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佐伯先生の口から聞いた事実に、わたしは言葉を失ってしまった。
わたしの本当の両親は、事故で亡くなってしまったの?
わたしはその事故のショックで、記憶をなくしてしまったんだ!
そしてわたしには、佐伯先生と結婚するハズだったお姉ちゃんがいる…。
「……………」
手に持ったシワだらけの写真を、もう一度見た。
このお父さんだと思っていた写真の人が、わたしの本当のお父さん。
という事は、その隣にいる女の人がわたしの本当のお母さんで、2人の姉妹のうち小さい方がわたしだったんだ。
「少しでもひとみちゃんの不安を和らげてあげる事で、罪を償おうと思っていた。
だけど君の笑顔を見ていると、どうしてもまなに似ているものだから…さっきは恐がるような事をして、本当にごめんよ」
申し訳なさそうに頭を下げる佐伯先生の、左前髪だけが白く染まった黒髪が揺れた。
あの髪の色は強いショックで変化した、佐伯先生のやり場のない怒りと悲しみの表れだったんだ…!
「佐伯先生、顔…上げて下さい。
わたしは大丈夫ですから」
いつも夢の中で見ていた入学式のシーン。
桜の花びらが舞う向こうで、わたしに手を振って呼びかけた2人の男女は、お姉ちゃんと佐伯先生だったんだ。
「…でも、ひとみちゃん。僕のせいで君は…君の家族は……」
「佐伯先生のせいじゃありませんよ!
悪いのは、そのトラック運転手でしょう?」
「だが、僕が言い出さなければ…っ」
「そんな事言ったら、何もできなくなっちゃいます!
それに、今一番苦しんでいるの、佐伯先生じゃないですかっ
早く、自分を許してあげて下さい」
大切な事を忘れてしまっていて、不安だった。
何も知らないまま生きていて、いいわけなかったんだ。
だって苦しんでいたのは、わたしだけじゃなかったんだから。
「…まな姉ちゃんの、婚約者……」
すると、さっきまで佐伯先生に敵意を見せていたお兄ちゃんも、その話を聞いて憤りもおさまったようだ。
「オレ、時々まな姉ちゃんのところに母さんと行く事あるんだけどさ。看護師さんから聞いたんだよ。
短い時間だけど、必ず毎日面会に来てる人がいるってさ。それ、先生だったんだな」
佐伯先生だって、毎日お医者さんのお仕事があるから忙しいもんね。
でも今日だって、お昼休みの時間を利用して来てくれたんだよ。
その度にいっぱい愛を囁いて、いっぱい謝ってたんだ。
「その…ありがとな。
スゴく愛されてて、まな姉ちゃんも幸せだって看護師さんが言ってた」
「そんな事で、まなが幸せだなんて…」
「あ あのっ」
わたしは2人の間に入るように、ちょっぴり声を大きくして言った。
2人はお姉ちゃんの事をよく知っている。
でもわたしは、まだ思い出せないままだから…っ
「わたし…お姉ちゃんに会ってみたい!!」
わたしの発言に、佐伯先生もお兄ちゃんも、目を丸くして見た。
お姉ちゃんのいる病室のすぐ近くまでは、今日のお昼過ぎに佐伯先生について行った時に来たんだけど、さすがに顔までは見ていなかった。
まさかわたしにお姉ちゃんがいるなんて思わなかったし、そのお姉ちゃんのすぐ近くまで来ていたなんてわかんないもんね。
「だって、わたしのお姉ちゃんなんでしょう?
会ってみたいの!」
「そう…だね。まなもきっと、ひとみちゃんに会いたいと思っているよ。
何せたった2人の姉妹なんだからね」
「ごめんよ、ひとみ。
ツラい過去なんて思い出させない方がいいかと思って、まな姉ちゃんの事も黙ってたんだ」
申し訳なさそうに言ったお兄ちゃんだけど、でもわたしはお兄ちゃんを責める気なんてもちろんない。
それも、わたしの事を思ってした事なんだもんね。
「何はともあれ、すぐに行こうじゃないか。
僕が車を出すよ」
わたしの本当の両親は、事故で亡くなってしまったの?
