!
「さぁって、アタシ次の客が待ってるの。
また後でね、愛さん」
あたしが唇を噛み締めながら拳を震わせていたなんて知る由もない凛は、クルリと踵を返してお店の奥へと戻ろうとした。
「もう次のお客なの?
今1人帰って行ったばかりなのに」
「さっきから待たせてるの。
お金稼ぐなら、数もこなさなきゃ」
今度はあたしに手を振った凛は、そう言ってまた2階の方へと上がっていった。
…そんなにお金って…何の為に?
やっぱりお気に入りのホストをナンバーワンに導けるように貢献したいから?
それくらい、凛は身体を張ってでも夢中になってるって事なんだ。
高いお酒を頼むだけのホストクラブ。
確かにあたしも紫苑には気に入られたいけど…お金をかける事しか、できないのかしら…。
「また絶対に来てね。
待ってるわぁ」
「絶対行くよ!
愛してる、愛ちゃん!」
気持ちの悪い投げキスをかます徹に、あたしは吐き気を堪えながら笑顔を見せる。
仕事はツラいけど、ここでたくさんお金を稼いで、また今度紫苑に会った時には良いお酒をご馳走するの。
美味しく楽しく、気持ちよく。
そう言ってくれた紫苑だけど、でもやっぱり高いお酒で貢献するから得意客になれるんだ。
支払いの良いお客の事は太客って呼ばれる。
あたしも絶対、いつか紫苑の太客エースになってやるんだからね!
だから…その為に、いっぱい仕事してたくさんお金を稼がなきゃいけないのよ!
徹を見送ってから、後ろからまた誰か別のお客の見送りに出入り口まで来た。
「今日はとても満足した時間が過ごせたよ。
ありがとう、凛」
「アタシもだよぉ。
また次来てくれるの待ってるね」
接待が終わってお店を出て行くお客を見送りに出て来たのは、凛だった。
「ありがとーっ」
ちょっぴり童顔でツインテールの似合う凛は真っ白なドレスを着て、帰って行くお客に手を振って見送った。
「……………ふぅ。
あ、愛さんも今終わったんですね」
「お疲れ。
て言うか、今のお客ってスゴい紳士そうじゃなかった?」
凛の見送った男、中年ってより老年に近そうなくらいの感じだったんだけれど、こんなお店に来るような下品な男には見えなかった。
スーツもパリッと着こなしてたみたいだし、不潔そうな感じが一切しない。
まさに、紳士って奴だ。
「あー、あのお客ね、悪くはないよ?
優しいし、お金持ってるし」
そんな風に言う凛だけど、「悪くない」だなんて。
あたしはつい自分の得意客である徹と比べてしまう。
「でももうちょっと若かったらイイのに、あのオジサンもうすぐ70なんだって」
「えぇー…」
「ま、オプションいっぱい付けてくれる割にはプレイもソフトだし。
楽に稼げるから良い客なんだけどね~」
あたしなんか、気持ち悪いエロオヤジにこんなに媚びて頑張ってんのに。
どんなに仕事が苦でも楽でも、もらえるお金はマニュアル通り。
こんなの、不公平…
「……………っ」
…なんて、言ってられない。
あたしらは、お客を選ぶ事なんてできない。
お客に選ばれてナンボの仕事をしているだけなんだからっ!!
「さぁって、アタシ次の客が待ってるの。
また後でね、愛さん」
あたしが唇を噛み締めながら拳を震わせていたなんて知る由もない凛は、クルリと踵を返してお店の奥へと戻ろうとした。
「もう次のお客なの?
今1人帰って行ったばかりなのに」
「さっきから待たせてるの。
お金稼ぐなら、数もこなさなきゃ」
今度はあたしに手を振った凛は、そう言ってまた2階の方へと上がっていった。
…そんなにお金って…何の為に?
やっぱりお気に入りのホストをナンバーワンに導けるように貢献したいから?
それくらい、凛は身体を張ってでも夢中になってるって事なんだ。
高いお酒を頼むだけのホストクラブ。
確かにあたしも紫苑には気に入られたいけど…お金をかける事しか、できないのかしら…。
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