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④
しおりを挟む__カサッ
抱きしめられた身体のポケット部分から紙の折れる音がした。
琴乃のラブレターだ。
ご主人様に渡す為に、ポケットに入れたままだったんだっけ。
「……………っ」
どうしよう。
早く渡さなきゃなのはわかってるのに。
今なら、まだご主人様も眠ってないよね。
ポケット入れたまま寝たらシワになっちゃうもん。
今のうちに____
「………………」
ふと、ポケットから出そうと思って伸ばした手を、止めた。
教室では、いつもひとりのご主人様。
家に帰れば、側にいるのはあたしだけ。
だけどもしそんなご主人様が琴乃と付き合う事になったら、もうあたしだけのご主人様じゃなくなっちゃう!
「………っ ………っ」
あたしは、今の状況に安心しきってたのかもしれない。
いつもご主人様を独り占めできてるのは、あたしだけだから。
そう思っていたから、すっかり安心してたのよ。
だけど、もうあたしだけのご主人様じゃなくなっちゃったら…………
そんなの、イヤだぁ!!
「……美咲?」
「っ」
ご主人様の腕の中でひとり葛藤していたあたしを、そっと呼んだ。
「何か考えてたろ」
「あ……」
「悩んでる事あるなら、オレに言ってみろよ」
「………っ」
どうしよう。
どうしたらいい?
何て言ったらいいか、わかんないっ
「言ったら楽になるから、ほら言ってみろ」
楽にだなんて、なれないよ。
だけど、ずっとこのままでいるわけにはいかないもの。
あたしは……パジャマのポケットから琴乃のラブレターを取り出した。
「手紙?」
「……はい。
ご主人様にお渡しするよう、預かってたんです……」
カバンに入れたり制服のポケットに入れたりしたから、かなりクシャクシャとシワだらけになっちゃった琴乃のラブレター。
中を読めば、これがラブレターなのはご主人様だってわかる。
その答えをどう出すのかは……あたしには関係ない事。
「ずいぶん長い間、預かってた?」
「いつ渡そうか、ずっと悩んでて……」
「それで浮かない顔してたんだな。
わかった、もういいよ。
安心して寝ろ」
クシャクシャのラブレターを枕元に置いたご主人様は、またあたしをギュッと抱きしめてくれた。
「おやすみな」
「……はい。
おやすみなさい……」
ご主人様の腕の中。
あたしは抱きしめられながら、優しく頭を撫でてもらった。
ご主人様が琴乃と付き合うようになったら、もうあたしにはかわいがってもらえないのかなぁ。
そんなの、いやだよぉ…………
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