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注文されたものがテーブルに届くと、あたしは紫苑と乾杯した。
「いつも来てくれる感謝を込めて」
「え、いつも来てるって、何で知ってるの?」
スッと一口飲んだ紫苑に、あたしはグラスを持ったまま訊いた。
だってあたしがここに来た時、紫苑はいつもいなかったから…。
「売り上げの関係で、記録が残ってるんだ。
あ、今の内緒だよ」
なんて言って、柔らかい笑みを見せながら人差し指を唇にあてた紫苑。
そんな顔して内緒なんて言われたら…ドキドキしちゃう…っ!!
「それにね、煌がよく話してくれるんだよ。
まだ新人なのに、目をかけてくれるお客さんがいるってね」
…お店の裏では、お客の事もいちいち報告を受けてるのかな。
やっぱりオーナーだから、気配りする上で知っとかなきゃって思ってるのかもしれないな。
「…そういえば。
また煌が失礼な事しちゃったようだね」
「え?」
「まだ新人とは言え、もうすぐ1ヵ月になるんだ。
僕からも、お詫びしたいと思う。
本当に、ごめんね」
失礼なって、出張ホストの事かなぁ。
あたしの質問に答えられなくて後で訊いたって煌が言ってたけど、オーナーである紫苑に訊いたのかしら。
「あぁ、別にあたしは…」
「紫苑!!」
話しているのを遮るように、途端、紫苑を呼ぶ女の声が店内に響いた。
声のした方へ振り向くと、派手な衣装にブランドバッグをぶら下げた厚化粧の女がこっちに向かって手を振っているのが見える。
あれは多分、滅多にお店にいない紫苑の姿を見つけた常連客だ。
…考えてみたら、ナンバーワンのクロウでさえ、大人気で指名を受けてはあちこち呼ばれているんだ。
元ナンバーワンの、現ホストクラブオーナーの紫苑なら尚更人気には違いない。
クロウの代わりにあたしの隣に来てくれた紫苑だけど、だからって煌みたいにずっと一緒にいてくれるわけじゃないのよね…。
手を振って呼んだ女に手を挙げて応えた紫苑は、ソファから腰を浮かせながらあたしに言った。
「ごめん。
ゆっくり話せなかったね」
「…ううん。
本当は、もっと…話したかったんだけどね」
ちょっとでも話せただけマシ。
あたしの事、意識してくれただけでも嬉しかったもの。
今日はあたしにワインの味を教えてくれた。
ありがとう、紫苑。
「じゃあ…もし良かったら、今度一緒にランチしながらゆっくり話さない?」
「……………えっ」
都合の良い聞き間違いかと思った。
紫苑が、あたしと一緒に…ランチ!?
「無理にとは言わないよ。
煌の失礼も改めてお詫びしたいし、ただここじゃあゆっくり話せないかなと思って」
「無理なわけない!
ランチ…もちろん大丈夫よ!」
「よかった。
いつなら都合いい?」
うそーーっ!!
これまであんまり話せなかったってのに!
まだお得意のおの字もないあたしが、紫苑といきなりランチ…て言うか、そんなデートみたいな事をしてもいいだなんて…っ!!
「昼間なら、いつでも大丈夫!
あたしが、紫苑の都合に合わせるからっ」
「それはそれは。
お気遣いありがとう」
信じられない!
だけど、間違いなくあたしはあの紫苑と、ランチデートの約束をする事が出来たのだ。
やったね。
これも煌のお陰かも。
「いつも来てくれる感謝を込めて」
「え、いつも来てるって、何で知ってるの?」
スッと一口飲んだ紫苑に、あたしはグラスを持ったまま訊いた。
だってあたしがここに来た時、紫苑はいつもいなかったから…。
「売り上げの関係で、記録が残ってるんだ。
あ、今の内緒だよ」
なんて言って、柔らかい笑みを見せながら人差し指を唇にあてた紫苑。
そんな顔して内緒なんて言われたら…ドキドキしちゃう…っ!!
「それにね、煌がよく話してくれるんだよ。
まだ新人なのに、目をかけてくれるお客さんがいるってね」
…お店の裏では、お客の事もいちいち報告を受けてるのかな。
やっぱりオーナーだから、気配りする上で知っとかなきゃって思ってるのかもしれないな。
「…そういえば。
また煌が失礼な事しちゃったようだね」
「え?」
「まだ新人とは言え、もうすぐ1ヵ月になるんだ。
僕からも、お詫びしたいと思う。
本当に、ごめんね」
失礼なって、出張ホストの事かなぁ。
あたしの質問に答えられなくて後で訊いたって煌が言ってたけど、オーナーである紫苑に訊いたのかしら。
「あぁ、別にあたしは…」
「紫苑!!」
話しているのを遮るように、途端、紫苑を呼ぶ女の声が店内に響いた。
声のした方へ振り向くと、派手な衣装にブランドバッグをぶら下げた厚化粧の女がこっちに向かって手を振っているのが見える。
あれは多分、滅多にお店にいない紫苑の姿を見つけた常連客だ。
…考えてみたら、ナンバーワンのクロウでさえ、大人気で指名を受けてはあちこち呼ばれているんだ。
元ナンバーワンの、現ホストクラブオーナーの紫苑なら尚更人気には違いない。
クロウの代わりにあたしの隣に来てくれた紫苑だけど、だからって煌みたいにずっと一緒にいてくれるわけじゃないのよね…。
手を振って呼んだ女に手を挙げて応えた紫苑は、ソファから腰を浮かせながらあたしに言った。
「ごめん。
ゆっくり話せなかったね」
「…ううん。
本当は、もっと…話したかったんだけどね」
ちょっとでも話せただけマシ。
あたしの事、意識してくれただけでも嬉しかったもの。
今日はあたしにワインの味を教えてくれた。
ありがとう、紫苑。
「じゃあ…もし良かったら、今度一緒にランチしながらゆっくり話さない?」
「……………えっ」
都合の良い聞き間違いかと思った。
紫苑が、あたしと一緒に…ランチ!?
「無理にとは言わないよ。
煌の失礼も改めてお詫びしたいし、ただここじゃあゆっくり話せないかなと思って」
「無理なわけない!
ランチ…もちろん大丈夫よ!」
「よかった。
いつなら都合いい?」
うそーーっ!!
これまであんまり話せなかったってのに!
まだお得意のおの字もないあたしが、紫苑といきなりランチ…て言うか、そんなデートみたいな事をしてもいいだなんて…っ!!
「昼間なら、いつでも大丈夫!
あたしが、紫苑の都合に合わせるからっ」
「それはそれは。
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だけど、間違いなくあたしはあの紫苑と、ランチデートの約束をする事が出来たのだ。
やったね。
これも煌のお陰かも。
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