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凛の発言に、メイクの手を止めて目を丸くした。
「だって愛さん、アタシのホストクラブでの遊び方を知りたかったんでしょ?
だったら、一緒に行って隣で見てたらいいよ」
「あぁ…なるほど」
本当なら、凛が休みの時に行ったホストクラブでの様子を教えてもらうハズだった。
だけど目当ての子が休みだったからと、あんまり本格的に遊べなかったって言ってたのだ。
「そうだね、そうしよっか」
「やったぁ!
道連れゲットォ!」
道連れって…。
でも、ホストクラブの粋な遊び方を知ってる凛と行くのは、参考になるのは間違いないかも。
紫苑には「初心者なのかな?」なんて言われちゃったけど、でも粋なお客とは思われたいもんね。
「じゃ、約束ね」
「うん」
__17時を30分ほど過ぎた頃。
ポツリ ポツリと、うちのお店にもお客が来た。
「いらっしゃぁい!
あれ、徹ちゃん?また来てくれたんだぁ!」
さっき凛があんな話をしたせいか、得意客である徹が噂すれば影の如く来店してきた。
「昨日来たら愛ちゃん休みだって言うから、今日はいるだろうと思って来ちゃったよ~」
「わぁ、ごめんね徹ちゃん。
じゃあ昨日は誰かがあたしの代わりをしてくれたんだ」
「まさか~。
僕は愛ちゃん一筋だから、昨日は諦めて帰ったよ?
だから今日は、昨日の分もいっぱい楽しむからね~」
…ゾクリ。
仕事上がりでヨレヨレのスーツに額を脂汗で光らせながら気持ちの悪い笑顔で話す徹に、悪寒が走る。
得意客なんだから当たり前ではあるんだけど、こうも執拗に気に入られるとさすがに気持ち悪いったらないわ。
んもぉ!
凛が変な事言うから、余計に気分悪くなっちゃったじゃない!
相変わらず会社の愚痴をこぼしながらビールやおつまみを口にする徹に、あたしはウンウンと頷きながら御酌する。
中年のサラリーマンって、みんなこんななの?
やれ課長がどうした。
やれ先方とどうなった。
辞めてやる。
…とかさ。
そんな愚痴、奥さんにはしないのかしら。
あたしも、もういい加減聞き飽きたってのよ。
「なぁ?
愛ちゃんならわかってくれるだろ~?」
「うん うん。
徹ちゃんは人一倍頑張ってるもんね。
あたしは応援してるよ」
「やっぱり!
愛ちゃんだけは僕の味方だよ~っ」
そう言って徹は、あたしのピンクのドレスの上から抱きついてきた。
あーっ、汚い身体で触るのヤメて!
服に臭いが移っちゃう!
「…徹ちゃん、もう上行こっか。
今夜はい~っぱい、慰めてあげる」
アンタはあたしにお金をくれる為だけのカモなの。
どんなに愛を囁いても、どんなに癒やしを与えても。
結局は、あちこちで流れに流れたお金を最終的にホストクラブへ持って行く為の課程でしかないのよ。
2階に上がり特別に用意された個室に入ると、制限時間1時間のサービス料金が加算された。
「愛ちゃん…僕、愛ちゃんがいなくなったら生きていけないかもしれない。
それぐらい、愛してるよ~」
「うん、あたしも徹ちゃんがいないと困っちゃう」
口で言うだけならタダだけどね。
でも困るのは本当よ。
だって大切な、あたしの収入源でもあるんだもの。
「愛ちゃん、キスさせて」
「うん、徹ちゃん」
好きでもない男と重ねる唇。
これ1回で、あたしにいくら入ってくると思う?
もちろん、何回しても1日分だから料金は同じだけど。
「愛ちゃん。
もう、すぐシたい」
「もぉ、そんなに焦っちゃダメ。
夜は、まだまだ長いんだぞ」
少しでも時間を稼いで、追加料金を発生させる。
気付かれないように、さり気なくオプションを付けさせる。
それが、身体を武器にするあたしのプロの技でもあるんだ…!
