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──バァン!!
「ひとみ!!
大丈夫かっ!?」
突然、診察室のドアが大きな音を立てて勢いよく開いたかと思うと、そこには制服姿のお兄ちゃんがいた。
肩で息をするほど乱し、走って来たのか顔も赤くなっている。
「お兄ちゃん!
どうしてここが?」
「そんな話は今は後だ。
それよりもお前! ひとみをこんな目にあわせて、タダで済むと思ってんのか!?」
わたしの言葉を手で制すと、お兄ちゃんはズカズカと佐伯先生に近付き、その胸ぐらをグッと掴んだ。
「……ぐっ」
「医者の癖に、その立場を利用してひとみにこんな真似をするなんて!
許されると思ってんのかよ!!」
身長はもちろん佐伯先生の方が断然高いのだけど、お兄ちゃんは構わす手を伸ばすようにして佐伯先生の胸ぐらを引っ張り寄せるように掴んでいる。
…ダメっ
佐伯先生は、悪い人なんかじゃないよ。
「待って!
やめて、お兄ちゃん!!」
佐伯先生は……わたしと同じ、"被害者"なんだ!!
「ひとみ………」
わたしの大声に、お兄ちゃんは佐伯先生の胸ぐらを掴む手の力を抜いてわたしの方を見た。
わたしを助けようとして一生懸命になってくれたのは、スゴく嬉しい。
でもね、佐伯先生は悪い事をしようとしてわたしにこんな事をしたわけじゃないんだよ。
「…お兄ちゃんは、わたしのお姉ちゃんの事を知ってる…?」
「ひとみ!?
お前、どうしてそれを…っ」
この反応。
お兄ちゃんは、わたしの知らない事を知ってるんだ。
知っててそれを、わたしに話さなかった…!
その時、床にシワシワになっている写真が1枚落ちているのが、目に入った。
あれは、今日バッグを落とした時になくしてしまっていた、お父さんの写る家族写真だ。
きっとあの後、佐伯先生が気付いて拾ってくれたんだわ。
わたしはソファチェアから降りると、落ちていた写真を拾ってお兄ちゃんに向けた。
「この写真、お兄ちゃんは何なのかわかる?」
「────────っ」
お父さんと一緒に、知らない女の人と小さな姉妹が写っている写真。
お父さんに、わたしたちには言えないような秘密があるんだと思って、誰にも見つからないように隠してたんだけど。
でもそれだけじゃない。何か繋がりがあるって思ったの。
「お兄ちゃんは、わたしの何を知ってるの?
お兄ちゃんは、わたしのお兄ちゃんじゃないの?
お兄ちゃんは……っ」
「…その写真の男性は、ひとみの父さんだよ。
だけど、オレの父さんじゃあない。
オレの父さんは、ひとみの父さんの弟なんだ」
「弟…?
それじゃあ…………」
初めて聞く意外な事実に、胸がドクドクと鳴っている。
お兄ちゃんのお父さんが、わたしのお父さんの弟だなんて。
だとしたら、わたしとお兄ちゃんは兄妹じゃなくて、いとこって事になる。
だったら、わたしのお父さんは?
お母さんは、わたしのお母さんじゃないの?
まさか、この写真の女の人が……。
「…………っ
…………っ」
ところが、お兄ちゃんは急に口を固く結び、何も言わなくなってしまった。
わたしにとって、大切な話なハズなのに。
どうして教えてくれないの…!?
「……ずっと秘密にしたまま、今の家族として幸せに暮らしていたんだね」
「────お前、何を…っ」
するとお兄ちゃんの代わりに、佐伯先生が口を開いてそう言った。
…秘密!
やっぱり、お兄ちゃんはわたしに隠し事をしていたんだっ
「この写真に写る4人は、ひとみちゃん。君と、君の本当の家族だよ」
「本当の、家族…?」
「待てよ!
何でお前がそんな事…っ」
お兄ちゃんの代わりに話す佐伯先生に、お兄ちゃんは慌てて突っかかった。
確かにお兄ちゃんならともかく、たまたまお世話になっている精神科の先生がわたしの事を知っているなんて不思議だ。
でもいいの。
わたしだって、本当の事を知りたいんだからっ
「お前っ!
いいか? ひとみに余計な事を言っても、ひとみには何もプラスにならない。
だったら、ツラい過去なんて思い出さないまま幸せな人生を歩んだ方が、ひとみの為じゃないか!」
「だが、事実は何も変わらないよ。僕の罪も、眠り続けているまなも、何も変わらないんだ。
だったらせめて、僕の口から懺悔させてくれないか…!!」
「ひとみ!!