わたしはその事故のショックで、記憶をなくしてしまったんだ!
そしてわたしには、佐伯先生と結婚するハズだったお姉ちゃんがいる…。
「……………」
手に持ったシワだらけの写真を、もう一度見た。
このお父さんだと思っていた写真の人が、わたしの本当のお父さん。
という事は、その隣にいる女の人がわたしの本当のお母さんで、2人の姉妹のうち小さい方がわたしだったんだ。
「少しでもひとみちゃんの不安を和らげてあげる事で、罪を償おうと思っていた。
だけど君の笑顔を見ていると、どうしてもまなに似ているものだから…さっきは恐がるような事をして、本当にごめんよ」
申し訳なさそうに頭を下げる佐伯先生の、左前髪だけが白く染まった黒髪が揺れた。
あの髪の色は強いショックで変化した、佐伯先生のやり場のない怒りと悲しみの表れだったんだ…!
「佐伯先生、顔…上げて下さい。
わたしは大丈夫ですから」
いつも夢の中で見ていた入学式のシーン。
桜の花びらが舞う向こうで、わたしに手を振って呼びかけた2人の男女は、お姉ちゃんと佐伯先生だったんだ。
「…でも、ひとみちゃん。僕のせいで君は…君の家族は……」
「佐伯先生のせいじゃありませんよ!
悪いのは、そのトラック運転手でしょう?」
「だが、僕が言い出さなければ…っ」
「そんな事言ったら、何もできなくなっちゃいます!
それに、今一番苦しんでいるの、佐伯先生じゃないですかっ
早く、自分を許してあげて下さい」
大切な事を忘れてしまっていて、不安だった。
何も知らないまま生きていて、いいわけなかったんだ。
だって苦しんでいたのは、わたしだけじゃなかったんだから。
「…まな姉ちゃんの、婚約者……」
すると、さっきまで佐伯先生に敵意を見せていたお兄ちゃんも、その話を聞いて憤りもおさまったようだ。
「オレ、時々まな姉ちゃんのところに母さんと行く事あるんだけどさ。看護師さんから聞いたんだよ。
短い時間だけど、必ず毎日面会に来てる人がいるってさ。それ、先生だったんだな」
佐伯先生だって、毎日お医者さんのお仕事があるから忙しいもんね。
でも今日だって、お昼休みの時間を利用して来てくれたんだよ。
その度にいっぱい愛を囁いて、いっぱい謝ってたんだ。
「その…ありがとな。
スゴく愛されてて、まな姉ちゃんも幸せだって看護師さんが言ってた」
「そんな事で、まなが幸せだなんて…」
「あ あのっ」
わたしは2人の間に入るように、ちょっぴり声を大きくして言った。
2人はお姉ちゃんの事をよく知っている。
でもわたしは、まだ思い出せないままだから…っ
「わたし…お姉ちゃんに会ってみたい!!」
わたしの発言に、佐伯先生もお兄ちゃんも、目を丸くして見た。
お姉ちゃんのいる病室のすぐ近くまでは、今日のお昼過ぎに佐伯先生について行った時に来たんだけど、さすがに顔までは見ていなかった。
まさかわたしにお姉ちゃんがいるなんて思わなかったし、そのお姉ちゃんのすぐ近くまで来ていたなんてわかんないもんね。
「だって、わたしのお姉ちゃんなんでしょう?
会ってみたいの!」
「そう…だね。まなもきっと、ひとみちゃんに会いたいと思っているよ。
何せたった2人の姉妹なんだからね」
「ごめんよ、ひとみ。
ツラい過去なんて思い出させない方がいいかと思って、まな姉ちゃんの事も黙ってたんだ」
申し訳なさそうに言ったお兄ちゃんだけど、でもわたしはお兄ちゃんを責める気なんてもちろんない。
それも、わたしの事を思ってした事なんだもんね。
「何はともあれ、すぐに行こうじゃないか。
僕が車を出すよ」
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