「だって愛さん、アタシのホストクラブでの遊び方を知りたかったんでしょ?
だったら、一緒に行って隣で見てたらいいよ」
「あぁ…なるほど」
本当なら、凛が休みの時に行ったホストクラブでの様子を教えてもらうハズだった。
だけど目当ての子が休みだったからと、あんまり本格的に遊べなかったって言ってたのだ。
「そうだね、そうしよっか」
「やったぁ!
道連れゲットォ!」
道連れって…。
でも、ホストクラブの粋な遊び方を知ってる凛と行くのは、参考になるのは間違いないかも。
紫苑には「初心者なのかな?」なんて言われちゃったけど、でも粋なお客とは思われたいもんね。
「じゃ、約束ね」
「うん」
__17時を30分ほど過ぎた頃。
ポツリ ポツリと、うちのお店にもお客が来た。
「いらっしゃぁい!
あれ、徹ちゃん?また来てくれたんだぁ!」
さっき凛があんな話をしたせいか、得意客である徹が噂すれば影の如く来店してきた。
「昨日来たら愛ちゃん休みだって言うから、今日はいるだろうと思って来ちゃったよ~」
「わぁ、ごめんね徹ちゃん。
じゃあ昨日は誰かがあたしの代わりをしてくれたんだ」
「まさか~。
僕は愛ちゃん一筋だから、昨日は諦めて帰ったよ?
だから今日は、昨日の分もいっぱい楽しむからね~」
…ゾクリ。
仕事上がりでヨレヨレのスーツに額を脂汗で光らせながら気持ちの悪い笑顔で話す徹に、悪寒が走る。
得意客なんだから当たり前ではあるんだけど、こうも執拗に気に入られるとさすがに気持ち悪いったらないわ。
んもぉ!
凛が変な事言うから、余計に気分悪くなっちゃったじゃない!
相変わらず会社の愚痴をこぼしながらビールやおつまみを口にする徹に、あたしはウンウンと頷きながら御酌する。
中年のサラリーマンって、みんなこんななの?
やれ課長がどうした。
やれ先方とどうなった。
辞めてやる。
…とかさ。
そんな愚痴、奥さんにはしないのかしら。
あたしも、もういい加減聞き飽きたってのよ。
「なぁ?
愛ちゃんならわかってくれるだろ~?」
「うん うん。
徹ちゃんは人一倍頑張ってるもんね。
あたしは応援してるよ」
「やっぱり!
愛ちゃんだけは僕の味方だよ~っ」
そう言って徹は、あたしのピンクのドレスの上から抱きついてきた。
あーっ、汚い身体で触るのヤメて!
服に臭いが移っちゃう!
「…徹ちゃん、もう上行こっか。
今夜はい~っぱい、慰めてあげる」
アンタはあたしにお金をくれる為だけのカモなの。
どんなに愛を囁いても、どんなに癒やしを与えても。
結局は、あちこちで流れに流れたお金を最終的にホストクラブへ持って行く為の課程でしかないのよ。
2階に上がり特別に用意された個室に入ると、制限時間1時間のサービス料金が加算された。
「愛ちゃん…僕、愛ちゃんがいなくなったら生きていけないかもしれない。
それぐらい、愛してるよ~」
「うん、あたしも徹ちゃんがいないと困っちゃう」
口で言うだけならタダだけどね。
でも困るのは本当よ。
だって大切な、あたしの収入源でもあるんだもの。
「愛ちゃん、キスさせて」
「うん、徹ちゃん」
好きでもない男と重ねる唇。
これ1回で、あたしにいくら入ってくると思う?
もちろん、何回しても1日分だから料金は同じだけど。
「愛ちゃん。
もう、すぐシたい」
「もぉ、そんなに焦っちゃダメ。
夜は、まだまだ長いんだぞ」
少しでも時間を稼いで、追加料金を発生させる。
気付かれないように、さり気なくオプションを付けさせる。
それが、身体を武器にするあたしのプロの技でもあるんだ…!
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