大丈夫かっ!?」
突然、診察室のドアが大きな音を立てて勢いよく開いたかと思うと、そこには制服姿のお兄ちゃんがいた。
肩で息をするほど乱し、走って来たのか顔も赤くなっている。
「お兄ちゃん!
どうしてここが?」
「そんな話は今は後だ。
それよりもお前! ひとみをこんな目にあわせて、タダで済むと思ってんのか!?」
わたしの言葉を手で制すと、お兄ちゃんはズカズカと佐伯先生に近付き、その胸ぐらをグッと掴んだ。
「……ぐっ」
「医者の癖に、その立場を利用してひとみにこんな真似をするなんて!
許されると思ってんのかよ!!」
身長はもちろん佐伯先生の方が断然高いのだけど、お兄ちゃんは構わす手を伸ばすようにして佐伯先生の胸ぐらを引っ張り寄せるように掴んでいる。
…ダメっ
佐伯先生は、悪い人なんかじゃないよ。
「待って!
やめて、お兄ちゃん!!」
佐伯先生は……わたしと同じ、"被害者"なんだ!!
「ひとみ………」
わたしの大声に、お兄ちゃんは佐伯先生の胸ぐらを掴む手の力を抜いてわたしの方を見た。
わたしを助けようとして一生懸命になってくれたのは、スゴく嬉しい。
でもね、佐伯先生は悪い事をしようとしてわたしにこんな事をしたわけじゃないんだよ。
「…お兄ちゃんは、わたしのお姉ちゃんの事を知ってる…?」
「ひとみ!?
お前、どうしてそれを…っ」
この反応。
お兄ちゃんは、わたしの知らない事を知ってるんだ。
知っててそれを、わたしに話さなかった…!
その時、床にシワシワになっている写真が1枚落ちているのが、目に入った。
あれは、今日バッグを落とした時になくしてしまっていた、お父さんの写る家族写真だ。
きっとあの後、佐伯先生が気付いて拾ってくれたんだわ。
わたしはソファチェアから降りると、落ちていた写真を拾ってお兄ちゃんに向けた。
「この写真、お兄ちゃんは何なのかわかる?」
「────────っ」
お父さんと一緒に、知らない女の人と小さな姉妹が写っている写真。
お父さんに、わたしたちには言えないような秘密があるんだと思って、誰にも見つからないように隠してたんだけど。
でもそれだけじゃない。何か繋がりがあるって思ったの。
「お兄ちゃんは、わたしの何を知ってるの?
お兄ちゃんは、わたしのお兄ちゃんじゃないの?
お兄ちゃんは……っ」
「…その写真の男性は、ひとみの父さんだよ。
だけど、オレの父さんじゃあない。
オレの父さんは、ひとみの父さんの弟なんだ」
「弟…?
それじゃあ…………」
初めて聞く意外な事実に、胸がドクドクと鳴っている。
お兄ちゃんのお父さんが、わたしのお父さんの弟だなんて。
だとしたら、わたしとお兄ちゃんは兄妹じゃなくて、いとこって事になる。
だったら、わたしのお父さんは?
お母さんは、わたしのお母さんじゃないの?
まさか、この写真の女の人が……。
「…………っ
…………っ」
ところが、お兄ちゃんは急に口を固く結び、何も言わなくなってしまった。
わたしにとって、大切な話なハズなのに。
どうして教えてくれないの…!?
「……ずっと秘密にしたまま、今の家族として幸せに暮らしていたんだね」
「────お前、何を…っ」
するとお兄ちゃんの代わりに、佐伯先生が口を開いてそう言った。
…秘密!
やっぱり、お兄ちゃんはわたしに隠し事をしていたんだっ
「この写真に写る4人は、ひとみちゃん。君と、君の本当の家族だよ」
「本当の、家族…?」
「待てよ!
何でお前がそんな事…っ」
お兄ちゃんの代わりに話す佐伯先生に、お兄ちゃんは慌てて突っかかった。
確かにお兄ちゃんならともかく、たまたまお世話になっている精神科の先生がわたしの事を知っているなんて不思議だ。
でもいいの。
わたしだって、本当の事を知りたいんだからっ
「お前っ!
いいか? ひとみに余計な事を言っても、ひとみには何もプラスにならない。
だったら、ツラい過去なんて思い出さないまま幸せな人生を歩んだ方が、ひとみの為じゃないか!」
「だが、事実は何も変わらないよ。僕の罪も、眠り続けているまなも、何も変わらないんだ。
だったらせめて、僕の口から懺悔させてくれないか…!!」
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